それは深夜のメールだった。
寝ていた私がそのメッセージに気がついたのは翌朝であったが。
「返事おそくなってゴメン。ずっと調整つけていたけど、やっぱり
旅行に行けなくなった。急な仕事が入りどうしても抜けられない
んだ。また、連絡します。」
シュンタから長文のメールを初めて受け取った、内容は寒々しいものだったが。
朝の気怠い気分が一変してしまった。
もう、日付を超えて出発日の二日前になる。
悪い予感は今、目の前の私を嘲笑う。
やはりそうか、それでももしかしたらと一縷の望みを捨て切れなかった自分が
情けなく憐れになる。
二人の関係をもっと密な特別なものとしようという目論見は見事打ち砕かれたのだ。
仕事をしていても、メッセージが何度も浮かんできてしまい、いつの間にか溜め息
を何度もついてしまった。
仕事を何とか終えて帰宅してから、もう一度メールを開く。
頃合を見計らってシュンタに直接電話で話しをしよう。捨て置くことは出来なかった。
「もしもし、メール見たけど…」
「ゴメンゴメン、ずっと何とか行けるように考えていたけど、ダメだったんだ。
例の大物投資家がクリスマスに豪華クルーザーでパーティを開くんだ。
財界人を沢山呼んでいてね、顔繋ぎと手伝いを頼まれて断れないんだ。」
「…そう、仕方ないね。キャンセルしておくね。」
「あ、料金がかかったら言って。精算するから。」
「精算?何を?」
「キャンセルチャージのことだよ。」
私は精算と言う言葉が自分に向けられた様に感じた。
仕事という名目で先約をはじき飛ばすシュンタがやはり、冷淡で利己主
義に思えてならない。
確かに新しいチャンスをシュンタは逃がしたくないのだろう。
そう信じていたかったが、やはり、疑念は払拭出来なかった。
シュンタはアクセルを全開に踏んで私を追い越して去って行く。
シュンタの行く先は…仕事か…女か…。