映画「ベルイマン島にて」 2022(令和4)年4月22日公開 ★★★☆☆

(英語;字幕翻訳 平井かおり)

 

 

雲の上を飛ぶ飛行機。

揺れがこわくて、妻のクリス(ヴィッキー・クリープス)は隣のトニー(ティム・ロス)にしがみついていますが

なんとか空港に降り立ち、そこからは車を運転して港へ。車ごとフェリーに乗り込み・・・・

 

ふたりがやってきたのはスウェーデンのフォーレ島。

巨匠イングマル・ベルイマンが晩年を過ごし、多くの映画作品の舞台となっていることから

別名を「ベルイマン島」といわれており、映画製作にかかわるこのカップルも

執筆作業にインスピレーションを得るために、アメリカから訪れました。

 

ベルイマン自身は結婚離婚を繰り返し、6人の妻に9人の子どもたち。

ようやく最後の妻イングリッドとこの地に落ち着いたようですが、

子育ては妻に丸投げ、と聞いて、クリスはショック、

「好きなアーティストはいい人でいてほしかった」といい、

トニーと行くはずだった「ベルイマン・サファリ(ガイド付きツアー)」もすっぽかしてしまいます。

 

ひとりになってしまったトニーでしたが、とりあえず効率よくひととおりの島の観光ができました。

また彼は有名な映画監督のようで、いろんな人にサインや写真を求められていました。

 

一方のクリスは、たまたま知り合った財団の手伝いをしている若い学生に

個人的にガイドをしてもらって、サングラスや羊の毛皮も買い込んで、帰宅します。

 

クリスとトニーが泊まる場所は「ある結婚の風景」の舞台となった家で、

トニーはここですぐに執筆をはじめますが、

クリスは別棟の風車小屋で書くことにします。

 

                

 

トニーの留守中に彼の原稿をこっそり見ると、順調に執筆できているようですが、

ただ、絵コンテの卑猥なイラストに眉をひそめるクリス。

クリスも書き始めたものの、途中に行き詰り、トニーのアドバイスを求めることに。

 

「私にとって執筆は拷問よ」というクリスに

「無理してやらなくていいよ」と他人事みたいに答えるトニー。

「なんですって!専業主婦になれというの?!」

「いや、別のを書けばいいと思って・・・・」

「励ましてくれると思ったのに!」と怒りながらも、

クリスは自分の考えた設定やストーリーをトニーに話すことにします。

                           (あらすじ とりあえずここまで)

 

           

 

フォーレ島はバルト海に浮かぶスウェーデンの島で、ストックホルムから200km、

北極圏でもないんですが、それでも、そんなに気軽に行けるところでもなさそうですね。

なので、やってくる外国人観光客は、もれなくベルイマン作品のファンで

いわゆる「聖地巡礼」にやってくるわけです。

冷やかしの観光客より、学生や物書きやデザイナーなどのクリエイターも多く、 

財団がしっかり管理して効率よく観光させ、 

島中をテーマパークにして、お金を落とさせるシステムができてるようですね。

(英語のわからない地元民があんまりウエルカムな感じでなかったところとか、けっこうリアルを感じてしまいました)

 

ベルイマンのファンだったら、このツアーだけで、きっとテンション上がるんでしょうけど

「野いちご」と「ある結婚の風景」くらいしか観ていない私にはピンときませんでした。

そんななので、以下は、ベルイマンのファンの方はスルーしてください。

「ベルイマン、あ、聞いたことある」とか「ベルイマン、誰?」

という人限定ということで・・・・・

 

 

ところで、クリスとトニーの関係なんですが、当然「夫婦」と思ってみていたら

途中で「友人のトニーと来てる」というセリフがあって、ちょっと驚きました。

籍は入れていないとしても、事実婚だったら、そんな言い方はしないと思うんだけど

もしかして、クリスは「私はフリーよ~!」と強調したかったとか??

 

クリスは娘のジェーンのことを非常に気にかけていましたが、

長い逗留に連れてこなかったのだから、高校生か大学生くらいかと思っていたら

ジェーンはまだ幼く、母に預けてきたようです。(アメリカで?)

