きょうはあるお年寄りとの思い出を効いてください


いまから10年前


勤めていた病院で一人のおじいちゃん患者さんと仲良くなりました


彼は一人暮らし


毎日お弁当を買って食べていること


毎日焼酎を2合飲むのが楽しみなこと


わたしは彼を自宅に呼びました


お鍋をするから来てよって。


彼はにっこりわらっていくよっていいました


かれはとっておきのいいお酒をもってやってきてくれました


そしていろんな話をしてくれました


戦争でフィリピンにいたこと


このままじゃやられるとおもって衛生兵に志願し生き残ったこと


たくさんの戦友が亡くなったこと


4回結婚したけど子供には恵まれなかったこと


好き勝手いきてきたから唯一いる弟とも疎遠なこと


いっぱい話していっぱいお酒をのみました


旦那も楽しそうに話をきくのでとめどなく彼の人生を聞くことができました


それから少しして


彼に肺がんがみつかりました


すでに末期


告知はされていませんでした


もうお鍋は食べれそうにないね


そういって彼はわらいました


そしてお正月


お鍋おいしかったありがとう


一言かいた年賀状が届きました


年明けすぐにかれは集中治療室に入りました


もう今日が峠という日わたしはお別れの挨拶をしにいきました


彼の手をにぎってこちらこそありがとう楽しかったよって


心の中でいいました


弟さんがそばにいてずっと下をむいて拳を握り締めていました


その日の深夜


あたしは急に目がさめて水を飲みに台所にいきました


すると部屋中に靄がかかりふわふわしているのです


あたしはあわてて布団にもぐり時計をみました


2時45分


彼だ


とわかりました


挨拶にきたんだ


つぎの日出勤するとやっぱりその時間に亡くなっていました


最後は弟さんにみとられずっと一人暮らしの彼も寂しくなかったろうとおもいました


遺産目的よなんたいう人もいたけど


いまでもお鍋をすると湯気の向こうに彼の笑顔が見えるようで


あたしの心に残るひとです


どうか天国で安らかに眠ってください