映画「ほの蒼き瞳」 2022(令和4)年12月23日公開 ★★★☆☆

原作本 「陸軍士官学校の死」(上・下) ルイス・ベイヤード 早川文庫

(英語;字幕翻訳 原田りえ)

 

 

1830年、ニューヨーク州。

森に一人で住む元刑事のランドー(クリスチャン・ベイル)のところへ

ウエストポイント陸軍士官学校の副校長ヒッチコックがやってきて

「折り入ってうちの校長が頼みたいことがある」と。

ランドーは現役時代は暗号解読にすぐれ、容赦ない尋問も定評で

数々の難事件を解決してきた敏腕刑事でしたが

3年前に妻を亡くし、一人娘のマッティが家出してから元気をなくし、今は引退していたのでした。

 

しぶしぶ士官学校に出向くと、

セアー校長は、ランドーの腕を見込んで、極秘に解決して欲しいことがあるといいます。

 

2年生のリロイ・フライが昨夜首を吊って自殺し、

さらに病棟内に寝かせていたその遺体が損傷されたのです。

遺体からは心臓がえぐり取られており、明らかに猟奇的な事件です。

マークウィス医師(トビー・ジョンソン)から検視の報告を聞きますが、

医師が見逃していたことをランドーは指摘します。

① 後頭部に打たれた跡がある

② 首の縄を外そうともがいた形跡がある

③ 握られた手のなかに紙きれを発見

 

フライは自殺ではなく、他殺だというのがランドーの見立てです。

「犯人は詩人にちがいない」

「フライと仲たがいしていたラフバラーに話を聞くべきだ」

などといって、ランドーのまわりをうろつく風変わりな士官候補生がおり

彼の名前はエドガー・アラン・ポー(ハリー・メリング)。

 

 

文学に精通し頭もよさそうなこの青年を、ランドーは助手としてつかい

あの手紙の解読などもやらせてみることにしました。

                (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

 

ウエストポイントというのはニューヨーク州でもハドソン川のずっと上流に位置し、

士官学校や基地に特化した地域のようです。

地図をみたらハイランドとか(ランドーが住んでいる)バターミルクフォールズなども

今もある地名のようでした。

 

舞台設定は1830年なので今から200年近く前の話。

1809年生まれのエドガー・アラン・ポーはこの時21歳で、

1年足らずですがここの士官学校にいたことがあり(WIKI情報)

辻褄はあうのですが、もちろん本人とは全く関係はないです。

 

演じるハリー・メリング。

私は「オールドガード」や「キーパー」のときに気づいたのでお初ではないのですが、

 

 

 
子役のときに 彼はあのハリポタのダドリーだったとは・・・!
 
 
この二人が同一人物とはとうてい思えないし、
今回は鋭さを増して、目のぎらつきがさらにバージョンアップしたように思います。
 
ちなみに、出演作ごとに太ったり痩せたりが忙しいクリスチャン・ベイルのほうは
今回は「ノーマルタイプ」でしたね。

 

 

 
ポーのことは、この時↑も何冊か本を読んだのですが
興味深くはあってもダークで憂鬱になってしまうので、スルーさせてください。
 
 
つづきです
 
士官候補生に聞き取りをするうちにわかったことは
① 警備担当のハントゥーンによれば、
首を吊ったフライの足は地面についていた。
② 遺体の警備をしていた士官候補生によれば、
将校がやってきて「任務終了だ」といわれたので帰った。
(その後に遺体が損壊される)
顔は見えなかったがその将校の肩章は左側がとれていた。
③ ラフバラーによれば、
フライは最近悪い仲間と付き合うようになったので
自分は(仲たがいしたわけではなく)距離を置くようになった。
 
 
 
取り出した心臓は冷たいところに置くはずだと、
貯氷室をしらべると、そこでオカルトの儀式をやった跡を発見します。
専門家のペペ教授に聞くと、そこに書かれていたのは黒魔術の魔方陣だといわれます。
 
 
 
 
ランドーと訪れたマークウィス医師の家で
娘のリアのピアノに聞きほれ、一目ぼれしてしまうエドガー。
 
このあと、「墓地デート」に誘い出すのに成功しますが
突然リアがてんかんの発作を起こします。
苦しむリアをみて驚き、
「君のためなら僕はなんでもする」
と叫ぶエドガーのことばにリアは反応します。
 
リアとのデートの帰り道、
エドガーはいきなり士官候補生のバリンジャーに襲撃されます。
ランドーが気づいて助けてくれますが
「リアを好きなバリンジャーは僕に嫉妬してる」
「いや、やつはお前を殺しにかかっていたぞ」
 
そしてほどなくバリンジャーの首吊り遺体が発見されます。
やはり心臓が抜かれていました。
 
 

実は医師のマークウィス家は、魔女裁判の異端審問官の

アンリ・ルクレールの末裔でした。

リアの病気を治すために必要なのは

①羊と牛の心臓

②洗礼をうけていない子どもの心臓

③首吊り遺体の心臓!

 

マークウィスの家のクローゼットからは

左の肩章のとれた将校の制服も出てきました。

 

ランドーが屋敷内を探すと

まさにリアと弟のアーティマスによって、エドガーが殺されるところでした。

「犠牲は究極の愛の形だわ」

 

すんでのところで、ランドーが気づいてエドガーを助け出し

そのときに倒れたろうそくの火が燃えあがって

リアとアーティマスは死んでしまいます。

 

事件は解決し、校長から謝辞を言われて任務を解かれます。

ここでおわりとおもいきや・・・・

 

続きです(ネタバレ

 

ランドーの家にエドガーがやってきます。

彼はフライが握りしめていた紙切れの文字の筆跡が

ランドーのものだと気づき、彼の身辺を調査していました。

ランドーと親しい酒場のパッツィーから

ランドーの娘のマッティーは家出したのではなく、

士官学校の舞踏会の帰りに襲われ輪姦され、自ら崖から飛び降りたのだと。

 

そしてその犯人がフライとバリンジャー、

そして今姿をくらましているストッダード。

たまたま黒魔術の遺体損壊が追加されたが

殺人を犯した原因は

「愛する娘を死に追い立てた獣たちへの復讐だ」

エドガーは

「殺人犯はあなただ」

と言い放ち、ランドーもそれを認めます。 (あらすじ ここまで)

 

一応二段落ちみたいにはなってますけど

ミステリーとしては不完全だし、

ゴシックホラーを意識してか、画面がひたすら暗いのも気になりました。

 

原作はざっと読んだだけなのですが

もっと明るいシーンもあるし、

パッツィとか、士官学校以外の登場人物が

いい働きをしてると思ったんですけど・・・

 

それから、エドガー・アラン・ポーの独特な文体模写とか

有名な詩の引用とか、「折句」のような言葉遊びとか、

日本語にすると伝わりづらいし・・・・

凝りに凝った作品ではありますが、

映像化するより、本で(それも英語で)読むのがよかったのかもしれません。