「おい、お前!そんなもの手に何を…?」

「なっ、何をする・・・、やめろ!やめてくれぇぇ!!」

ひとり、またひとりとこの手に掛けながら、
悲鳴を上げ逃げ惑う人々を追っていく。

『先生…そんな顔しないで。
先生のせいじゃない。
俺が悪いんだ。』

俺を見つめる先生の悲しげな顔が見える。
苦痛に顔を歪め、
あの綺麗で大きな瞳に
涙をいっぱい浮かべているその姿に、
一瞬、迷いが胸の内をかすめるが、
すぐに振り切るように頭を降った。
先生に出会わなくても、
遅かれ早かれ、いずれはこうなったはず。
それが今だっただけ…。

「あの方が…、お前を…
お前なんかを助けなければ…
こんなことには…。」

「黙れ!先生を悪く言うな。」

断末魔の言葉に不快感が込み上げ、
その不快のもと断ち切る。
見知った顔が、俺を蔑み、忌み嫌っていたものたちが
血飛沫をあげ倒れていく。

先生、
先生は俺に生きる意味を教えてくれた。
俺が生きる意味は先生だ。
先生に出会えたから、
俺は生きる意味を知ることが出来たんだ。
先生がいるから、俺は生きていける、
そう思っていたんだ。
だけど…

『ここはね、
私の願いを叶えてくれるところなのよ。』

あの場所で悲しげな笑顔を見せていた先生。
そこは先生の願いを叶え連れていってしまった。
先生はもういない。
先生がいなければ、俺は生きる意味がないんだ。

血の海に立ち、夜空を見上げる。
瞬く星と共にに煌々と光る月が、
血に染まった俺を照らし続ける。

何故、こんなときでも月は美しいのだろうなぁ。

先生に出会った頃を思い出した。
笑顔が眩しいくらいに綺麗で、こんな俺にも優しかった。
先生が俺を想ってくれた言葉は今は心の奥底にある。

「先生、ごめん。
俺の幸せを願ってくれたのに、こんなことして…。
でも…
先生がいないと、俺はもう生きてる意味がないんだ。」

血に塗れた刃を自分の首に当てる。
先生がいたという最後の痕跡を、自ら消し去った。








~end



++++++++++++++++++++++

初めての長編、と言っても数話でしたが
如何でしたでしょうか。

結局、断事官が言っていた結末になってしまいました。
光に触れた彼が、月の隣で輝くような星になって欲しいと
いう願いも虚しく、彼は星になってしまいました。

あまりにも重い話に、更新の度にご訪問下さり、
また”いいね”や“コメント”を残して下さり
ありがとうございました。
そして最後まで読んで下さり、感謝しています。

伽羅





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