先日予告しておりました長編全8話を、
2週に渡ってアップしていく予定です。

このお話は21話にて断事官が話していた、
“あの方に助けられた人が、後に盗賊の首領となり、
舞い戻った故郷のものたちを惨殺する”
そんなことをしてしまった
“死ななければならない人間”と言われた人の話です。

上記の話は、あの方の前に100年後に行ったあの方のこと。
では、今現在のパラレルワールドへ飛ぶ前の
この方の場合はどうだったのでしょうか?
100年後に飛んでも同じ状況だったのでしょうか?
その経緯を書きたかったのですが、思うように書けず…

完全なる問題作ですが、
(そして、果てしなく暗い話…(--;))
読んで下さると嬉しいです。
どうぞ、宜しくお願いします。






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漆黒の闇の中を無我夢中で走っていた。
走って、走って、
途中、何度も何度も力尽きそうになりながら、
それでも前だけを見て走り続けた。

身体中が悲鳴をあげている。
もはや限界だった。
何かに足をとられ、転がるようにその場に倒れた。
倒れた其処に血溜りが出来始めている。

「俺の命もここまでか…。」

薄れていく意識の中、
穏やかな気配と花のような香りが近づくのを感じていた。


何か聞こえる…。
歌?歌にしては調子っぱずれで
何処か可笑しいそれを聞きながら、
ゆっくりと意識が戻っていく。

そっと目を開けると、
視界が定まらない眼でその声の主を探った。

「目が覚めたのね、良かったわ。」

その人は腕を取り、身体の様子を確かめている。

「うん、だいぶ良くなったかな。どう?私が見える?」

良く通る澄んだ声が、心地好く耳に響く。
段々と意識が戻ってくると、
目の前の人の姿がはっきりと見えた。
そこには見たことのない赤い髪をした美しい人が
俺を覗きこんでいた。

「見えたようね。これで少し安心だわ。
ここへ来て、最初の患者が
こんな重傷だとは思わなかったわ…。
こら、起き上がろうとしないで!
貴方、死にかけていたのよ!」
「何故、俺を助けた。俺は…。」
「私は医者よ。
目の前で私を必要としている人がいたら助けるわ。」
「俺は…そんなこと望んでいない…。」

いっそのこと、あのまま息絶えても良かったんだ。
“おまえなんか、生きてても意味がない”
“おまえが生きていることが罪なんだ”
ずっと言われ続けた言葉が頭をよぎった。

「違うわ。貴方は死にたくなかったのよ。
忘れたの?あのときのこと…。」

あのとき…?
痛みと出血で意識が朦朧とする中、
花の香りと俺を呼ぶ優しい声に手を伸ばした気がする。

「あのとき、貴方は確かに生きたいと願ったのよ。」

そう言って、優しく微笑むこの人を見つめていると、
何故だか無性に胸がつまった。

「さぁ、もう少し休みなさい。
意識は戻ったけど、暫くは絶対安静よ。
いきなり動くとまた危ないわ。」

そう言って、立ち去ろうとするその後ろ姿に声をかける。

「あり…が…とう。」
「ふふ、気にしなくていいわ。」

振り返り笑顔を見せるその顔が、
妙に忘れられず心に深く残った。









※
今回のみですが、コメント欄あけました。
優しいお言葉頂けたら嬉しいですアーメンキラキラ




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