さっき原爆の本をよんでました。
そして、ふと、ある患者さんをおもいだしました
その人のことを聞いてください
彼女は原爆手帳を持っていました
いつも静かに編み物をする上品な方でした
定期的な採血を必要とされていました
いつも軽い白血病のような数値だ。これは原爆の後遺症だろう
しんどいはずなのに、弱音をはかない
すごい人だ
医師がそういいました
彼女は原爆のことを一切話しません
ある日わたしは、わたしの祖母も広島出身なんですよ
市外なんですけど
と、いいました
彼女はゆっくりとあたしをみて
あの日のことを話してくれました
彼女は爆心地から2,5キロにはなれた所にすんでいました
ご主人と、子供さんがいたそうです
いつものように市内で働くご主人を見送り
朝ごはんをたべていたとき、
光が走り地震がおきたのかと思ったそうです
子供の無事を確認するとご主人を探しにいったそうです
そのときの街の様子は、あなたも聞いたことがあるでしょう
彼女はそういいました
ご主人はみつからなかったそうです
彼女は脱毛や体調不良に悩まされながらも懸命にいきました
子供のために、ご主人のために
被爆のことは誰にも言わなかったそうです
差別とかが嫌だったし思い出したくもなかった
そういいました
原爆の慰霊祭は辛くていけなかった
息子さんが成人して県外に呼んでくれ
あたしはなんだか複雑な思いがした
そういいました
彼女が話してくれたのはそこまでです
それからは原爆について話しはしませんでした
ただ、はなしてくれてありがたいと思いました
きっと、あたしにだけ話してくれたような気がしたから
いつか息子が大きくなったら広島にいって
彼女の話を聞かせたい
そうする必要があると思います
いまは天国の彼女、安らかにお眠りください