ここから【ノッツ】さんの描く【ソラミちゃんの唄】の2巻の後半戦です。
新たに友人となったキリコさんを加えての大学生活は一体どのようなものになっていくのでしょうか。
いつまでも現状が続くわけでもなく。
出会いあれば別れあり。
そして新たな未来が待ち受けています。
最終回はどのようなものになるのでしょうか。
彼女達の友情は永遠と信じたいものです。
とことで。
ネタバレ含む感想。
【できるコトしたいコト】
十代(なのは一人だけ)真剣しゃべり場なお話。
いつかは巣立ち、戦いの世界へ行かなくてはいけません。
いつまでも猶予期間があるわけでもなく、時間は皆平等に過ぎていきます。
子供の頃は目の前の事だけをやっていればよかった。
大人に近づくにつれて将来の自分を想像しながら準備するようになります。
ここで努力して成果を上げたり能力を高めたりすることができれば将来の選択肢は広がります。
怠惰に毎日を過ごしてしまうとそれだけ選択肢が狭まる事になり、結果未来の自分が苦しむ事となります。
どうにかなると言えばなるかもしれませんが、その結果自分は苦労してますので。
なんやかんやで無事ライブも終了してお疲れ様ーってことで。
せっかく作った新曲よりも既存の曲の方がウケが良かったようで何とも言えない感じになってますが、それでも新曲良かったよーという生の声を聞けて進むべき道が見えた感じとなっております。
変化する事自体は悪い事じゃないです。上手くいかない事もあります。
でも、基本となるものをしっかりと確保していれば間違った道に進んでもそこに戻ればいいだけですから。
冒険しなきゃ新たなものを得るのは難しいのです。あと勇敢と無謀ははき違えないように!
皆の予定とか都合がピッタリだったのか、なぜか急に温泉一泊旅行しております。
タイミングとしてライブ後の打ち上げっぽくなっておりますが、これこそが大学生特有のフットワークの軽さだと思います。
社会人になると難しいんですよホント……。
その温泉旅館でなぜか本音トークしてるんですが。本音というか毒というか。
ひとり後輩のフミリンは色々溜まってたのでしょうか、東尾ばりのインハイビンボールや内角シュートを投げまくってます。
そしてソラミさんがファザコン気味という言葉がクリティカルヒットしたみたいです。危険球退場。
受験生で勉強とかのストレスが酷いからって事でひとつ。
そこからもぼつぼつと皆の闇がこぼれはじめます。
内気で浮いた話もなく友人も人生経験も少ない自分が教師を目指してもいいのか、とさっこさん。
大学三年生のネモさんはスキップスキップそしてスキップにリバースと先送りと過去の思い出に逃避気味。
でも。
この仲良し四人組だからこそ言える本音。
大人になってもまた皆で集まってこうやってお話したいね、と。
彼女達の友情はとても眩しい。
【花は風に揺れて】
選択を迫られる人生の岐路なお話。
好事魔多しとは言いますが。
少しずつ色々な事が軌道に乗ってきたソラミさんに大きな悩み事。
突然の来訪客。
遠路はるばる東京からやってきたソラミ母からミノミノと呼ばれたおばさん。
そのミノミノ本人はソラミ父とはただならぬ関係と匂わせてきてますが、すぐさまソラミ母がミノミノの本名と続柄を説明。
ソラミ父とはいとこの関係ですってよ。
そしてソラミ母に対して泥棒猫とも言ってます。色々めんどくさそう……。
喧嘩するほど仲がいいとは言いますが、このお二方に関してはどうなんでしょうね。(どーでもいーですよっ♪)
そういう関係なのに遠くからわざわざやってきたこのミノリさん(ミノミノの本名)にはもちろん訳があります。うっぷん晴らしの為に来たわけじゃありません。
私生活ではポンコツなソラミ母ですが、お仕事に関しては有能だそうで。
東京の会社から好条件でオファーがきてるみたいです。
今ソラミさんたちが住んでるおうちのローンもソラミさんの学費もすでに見通しが経ってるくらいに稼いだのだから、自分の人生と住んでるおうちの事を真剣に考えろと。
ソラミ母はこの事を以前から電話で言われてたようです。
でも大切な思い出のこのおうちから離れたくないのか聞く耳を持ってなかったようです。
そこでミノリさんが直接やってきたわけでして。
そして衝撃の事実。
ソラミ母はこの事を一切ソラミさんに伝えていませんでした。
今明かされる衝撃の事実です。