 

それから二人の年齢のことは全くでなかったのですが、キャストの実年齢でいうと

ティムは60歳、ヴィッキーが38歳なので、なかなかの年齢差です。

(身長もヴィッキーのほうが5cmくらい高いし)←関係ないけど・・・

 

ただ、本作の監督ミア・ハンセン=ラブも26歳年上のアサイヤス監督と結婚していたので

多分この年齢差で正しいみたいなんですよね。

 

そうするとジェーンはクリスの連れ子なのが自然ですが、予告編では

トニーを「パパ」と呼んですごく懐いていたしなぁ・・・・

 

ともかくこのふたり、トニーの大人の対応で、大げんかにはならないけれど

かなりギクシャクとした関係。

「相手に質問しておきながら、自分の予想と違う答えだとキレる」っていうのは

ちょっと病んでる女性あるある、ですね。

 

幼い娘を置いて島にやってくるというのは、なかなかの決断で

そこまで自分を追い込んでいるのに「書けない」っていうのは辛いですね。

だけど

「専業主婦になったら負け」といういい方は

(専業主婦歴の長かった私としては)ちょっとイラっとしてしまいました。

 

あらすじ続きです。

クリスの執筆しているドラマの脚本部分(劇中劇)は青字で書きます。

28歳の脚本家のエイミーは、夏のおわり、友人の結婚式でフォーレ島に向かいますが

船の中で、元カレのヨセフと偶然再会します。

 

          

 

10代のときのヨセフとの恋は実らなかったけれど、

やっぱり思いは募り、周囲には初対面を装いながらふたりは近づき

自転車で海にいって泳いだり、なんどもベッドをともにします。

              

 

エイミーには結婚歴があり、4歳の女の子の母親でした。

またヨセフには、ミシェルという恋人もいました。

「君も愛しているけれど、ミシェルとは家庭をつくりたい」

というヨセフに

「なんで私じゃだめなの?あなたの子も欲しかった」

 

ヨセフはエイミーから逃げるように、予定より早いフェリーで帰ってしまいます。

 

 

実はエイミーは若いころのクリスがモデルで、

「運命の人に出会ったのに、1回目は早すぎで成就できず

そして2回目は出会うのが遅すぎた」というのを描きたかったようです。

 

このあと、絶望したエイミーはドレスで首を吊るかしら?それとも・・・?

と、結末に悩むクリス。

 

「クリス」と呼ぶ声が聞こえ、ふりかえると

なんと(ドラマのなかの)ヨセフが立っていました。   (おしまい)

 

 

青字の部分のドラマが(けっこうレビューでは高評価ですが)

私には全く面白くなくて、

「もしかして、クリスは脚本の才能ない?」

とか思ってしまいました。

自分の実体験を書くのって、ほんとによっぽどのネタ切れですよね。

それに、「運命の人」は絶妙のタイミングで運命的にあらわれるもので

早すぎたり遅すぎたりしたら、それは「運命の人」じゃないんじゃないの?

 

現実と虚構の境目があいまいになってきて、

最後はヨセフとエイミーが現実世界に現れたのか?

クリスが物語の中に飛び込んでしまったのか?

それはいいとしても、

劇中劇のつまらなさにはちょっと唖然としてしまいました。

自分の過去を曝したうえに不評だったら、踏んだり蹴ったりですね。

「エイミーの4歳の娘」のモデルがジェーンだと思われてもいいのかしら??

 

それよりは、年の離れた同業者の夫婦の話のほうがずっと興味あるんですけど・・・・

 

    

 

この上の画像は、映画とは関係なく、フォーレ島の観光案内なんですが、

こんな感じの風景はひととおり登場していたから、

「観光客誘致映画」としては合格で、ベルイマン財団の人たちも納得でしょう。

 

そういえば、ベルイマンハウスには立派な図書室もありました。

 

            

 

なかなかの蔵書数なので、普通だったら私は大興奮なんですが

日当たりが良すぎて本が傷みそうで、むしろ心配になりました。

「絶景本棚」には、ちょっと認定できませんね。

 

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初日鑑賞のポストカードをいただきました。

 

本棚をみたら、全く読んでない本を発見!

少しはお勉強しないと。