1/30から草月ホールで上演されている
オフブロードウェイ ミュージカル『bare 』

初日、そして昨日と観てきました。


キャストはこちら

2014年に日本版として初演され、2016年に再演、今回が3度目の上演とのこと。
私は、初演の時に興味をそそられつつも予定が合わなかったりで観ていなくて。
再演も見逃しているので、今回が初めて。
なんとなくのストーリーと登場人物像を知っているぐらいの感覚で、初日の舞台を観ました。

以下、その時感じたままの個人的な感想です。

そこにいる人たちの歌、言葉が刺さり心が動いて涙が流れるのに、それが何故なのか、何なのか、わからない。
キャラクターの心情に共感し、自分の感情の揺れを感じつつも、その感情をどこに向けたらいいのかわからない。
舞台の上にある大きなエネルギーを感じているのに、それが自分にだけ届かない。
誤解をおそれずに個人的な感覚を言語化すると、その場の空気が自分だけを通り抜けずに流れていくような、そんな感じがしていました。

今にして思えば、受け取る側の私が舞台の上の大きな塊みたいなエネルギーを受け止めきれなかったのだと思っています。

というのも、2回目を観て、初回のそれらが全てわかってしまったから。

描いているのは高校生の日常。
舞台はアメリカ。
恵まれた裕福な家庭環境に育つ子が大半の
カトリックの寄宿学校。

性認識の問題、恋愛、友情、
危険な遊び、飲酒、ドラッグ、、

前面に出てくる問題は、起こりうることではあるけれど、私たちの日常や、経験してきた高校生活とは少しかけ離れているようにも捉えられる。

ですが、その問題の裏側、根っこにある心情に目を向けてみると、それは決して他人事のものではなく、自分にも身に覚えがあり過ぎるものばかり。

自分とは?
大人とは?
学校という与えられた環境で
日々に流され楽しみながら
何かにたどり着こうと
もがいて、足掻いて、、

自分のことを誰かにわかって欲しくて
怖くて、不安で、必死で
無自覚に誰かを利用したり
無意識に誰かを傷つけたり

決してそれは悪意ではなく
そうしていないと自分の存在がなくなってしまいそうな気がして、ただただ荒ぶっていて。

舞台の上から伝わってくるのは、そんな痛々しい時期の苦々しい思いでした。

私自身の経験では、あれほどの特別な事件や出来事があったわけではないけれど、そこにある感情の多くは少なからず自分にも身に覚えのあるもので、そのことに気がついてしまったら、苦しくてたまりませんでした。


もがいて、足掻いて、ぶつかって、
そのエネルギーが大きいほど失うものが大きかったりするわけで。
物語の結末は、世間の大義からしたら腑に落ちるものではないかもしれないけれど、
大切な何かを失わなければ気がつけないほど、盲目的になってしまう心理は、私たちにも理解できるもののはず。
そう思えたら、物語が、そこに立つ人が伝える言葉が、全て自分に向けられているようで、今度は劇場の空気が全て傷みを伴って自分に刺さるようで、必死で受け止めながら自分の中の何かがさらけ出されていくようでした。

ものすごく抽象的でわかりにくい表現しかできなくて申し訳ないのですが、
なんとなく自分のことも世の中のことも理解した風に歳を重ねてしまったからこそ、1度では受け止めきれなかったように思っています。
キャラクターの内面を伝えるために舞台の上からさらけ出されたエネルギーはそれほどに大きく、自分もそれを寄り添って受け止めるためには、同等のエネルギーで自分の感情をさらけ出す必要があったんだな、と気がつきました。
(あくまで私の場合です)

で、気がついてさらけ出してみたら、
未だにあの時の記憶は痛くて苦々しくて、苦しいだけでした。
高校生の頃の倍ぐらい生きてきたのに。

これがあの頃の未来なのかな?

そんなことを考えて更に苦しくなっていますが、何か大事なことにも気がつけたようにも思っています。


ものすごく個人的で抽象的な感想になってしまいましたが、それほどに観る人の抱えているものとダイレクトにぶつかり合う作品なのではないかと感じています。

『bare 』は、さらけ出すという意味があるのだそうですが、文字通り、演じる役者さんが全力でさらけ出してそこにいる彼らの心情を伝えてくださっています。
色々な人たちがそれぞれの感性で、舞台の上の彼らを見つめ、受け止め、そこから何かを感じることができたら。
きっと、その感じる過程で何かに気がつけたら。

そんな大きなエネルギーを持つ作品だと思います。


あと、控えめに言って音楽、生演奏がものすごくカッコイイです!
あるシーンでのギターの音がかっこよくて死にそうになりました。もちろんピアノ、ドラム、ベース、全てカッコイイ!

2/9まで、青山の草月ホールで上演されています。
ダブルキャストになっているので、組み合わせによっての違いも味わい深く面白いのではと思います。

当日券、学生券もあるそうです。
是非!







全く個人的なことで、ここに書くことではないですが、昨夜、大事な元教え子の訃報を受けました。
病という避けられないものではありましたが、共に過ごしたあの頃の自分は彼の青く輝いた季節を守れていたのだろうか、と自問しています。

彼の冥福を心から祈りつつ、
全ての若者が大切な時期に素晴らしい時間を過ごせるような世の中であってほしいと切に願います。