ミノリさんがここまでソラミ母を必死になって説得するのも、ソラミ母がいつまでも亡き人に縛られていてこのままじゃ不幸になると心配しての事です。
ただ、二人にとってこのおうちはとても大切なものだということも理解しています。
ミノリさんが愛した人の家族だから。
だから相手を傷つけるであろう言葉を使ってでも本気で説得してるのでしょう。
これもひとつの愛のカタチ。
『あなた……想い出と一緒に死ぬつもり?』
第三者が遠くから見てるからこそ気づく点もあります。
それまでの母娘の姿はとても見ていられるものではありませんでした。
そこにひとつの楔を入れたのがソラミさんの親友のさっこさんでした。
そしてフミリンやネモさんという新たな関係が生まれてソラミさんの歯車は動き始めました。
ではソラミ母はどうでしょうか。
前に進み始めたソラミさんやその仲間達のおかげで少しずつ母娘の関係は少しずつでも改善されてきています。
だけど今まで通りソラミ母は何かを忘れるように目を逸らすようにお仕事に打ち込んでいます。
……嫌われるのを分かっててもソラミ母を説得し続けてるミノリさん。
彼女の真剣な声はソラミ母に届くのでしょうか。
【どこでもどこまでも】
いつまでも変わらない愛のお話。
あれから毎日悶々と過ごしていたソラミさん。
試験もほとんど終わったので意を決してミノリさんが言ってた件をどう考えてるのか聞いてみる事にしました。
母を訪ねてその話題に持ち込もうとしたところ、母は何も聞きたくないという姿勢でその場を離れようとしました。
『逃げずに話を聞いて!』
ソラミ母の逃げたくなる気持ちも分かります。
でもソラミさんは知りたいのです。どうしたいのか、どう考えてるのか。
ソラミ母は迷ってるみたいです。
その誘われた先のお仕事に魅力を持っているようで、本心では行きたいけど彼女の中ではおうちが最優先。
そんな母を見て自分はもう大人なんだから東京に行っても一人で留守番できるよ、と。
恐らく母親もそれは考えたみたいです。
でもそのソラミさんの言葉を静かに、そしてハッキリと問い返しました。
『大学生の頃はそれでもいいけど、卒業後の進路はどうするの?』
『この家を出ないことを前提で将来を考えるようになったりしない?』
『ソラミこそココに縛られる生き方をしそうで心配』
『ただでさえ一年以上この家に引きこもってたあなたなのよ……!?』
最後の一言だけは余計な気もしなくもないですが。
この正論に対してソラミさんは何も言い返せません。
だからこの家は私がずっと守るから、とソラミ母。
その発言にソラミさんは即否定します。なぜ自分をそこまで犠牲にするのかと正論で反撃します。
その正論に対しソラミ母は勢いに任せて親として言ってはいけない言葉をぶつけました。
大きく傷ついたソラミさんは反撃とばかりに母親へは言ってはいけない言葉をぶつけてしまいました。
そんなこんなで大げんかしたそうです。
事の顛末をソラミさんから聞かされたさっこさんとフミリンは【子供すぎる>内容のハードさ】の思いが強かったようです。
そりゃそう思うさね。
でもソラミさんとこの母娘はこういう喧嘩したこと無さそう。
喧嘩云々はともかく、自分の気持ちを伝える事は大事だと思います。そしてそれ以上に相手の気持ちを聞く事も大事です。
彼女達もこのおうちに対して色々想いがあるのでしょうが、結論としては他のどの場所でも自分達は変わらないよ、ということで。
ソラミさんは父親との思い出以外にも大事なものがいっぱいあると自覚したけど、母親はどうなのだろう、と。
あとはソラミ母の気持ち次第ですね。
あの口喧嘩の後でも母親の事を気遣えるのはソラミさんが成長した証じゃないでしょうか。
【労働! インドアガール】
はじめてのおしごとなお話。
アルバイト。
職場や仕事内容に多種多様だと思います。
正直しんどいのとかこれでお金貰ってもいいのかとかそういうのも含めて良い社会経験になりますね。
そこで自分の適性を知る事もできますし。
単純作業はちょっと無理、接客業は楽しい。
暇な時間がしんどい。与えられた仕事をこなすだけなの気楽。
人付き合い辛い。色々な人と接するの面白い。
そういうのを知る事ができますけぇね。
でも、社会人になってある程度経験を重ねたら考えや適性がコロっと変わる事もありますので。
そういう時は臨機応変。あと学業優先で!
