A先生がゆっくり口を開く。
「この癌はね、進行が他の癌に比べてとてもゆっくりなんですよ。
だから、気がつくまでに時間が掛かるんです。
今回、あちらの病院からのカルテを見ましたが。。。。
私が責任を持って最後まで担当させて頂きますから。」
先生の話を聞いて、少し安心した。
が、次の瞬間
「先生。。。私は後どれくらい生きられるんですか?」
と父が聞いた。
先生は少し驚いたようだったが、父に向き直し話始めた。
「はっきり申し上げすと、このままアイソトープ治療をしないと良くて5年。
治療をしても10年くらいです。。。
でも、これは一般的な見解であって、
もっと長く生きられる事もありますから、頑張りましょうね!」
「分かりました。宜しくお願いします。」
そう言って診察室を出た。
父は以前から、余命が分かるなら知りたいと言っていた。
自分がどれくらい生きられるかが分かれば、
それに向けて目標を持って生きられるから。。。。と。
退職して、これから残りの人生を楽しもう!
そう思っていた父には、とても辛い現実だったと思う。
だが、この現実を乗り越えなくていけないのだ。
そして、しばらくして父の治療が始まった。