「四間飛車でハム君に挑戦」シリーズの第2局(その2)です。「ハム将棋」については下記の過去記事等をご参照ください。
https://ameblo.jp/kakuzan101/entry-12311761328.html
図1は後手が△7五歩と突いてきた局面です。この手に対し、先手が▲7五同歩と取るのは△同銀とされて、後手の「棒銀」を働かせてしまう「お手伝い」の手になってしまいます。ここでは、「四間飛車」必修の手ともいうべき一手があります。
(図1 △7五歩まで)
○図1以下の指し手:▲7八飛(途中図)、△7六歩、▲同銀、△5四歩、▲9八香、△5五歩、▲同歩、△同角(図2)
正解は▲7八飛です。これは、「戦いの起こりそうな筋に飛を移動させる」という、「四間飛車」を指しこなす上では知っておいて欲しい手筋なのですが、高島教室の生徒さんには、まだピンとこないかもしれませんね。
「戦いの起こりそうな筋に飛を移動させる」というのは、「四間飛車」側は何を狙っているのでしょうか?それは、ズバリ、「さばき」です。
もし、図1の局面で戦いが始まった場合、先手の「飛」の上には「歩」と「銀」がおり、少なくともこの2つの駒が6筋からいなくならない限り「飛」はさばけません。しかし、現状ではこの「歩」と「銀」がいなくなる見通しは立ちにくく、このままでは先手の主砲である「飛」が「遊び駒」となってしまう懸念があります。
(途中図 ▲7八飛まで)
次に、▲7八飛とした途中図を見てください。今、先手の「飛」の上には「歩」と「角」の2つの駒がおり、条件的には、「飛」が6筋にいたときと変わらないのではないかと思われるかもしれません。ところが、全く違うのです。まず、「歩」は相手の「歩」とぶつかった状態にあり、相手に△7六歩とされることで7筋から消えます。また、「角」は▲8八角や▲6八角、▲5九角などと引く手や、▲6五歩からの「角」交換を狙う手などがあり、いつでも7筋から消える可能性があるのです。
とくに後手の△7五歩で「歩」と「歩」がぶつかったことで、その筋の駒がいなくなる可能性が高まっており、その筋に「飛」を移動させる(すなわち、「戦いの起こりそうな筋に飛を移動させる」)ことで、「飛」がさばきやすくなっているという、そのような理屈なのです。
もっとも、▲7八飛は、後手が△7五歩と仕掛けてきてくれたからこそ効果的な手になっているわけで、後手が仕掛けてこなければ、現状、先手には「飛」をさばく手はありません。この辺が、「四間飛車」独特の展開で、相手が仕掛けてくるのを待ち、相手の仕掛けに乗じて盤面左側の駒のさばきを狙うのがコツになります。そして、先手は「待つ」手には困りません(▲9八香、▲4六歩~▲3六歩~▲4七金~▲2六歩~▲2七銀~▲3八金~▲3七桂とどんどん好形になっていく手があります)。
後手は△7六歩と取ってきました。先手は▲同銀と「歩」を取り返しておきます。これで、「飛」先の「歩」が消えて持ち駒になったので満足です。なお、ここで後手に△7五歩と打たれたらどうなるのだろうと思われる方がいるかもしれません。しかし、結論から言うと、後手の△7五歩は「8五」の「銀」をみずからこれ以上前進できなくしてしまう悪手です。▲6七銀(参考図)と引いておいて先手十分の形勢となります(途中図の局面から一手で「7六」の「歩」が先手の持ち駒になったのと同じ状態)。
(参考図 ▲6七銀まで)
本譜に戻り、途中図以下、△5四歩、▲9八香、△5五歩、▲同歩、△同角(図2)と進みました。5筋の「歩」交換は後手にとって大きな一手で、将来、△5七歩と打って「ミノ囲い」を崩す手や、一段目に「飛」を打ち込まれた時に△5一歩と受ける手(「金底の歩、岩より固し」という格言あり)を用意しています(もっとも、先手にとっても大きな手で、後手と同様に▲5三歩からの攻めや、▲5九歩の「金底の歩」の手が生まれている)。
(図2 △5五同角まで)
図2の局面で先手が待つとすれば▲4六歩なのですが、後手の「5五」の「角」がいるために△4六同角と取られてしまいます。「5五」の地点にいる「角」というのは「八方にらみの角」とも呼ばれ、一番よく働いている状態なのです。ということは、「八方にらみの角」でない状態にすることを先手としては考えたいところです。先手の次の一手を考えてみてください。
ヒント:▲5六歩ではありません。