初めてのアルバイトはやっぱり不安だと思います。
自分も不安でした。何ならふたつ目のアルバイト先も不安でしたが、そこは友達からの紹介だったので気分が楽だった部分もあります。
アルバイト先の候補として人によって色々条件があるとは思いますが、将来自分がその道へ進みたいと思ってる職種に触れられそうな場所が一番役立ちそうではあります。
ここでソラミさんが勤める事になった楽器店なんてソラミさんにピッタリだと思いますし。
ただ、好きな事を生かしたお仕事を選ぶのは良い点も悪い点もあります。
好きな事で働くのはいいけど、自分の理想と現実が剥離しててお仕事が嫌になって好きな事が嫌になる可能性もあります。
アルバイトの時点でそれに気づければ軌道修正も可能なのでまだ取り返しは付きますが。
他にも色々な可能性はありますが、結局は誰も将来の事は分かりません。
せっかく大学に入ったのでその道に未来があるのかどうかを在学中にしっかり見極めることも大切です。
(大学選びの前に見極めろという意見は自分に効くのでお手柔らかに)
個人的には専門的な道に進みたいなら専門学校の方がいいんじゃないかなって思います。
もしくは普通科とかじゃない専門性のある高等学校。
でもこういうのも時代によってどの道が有利なのか変わってきますのでにんともかんとも。
結論なんて出ない。
【LOVELY SLOW STARTER】
未来に向かって成長してるお話。
自分自身の心に問いかけてみる。
時と共に歳を重ねたけど、自分はちゃんとした大人になれたんだろうか。
うーん。
子供の頃とかわんないよーな気もするけど明らかに考え方が成熟してきたなと思う事もあります。
そもそも"ちゃんとした大人"って何なんでしょうね。
子供の頃は身近な大人、家族とか先生とか。
そういう人達は明らかに"ちゃんとした大人"だと思ってました。
自分がその年齢になった時にふとしたタイミングで気づくと思います。
ちゃんとした大人に見えてただけじゃないのって。
ソラミさん達。
この一年で明らかに成長の跡が見られます。
ソラミさんはヒキコモリ時期の辛い時期を乗り越え、少しずつですが社会性を身に付けています。そしてアルバイトで得たお金でCDを作る決心をしています。
さっこさんはまだまだ人見知りの気はありますが、それでもソラミさん達を指導しているうちに教師適正に気づき、教師になるための道を歩み始めました。
フミリンはソラミさん達と同じ大学へ入学するために受験勉強に励みつつもソラミさんの生き様やネモさんの言葉に感銘を受け、自身の好きな事でもある漫画を描く事に信念を持って取り組んでいます。
ネモさんも現実逃避時に知ったソラミさんの曲と存在に依存してずっとべったりだったのが、きちんと親に現状と将来の事を話し合い、自分ちの関連会社で修行させてもらう事が決まったみたいです。
良い人達と良い出会いをして、良い成長をした。
皆が皆自身が願う将来の道を歩めるよう一歩一歩着実に進んでいます。
こういう事を積み重ねて大人になっていくのだと思います。
社会に出れば否が応でも大人として扱われるわけですが、その時にいつまでも学生気分ですと自分も周りも辛いですよね。
そう考えると親って凄いなーって感謝と尊敬の念が湧いてきます。普段の生活を思うととてもじゃないアレなんですけど(笑)
社会に出て辛い事はいくらでも起こります。
その時に大切な仲間達の事を想うと踏ん張れる、そんな支えにもなる友達がいるなら大事にしてもらいたいものです。親もね。
【旅立ちの日】
ひとりだけの思い出の場所じゃないお話。
出会いあれば別れあり。
