格闘技と脳のダメージ1 ~脳の特徴~ | Dr.Fの格闘クリニック

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格闘技ドクター・二重作拓也の「強くなる処方箋」


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試合が終わってホッと一息ついた夜。あ、目眩が……いやいや、この程度は大丈夫。あ、軽い吐き気が……なんの、明日になれば回復するさ。なんて言っていてはいけません!
将来恐ろしい結果を招くこともある脳の障害のリスクといかに向き合っていくべきか? 今回は脳の安全に踏み込みます!

●脳をいかに守るか
 皆さん、こんにちは! 楽しく強くなっていらっしゃいますか? 今や、脳の研究は日進月歩の勢いで進んでおり、ゲームでも脳トレーニングが流行。当然、格闘技や武道においても、脳は大活躍しています。今回は格闘技における「脳」について、脳の特徴や外傷およびパンチドランカー対策、そして最新の格闘技「脳」トレーニングまで、強くなるための「脳」について、格闘技医学的に考察してみたいと思います!読後にはきっと強くなるヒントが得られるはずですから、ぜひ脳をグニャグニャに柔らかくして読んでくださいね(笑)。

 ます、脳の役割ですが、シンプルにいうと、「情報を入力し、処理して身体に命令を出す」ことをやっています。視覚や聴覚、嗅覚、関節の角度、筋肉や腱のテンション、皮膚の触覚や圧力、内臓への刺激などなど、様々な感覚器から情報が脳に集められます。脳では、その情報を絶えず処理しては、適切な命令を組織に下し、生態の維持や運動を遂行させるというシステムです。

「対戦相手の蹴りが飛んできた、それを視覚で確認しつつ、一瞬で蹴りの軌道を読んでステップでかわす、あるいはカウンターで軸足を蹴る」という一連の動作にも、感覚神経を通じてのインプット→脳での処理と判断→運動神経を通じた筋肉へアウトプットという過程を経て、かわす、カウンターを取るといった動作が可能になります。試合や練習などで、脳がしっかり覚醒していれば反応と同時にスムーズに動作につながりますし、逆に脳が疲れていたり、ダメージを受けていたりすると、動きそのものもどうしても悪くなってしまいますよね。


 格闘技において、脳のダメージは深刻かつ重大な問題の一つです。ボクシングやキックボクシングといった顔面を殴り合う格闘技はもちろん、顔面パンチのないルールのカラテでも、防具着用の拳法であっても、さらには球技であるサッカーなんかであっても、全くリスクがないとは言えないのが現実です(顔面パンチの禁止されているカラテの大会で、上段蹴りによるKOで脳にダメージが蓄積している場合もありますし、組技格闘技で頭から落とされて脳挫傷、という悲しいニュースもあります……)


 格闘技ドクターという立場上、「脳へのダメージが少ない格闘技は何ですか」という質問を受けることがありますが、格闘技である以上その危険性はあくまで相対的であり、このルールだから大丈夫ということはいえない。

むしろ格闘技をやる以上、ルールを問わず脳を守る意識は最低限持っていなければならないと思います。脳を守り、脳を活性化することができれば、長く健康に格闘技や武道が続けられますし、「脳」という無限の可能性を秘めた器官を活用すれば、ライバルに大きく差をつけることも決して不可能ではありません。

●脳は「痛がらない」!?
 医学的なお話です。脳が他の身体の組織と何が違うか。たとえばめちゃくちゃ強い選手があなたの膝を「ゴンッ」と蹴りました。蹴られたあなたは、膝が痛いですね。膝とその周囲にある痛覚の受容器に入った刺激は、感覚神経を通じて脳の感覚野という部位に痛みとして伝わり、膝の痛みを感じます。

「膝が痛いっ」という情報を認知しているのが、脳なんですね。脳は、脳以外の身体の部分の情報を集めたりすることが凄く得意な器官なわけです。
 

しかし、脳がダメージを受けると、脳はそれを察することができません。脳という器官は、「今、僕の脳がダメージ受けています」とは決して言わないんですね。

よく試合でKOされた直後に「大丈夫、大丈夫」と倒された本人が言っているシーンをよく見かけますが、あれはダメージを受けた脳による判断ですから、本当に大丈夫かどうかは疑ってかからなければなりません。

脳が正常であれば1足す1は2という正しい答えを出すんですけれども、脳がダメージで混乱した場合、1足す1は3と認識しちゃうと、それを間違いだと判定しなくなっちゃうんです。壊れたコンピュータで計算した答えが信用できないのと理屈は同じことです。まず、脳は、脳自体のダメージを自分で発見することはできないということを、大前提として覚えておかなくてはなりません。

 また、脳には、痛みを感じないという特徴があることも覚えておかねばなりません。脳には他の組織に分布している痛覚がないんです。麻酔科で研修しているときに、脳外科の手術を担当する機会があったのですが、脳外科のドクターは、脳の腫瘍を取り除く際には脳の実質に局所麻酔をしないんですね。脳の実質をメスで切っても脳は「痛い」と感じないようにできているからなのですが、知識としてわかっていても最初は結構びっくりしました。


 ですから、脳がガーンと思いっ切り揺れたとしても、痛みとして感じられることは少ないんですね。しかも頭蓋骨に包まれていますから、内部の出血や腫れも外から察することができず、非常にわかりにくい、見えにくい。膝なんかだと、蹴られてダメージを受ければ腫れたり、赤くなったり、動きが悪くなったり、痛かったりと、サインが出てきますのでわかるのですが、脳の場合は、脳の細胞が多少痛んでたり、脳の内部で出血があったりしても、外から見えません。

明らかに意識を失っている場合は別として、軽症の場合、ちょっといつもと違う、ちょっと意識が変容してくるというところでしか、見ようがないんですね。

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