映画 「ブロンド」 2022(令和4)年9月28日配信開始 ★★★★☆

原作本 「ブロンド(上下)マリリン・モンローの生涯 ジョイス・C・オーツ 講談社

 

 

1933年 ロス・アンジェルス。

ノーマ・ジーンの7歳の誕生日のサプライスプレゼント。

 

母に目隠しされて部屋に行くと、壁に男の写真が飾られており、

「あれがパパよ」

「パパは有名な人だけど、秘密なの」

「いろいろ複雑なのよ。でも、心のなかでは結婚してるの」

 

「うちは(夫に捨てられて)貧乏だったから、

あなたはいつもたんすの引き出しに寝ていた」

その日の夜中、ノーマは母に起こされ、むりやり車に乗せられます。

行く手(ローレルキャニオン?)には山火事の炎がせまっており、

下着姿で火災に向かって車を走らせる母を

警官が驚いて停めます。

 

強く制止されて、やむなく引き返しますが、

「パパはなんで来てくれないの?」

という娘のひとことに逆上した母は、ノーマを殴り、

帰宅後、浴槽に沈め、殺そうとします。

 

ノーマはなんとか逃げ出し、隣の家に助けを求めます。

隣の夫婦は優しく抱きしめ、狂った実母から救ってくれましたが

数日後、

「ママに会いに行こう」と車で連れ出されたのは、児童養護施設。

精神病院に入れられた母とは暮らせず、ここでノーマは育つことになります。

                            (あらすじ とりあえずここまで)

 

2か月ぶりにNetflix配信作を鑑賞。

境遇は全く違うけれど、

思わず、先日観た「スペンサー ダイアナの決意」と比べてしまいました。

世界中で熱狂され、30代の美しいさなかに急死、

結婚生活には恵まれず、死因についても今なお取りざたされている・・・・

似てませんか?

 

ただ、幼少期の不幸さは比べようもなく、

実の母にここまで虐待されていたとは知りませんでした。

実母が育てきれずに知り合いをたらいまわしされたと聞いていたので、

まさか孤児院育ちとは・・・・!

と思ったら、どうも私の記憶のほうが事実に近くて、かなりフィクション度高めのようです。

 

本作は3時間近い長尺で、幼少期から亡くなるときまで

ひととおり彼女の人生が描かれます。(こういうの、始めてかも)

ただ、少女時代はさくっとカットされて、次からはいきなり25歳くらいのノーマとなり

アナ・デ・アルマスが演じます。

つづきです (ネタバレ)

 




やがて成長したノーマ・ジーンは、

ヌードが売りのピンナップガールになりますが、彼女には女優になる夢があって

スタジオの社長に枕営業(というか、ほぼレイプ)して契約を結び

「ノックは無用」のヒロインのオーディションへ。

 

ヒロインのネルは心を病んだベビーシッターでしたが

本読みの相手方の俳優は

「彼女は演じているのではなくて、ホントに精神を病んでいるようだ」

と進言します。

でも、彼女の男好きするルックスが上層部に買われて

「女優マリリン・モンロー」が誕生します。

 

養成所で、ノーマは、キャスとエディに出会い、セックスもふくめた友人関係に。

キャスは喜劇王チャップリンの息子、エディは俳優エドワード・G・ロビンソンの息子。

ノーマには父はいませんでしたが、

「偉大過ぎる父を持つと不自由で、君がうらやましい」といわれます。

彼らといるときだけ、ノーマの心は

マリリン・モンローからノーマ・ジーンに戻れたのですが、

「ナイアガラ」でもブレイクし、マリリン・モンローの人気が上がるにつけ

彼らとの交際も禁じられるようになっていきます。

 

 

それでもノーマはキャスの子を妊娠。

エージェントはすぐに中絶の手配をして、

あっさり次の「紳士は金髪がお好き」の撮影に入ります。

 

そのころ、たくさんのファンレターに交じって、

実の父を名乗る人物から手紙が届き始め、

ノーマは父に見守られていると勇気づけられます。

 

ある時、

「特別な人がホテルの部屋で待っている」

といわれ、父かと思って部屋に入ると、

待っていたのは大リーグのスーパースター、ジョー・ディマジオでした。

 

その後2人は結婚しますが、家庭に入ってほしいディマジオとはそりがあわず、

「七年目の浮気」のあのスカートがめくれるシーンが熱狂されると

ディマジオは不機嫌になりました。

 

ディマジオとの結婚生活はすぐに終わり

1954年には劇作家のアーサー・ミラーとの結婚。

ミラーとの子を授かりますが流産。

「お熱いのがお好き」で映画復帰しますが

精神状態は不安定で、たびたび撮影はストップします。

大統領との交際もはじまりますが

屈辱的な高級娼婦扱い。

 

キャスが亡くなったという知らせが入り、

郵送されてきた形見の箱には

思い出のぬいぐるみと一緒に手紙があり

実父からと思っていた手紙はキャスが書いていたことがわかります。

 

