ウクライナ難民

 

EU時代、東ヨーロッパからの移民が本当に多かった。

 

勿論、都会であるロンドンには世界各地から来ているので、そう気づかないのだが、ちょっと田舎町に行くと、町の中心にアジアンショップより東欧商品を扱うコンビニ(タイプの小商店)やスーパーのワールドフードコーナーも東欧系がインド系より多かったりする。

彼らは英語を話せたとしても、殆どの人が最初はナチュラルに話せないので、やはり固まって住んでいる。家賃などは、めーっちゃ高いので、来たばかりの時は狭いフラット(アパート)に何家族か、何カップルかで住んでいる場合が多い。

 

その中でも多かったのがポーランド人(ポーリッシュ)だ。

 

総じて東欧人は真面目で、嫌な仕事もお金になるなら頑張ってくれる。特に技能者を軽んじて技能者不足の英国では、建築土木従事者、水道業者などなかなかいなくて、法外な金額になる事も多々ある。英国人業者は、ペラペラと都合よく耳障り良く喋り、途中で休暇に出かけてしまったり、直したはずが直ってなかったりが日常茶飯事なのだ。

それに比べてポーリッシュは真面目だ。文句をつけたところは、英語で上手くごまかせないので結局ちゃんとやってくれる。そういった建築業は不動産高も相まって、お金になるので一財産築いた人も多い。

 

そういったスラブ系が町でウロウロし、店で接客し、店で英語でないものが売られ、学校では英語で遅れを取っている子供にセラピーを受けさせ、無料で出産、医療を受け、職場で真面目に病欠せずに働いている姿が疎ましく思われたのが最大のEU離脱への原因なのだが。

 

昔語学学校で一緒だったヨーロッパ人は、ハッキリと言っていた。

先ずは英語が上手く喋れないといけないから、誰でも雇ってくれるクリーナーやキッチンから始めて、ウェイターや店員に、次のステップはオフィス、そして資格を何かとってマネージャーやプロの仕事、または自分でビジネスを始めるんだ、と。

 

貧しくないヨーロッパ人や他地域の人(日本も含まれるか?)は、英語を上達させ、自国に帰るか、またはその後世界のどこでも働こうという目的を持っていた。

そう、貧しい国の出身者は、帰る気はあまりなく、このまま英国に住みたい人が殆どだ。

それはポンドが高い事、治安が悪くない事、健康保険や生活保護などの充実が主な理由だろう。

その理由から、住みたいと思っても当時はEU以外からの入国は厳しいという事は日本から来られる方もご存知かもしれない。ビザについては随時変わるのであるが、基本的に学歴なら博士や、仕事なら医療や専門職が優遇されている。じゃあその辺の「会社員」が英国に、若しくは他国へ渡る場合、手っ取り早いのが学生ビザと結婚ビザである。

 

その為、偽装結婚などが増えるわけだが、日本でも中国や東南アジアから学生や花嫁を入れたら失踪したという事も聞くだろう。勿論こちらでもあるわけで、それを避けるために非常に厳しく段階を置いているそうだ。

 

ビザのために面接などもあり、昔、ホームオフィス(内務省)で私のビザ申請のための面接を待っている時、前で面接されているカップルの様子を見たことがある。みどりの窓口のようなカウンターが20くらい一列にあり、その前に椅子があり、通路部分の後ろに空港や駅の待合のような長椅子が4列くらいズラリとあるところで何時間も待たされた為、聞こえてしまうのだ。(現在はホームオフィスではなくオンライン申請だと聞いている)

 

一緒のベッドで寝ているのか、銀行明細やカード払いなどの記録等かなり踏み込む。英語が話せるのかコミュニケーションはどうやっているとか、もう私は関係ないけど聞き入ってしまった。たまにビザを取らせてあげる代わりに報酬を受け取る輩もいると聞いていたので、本当のカップルなのか、と気になったのだ。

そういった経済格差のある国から来る花嫁として人気が高いのは、フィリピンやタイと並びロシアやウクライナ(ユークレイン)だ。

 

そういった番組を昔見たことがある。

中高年の決して金持ちではない男達が、それぞれインターネットで花嫁選びをする。5-60代の男は、ウクライナ人の若い女を英国の自宅に招く。若い花嫁候補は、英国に招かれて、その男が家持ちだという事もあり、相当の期待で訪れるのだが、それが都会でなく、家も庶民のテラスハウスだったりして、非常に落胆しているのが良くわかる。結局彼女はウクライナに帰ってから、音信不通になり、男はウクライナの自宅まで押しかけるのだが、彼女の家族に居留守を使われて会えなかった。その家も本当に田舎で貧しそうであった。

 

余談ながら、タイ人と結婚した男は、タイへ移住し、ロッジみたいな家を建てた。そこへ嫁の家族も押しかけ、非常に経済的に期待されている事が伝わってきた。

まあ、そんな訳でウクライナ人嫁というのは結構いて、EUでないから、英国パスポートを取りたい人も多い。

そんな中、ロシアのウクライナ侵攻があり、連日ニュースで出てくるのだが、先日、50代くらいの男がBBCニュースに出ていた。キャスターが「あなたの奥さんはまだキエフにいるんですって?」と聞き、男が「そうなんだ。無事みたいなんだけど、とても心配だ。」と言った。キャスターが「奥さんと最後に会ったのは?」、男「1月だ。結婚式だったんだ。」と自らの結婚式の写真を出した。なにぃ?結婚してビザが出るまで待ってる人じゃないか!?と年の差の結婚写真を見て聞く気を失くした。キャスターも同様だったようだ。というか、奥さんと何回会った事があるんですかと聞きたかった。結婚式も市役所の様なところで2人だけの写真だし、形式的なものとしか見えなかった。他の日は、在英ウクライナ人が「母が」「姉が」どうやって逃げてきたか等を同時通訳をして、その惨状を紹介したのだけれど。

 

英国では歴史的にもロシアは潜在敵国であり、非常にウクライナに同情を寄せている。チャリティーはもとより、学校や会社、個人レベルでもモノを募っており、たくさんの関心を寄せている。運送会社は、トラックにたくさんの物資と燃料を積んでウクライナ方面へ向かうそうだ。近所の犬猫チャリティーをやっている人もバンにペットフードやケージ等の寄付を募り、自ら運転して向かうそうだ。

 

これから難民の数がどんどん増えることを見て、政府は家を提供してくれる人を募っている。月350ポンドの手当が出るが、最低6か月住まわせることだそうだ。俳優のベネディクト・カンバーバッチも手を挙げたり、たくさんの有名人も支援している。うちでも登録しようかと家族会議をしたが、息子が「知らない人がずっと家にいるのはちょっと怖いし、自然でないから嫌だ」と懸念を示したので少し保留にしようと思う。

 

しかし、これってEU離脱以来の人手不足解消になるのでは?

ウクライナ難民は3年のビザが与えられ、仕事も自由にできるという事。しかし、英語が堪能な人はあまりいないと考えられるので、要するに皆やりたくない仕事を請け負うだろう。それこそ実は英国が欲しかったもの。そして今回は少なくとも今は、国民は文句を言わないだろう。丁度農業系は人手が欲しい時期になり、介護や掃除、配送業なども非常に助かるだろう。英国はウクライナ人を待っている!