いつまでも同じままではいられません。
良い事も悪い事も辛い事も楽しい事も数えきれないくらいたくさんあった思い出たっぷりのあの場所。
家族だけじゃなく大切な仲間達が集う場所でもあったあの場所。
自分達の未来のためにそこを旅立つ日がやってきました。
最後の晩餐じゃないですが、最後の思い出としていつもの仲間とソラミさんの好物の豆乳鍋、いつもとは違う最高級のお肉を入れた色々な意味での特別なお鍋を食しました。
辛くないわけありません。
でも悲観的な別れじゃなく、夢希望溢れる新しい道を歩む為の旅立ちなのです。
だから『さようなら』じゃなくて『行ってきます』という挨拶。
大切な思い出はみんな自分自身の心の中に深く刻まれています。
……でも。
思い出す度に涙が出るんだろうなって。
ただいまセンチメンタル。
【スカイゲイザーズ】
ありがとうと感謝を唄に込めたお話。
あれから時が経ち。
ソラミさんのCDが全国で発売される事になり。
さっこさんは地元で教師となりがんばる毎日。
フミリンは東京の書店員として内定をもらい、描いてた漫画が商業誌に掲載されました。
ネモさんは今まで自堕落をしていた分を取り返すかのように順調に社会人として自分を高めていってます。
あの頃ずっと一緒だった皆はそれぞれ違う道を歩んでいます。
だけどあの頃の思い出はそのままで、お互いを想う気持ちは相変わらず。
離れていてもずっと一緒。
人が人を呼び、繋がった縁。
ひとりだけの力だときっとこうはならなかったと思います。
ひとりでやれる事には限界があります。
辛かったら誰かに助けてもらってもいいんです。迷惑かけてもいいんです。
出来る事を少しずつやっていけばいいんです。
きっと大丈夫。
遠くに離れていても。
『ありがとう』
当時表紙買いした単行本のひとつです。
そして今はボクの大好きで大切な漫画作品の中のひとつです。
ノッツさんらしい明るく優しいギャグと辛く泣き叫びたくなるような悲痛な叫びとも言えるシリアスが強く心に訴えてくる作品となっております。
ソラミさんのどん底状態から何とか一人前として歩きはじめるまでの辛く苦しい道を仲間と共にお互い高め合って成長していく物語でした。
最後にも触れたように、仲間がいたからこそ、助けてくれたからこそありえた未来だと思います。
世の中に孤独を感じている人はいると思います。
でもどこかに手を差し伸べてくれる人はきっとどこかにいます。
そう信じないとこんな世の中やってられません。
ソラミちゃんの唄はノッツさんのデビュー作との事です。
デビュー作ですが、この作品にノッツさんのすべてが詰まっていると思います。
この作品を読んで他の単行本をすべて買い漁りましたが、どれもこれもノッツさんの色がしっかり出ててオススメです。
作中の最序盤のテレビ画面にクルミくんとか映ってますが、そういう所がまた遊び心満載で思わずクスっときました。
最終巻が出てから長い間電子書籍化されてませんでしたが、数年前に電子書籍化されました。
紙書籍は持ってるのですが最近いつでもどこでも読みたくなったので電子版を買いました。
今回のブログを書いたのはそれがきっかけです。
素敵漫画だったけど中古しか手に入らない状況じゃなく、電子版が買えるようになった今なら、と。
ソラミちゃんの唄を買って読んで知ってもらえたならなって思いました。
それではまた次回お会いしましょう。
ごきげんよう。
追伸
ボクの自称23歳はノッツさんが元ネタです。
あと当時本気で騙されました。ソラミちゃんの元ネタがノッツさん自身だったのかなーって。
純粋っすね(笑)