意識がもうろうとするなか、

酒で過剰な量の安定剤を流しこみ、ノーマはベッドに横たわります。 (おしまい)

 

 

アナの熱演となりきりぶりに、驚きを通り越して感動しました。

アナはキューバ出身だし、素顔は全然 似ていないのにね。

ただ、オスカーノミネートしたクリステン・スチュワートより

はるかに素晴らしかったと(私は)思ったけど・・・

 

 

まあ、この辺の再現度の高さは、本人よりも

メイキャップや衣装の担当者のクオリティでしょうけどね。

ノーマとアナの素顔は似ていないけれど、ただ、身長は同じくらいなんですよね。

これ、けっこう大事だと思うんだけど、割と無視されがちですよね。

 

「スペンサー」でいうと、(これに限らずなんですが)

180cm近いダイアナ妃を演じる小柄な女優たちには

誰かの横に立つときにちょっと猫背がちになったり、

長い手足をもてあまして、一瞬しぐさが美しくみえなかったり・・・

そういうのが再現できてなかったような気がしました。

(「クラウン シーズン5」のダイアナ役は、一転、

身長190cmのエリザベス・デビッキになるそうですよ)

 

 

それにくらべたら、ノーマとアナはいわゆる中肉中背。

ナイスバディに思われているけれど、今の感覚だとちょっと違うかもしれません。

 

実は私の通っているスポーツジムの更衣室に、

なぜか

「マリリン・モンローが体操してる」みたいな写真が飾ってあるんですが、

(私がいうのもなんですが)手足が短くて、なんかモッサリしていて、

体も固そうで、

ほかの引き締まったアスリート体形の人とくらべると

かなり見劣りしちゃうんですよね。

 

冷静に考えると、彼女はそこまで美人じゃないし、超人的なスタイルでもないし、

演技もそこそこで、踊りや歌がスゴイわけでもなく、

体くねくねさせて、妖艶に微笑んで、

「セクシー♡」という「イメージ戦略」だけでやってるわけですよね。

とても長続きするとは思えない・・・・

 

ノーマ自身が、ブロンドに染めた髪と、ホワイティの手による派手なメイキャップと

露出度高いセクシーな衣装で「変身」しているわけだから、

似て当然といえなくもないんですが、

過去作だと「マリリン7日間の恋」のミシェル・ウィリアムズとか

映画のなかではセリフ回しとかそっくりでしたが、

静止画でみちゃうと、全然似てないですね~

 

 

 

亡くなるのが早かったから、私はリアルタイムで「マリリン・モンロー」を知りません。

 


「聚楽よ~ん♪」の人はそっくりさんでしたよね(笑)



 

小川ローザの「Oh!モーレツ」はリアルに覚えていますけど

子ども心に恥ずかしくてものすごく気まずかったけど、

当時世間では大人気でした。

「七年目の浮気」のアレも、きっとこんなものでしょう?

あのシーン、ディマジオが猛烈にイヤな顔をしてましたけど、

あそこは

「妻のキャリアのために理解ある夫でいるべき」なのかなぁ・・・・

 

 

ディマジオもミラーも、ノーマよりも10歳以上年上で、

映画の中では「パパ」と呼び、行方知らずの実父をかさねていたように思えましたが

結婚生活は長続きしませんでした。

ノーマが仕事をやめようとしなかったのは、

単に人前に出て注目を浴びるのが好きだったのか?

セクシー女優を足掛かりに本格舞台女優を目指していたのか?

後者のようにも思えましたが、結局そこまでの余裕はありませんでしたね。

 

一見バカそうに見えて、実は読書家で

ドストエフスキーやチェーホフも読み込んでいる・・・

ミラーをも驚かすほどの洞察力をもっている・・・

といったエピソードが印象的でしたが、

このへんはどの程度真実なのか?

 

ジョイスCオーツの原作からさらに大幅に脚色したということで

原作を探したら、けっこうフツーに図書館で借りられそうです。

 

読んだうえで、もう一度感想を書きたいと思います。

 

 

 

「ブロンド」は、配信なので気軽に見られますが、

170分という長さに加えて、ネットフリックスでは珍しいR18指定。

エロいというよりは、(年齢に関係なく)トラウマになりそうな

気持ち悪いシーンがあるので、そこは要注意です。

最後の方の放尿シーンとか、オーラルセックスとか必要だった??

最初の湯船に沈めるのとか、しつこくでてくる胎児の画像とか

あちこち削ったら、「R15で2時間以内」になるような気がするんだけどな。

 

「主演女優」と「面白さ」「興味深さ」では

「スペンサー ダイアナの決意」を上回っていたと、個人的には思うので

もったいない感じです。

 

イヤだったら途中で離脱もできるので、

妊婦以外のかたには、強くおススメ!