桂花

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毎夜、
あの方の部屋から聞こえる苦しそうに呻く声
そして悲鳴のようにか細い叫び声

扉に手をかけ、
思わず駆け寄りたい衝動に駆られながらも、
後一歩の所で超えられない壁に、
必死の思いで立ち止まる

その奥でひとり苦しむこの方を
抱きしめられたらどんなに良かったか…
だけど、私はただ見ているしかないのだ


いつからだろう
あの方が悪夢を見るようになっていたのは
あの日、
あの方を守ろうと負傷したもの達が運ばれて来たとき、
一緒に戻ってきたあの方は青ざめ強張った表情をしていた

何があったかは容易に想像はついた
舍妹と舎弟
あの二人からの攻撃は、
この方の心を深く傷つけてしまっていた

それ以降、この方は
あまり笑顔を見せることが無くなっていった
笑顔であっても必死で
心の奥底に何かを隠しているそんな様子が見て取れた

私にはこの方を笑顔にすることが出来ない
この方が心穏やかにいられるようにと、
お支えすることしか出来ない


先生は、私にとってお薬のようなひとね


そう言って、どこかぎこちなく向ける笑顔が痛々しい

あの方に悟られぬよう桂花茶を勧め、
さりげなく部屋にお香をたく
そんなことしか出来ない自分が
あまりにも無力で、そして恨めしい

眠りについた穏やかで美しい寝顔を見つめながら、
今日こそはゆっくり心安らかに眠ってくれればと
願わずにはいられなかった










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