2014 第15回サバニ帆漕レース | 冒険手帳のブログ
2014-07-12

2014 第15回サバニ帆漕レース

テーマ:サバニレース

本レース




レース前日、艇長会議でコース変更の可能性に触れた。
多くのチームは那覇まで行きたいのだろうが、この風では致し方ないだろうなー。

宿に帰り、コース変更の可能性と那覇までコースの要点をおさらい。

那覇までは例年に比べてコースの取り方に特別なことはないように思う。
潮は南への流れだが、強い南寄りの風が相殺して余りあるから全く気にする必要はない。
いい風が吹いていれば他の要因は無視して行きたい方向に真っ直ぐに向かえばいい。

注意する点は、初めの灯台下のコーナーでジシップに真っ直ぐに向かうと早い段階で追っ手になる。
単船の場合、強い風と波が重なると追っ手は最も難易度が高くなりリスクを負うことになる。

追い波に影響しない左寄りのコースを取り、儀志布島にしっかり舵を切れる時にグィーンとコースをとる。 
このコース取りは最もスピードに乗るやり方というより、よりリスクを減らすやり方だ。

儀志布島を超えると後はコースの戦略は殆どないのではなかろうか。 
風が無ければ潮や風向、吹く場所などいろいろな選択があり楽しめるが、そんな戦略など全てを吹き飛ばすほど風は真っ直ぐにゴールに向けてサバニを運んでくれる。


6月22日  レース当日

  


実行委員会は変更か否か、スタート直前までずいぶんと悩んだようだ。 
結果、島内放送でコースの変更が知らされた。 
朝、雲の流れを見てコース変更を疑いないものと思っていたので、実行委員会が悩んでいたことに少し驚いた。 

仮に那覇までのコースだったとしても、きっと多くのチームは完走できていただろう。 
もちろん私自身、名護ではこれ以上の風を何度の経験してきた。 
女海想も苦労しながらもいい経験ができただろう。 

本心では渡ってみたい気持ちがあったが、前日古座間味ビーチに回航するだけで沈したり、練習で幾つものチームが沈をして復活できないでいるのを見ると、こんな波の穏やかな環境でこうなのだから実際のコースでは複数のチームは恐らくドロップアウトするだろう。

このことを実行委員会はどう見るか?だと思うが、複数のチームは伴走船に世話になるだろう。
と予想される時は、今はまだコースの変更は致し方ないと思う。

伴走船はルール上付けているだけで最後の最後の手段であり、絶対に世話にならない。 
参加チームにはそんな気構えが必要なのだと思う。 

またそれぞれが自らのチームの正確なポテンシャルを知り、海況を判断し、伴走船に世話になる可能性があるなら自ら出場を辞退する。 
そこまで成熟した時、実行委員会はこうした条件下でも迷いなく那覇までの選択をするだろう。
だが、残念ながらまだそこまで成熟しているとは思えない。 


コースの変更により、早速舟の装備変更しなければならない。 
それはアウトリガーが付いたサバニに限ったことではない。

   


  



  


帆走の8割を占める安室島~嘉比島までのコースに有利なセッティングをする。
スタートの位置は北側から昨年の成績順となっている。
私は昨年出場していないので南側からのスタート。コース変更にはこちらの方が有利だろう。

前回のコース変更時、安室島の東端に直接向かうのではなくビーチの前にワンクッション、コーナーが設けられた。 
この年にも書いたように、この判断はとても理解できるものではなかった。 
なぜなら、どのチームもスタート時の混乱で必ず数艇はトラブルを起こしている。 
近い位置にすべての舟が集中するコーナーはトラブルを助長するだけだ。

更に前年成績が振るわなかった南側に位置したチームは、一旦下らなくてもいい下に下ってから風上に上らなければならない。 
前年の早いチームがむしろ不利なコースであっていいと思う。
何も手を加えないルール通りのコースが最もフェアーなのではなかろうか。

こうした理由から、前日の艇長会議で前回のようなコーナーは設けるべきではない。と主張し、
実行委員会からは設置の予定はない!と確認したにも関わらず、当日なぜか設置の検討がなされていた。 

たまたまそこに居合わせたので「それは絶対にやってはならない!」と上記の理由を説明して受け入れて頂いた。 
1チームのスキッパーに過ぎない意見を受け入れて頂いた実行委員会の懐の深さと、単に自らのチームの有利不利に主張しているのではない。
そのことを伝えるために敢えてこの場を借りでお伝えしたいと思う。


さて本題に戻る。
 
今回のコース変更は那覇までのコースより戦略の幅が広がりいろいろな戦略が考えられる。
という点で、私はむしろこちらのコースが好きだ。
だからと言って得意でも有利に働くという訳でもない。 

それぞれのチームは、それぞれに綿密な戦略を練っているのだろう。 
特に座間味を拠点に置くチームにとっては生活の場であり仕事場だから、細かな潮の流れや風の強弱は手に取るように分かっている筈だ。

願わくは、もう少し風が弱まれば戦略が多様化し結果に大きく響いてくるのだが。

 



コース

 


名護からは4チーム参加している。前日のミーティングで戦略は同じだった。

まずスタートで帆を上げたまま走るか?下して走るか? 
南西の風は僅かに帆に伝えられる向きなので多くのチームは帆を上げていた。 

ずいぶん迷った挙句、上げずに向かうことにした。 
砂浜で向かうべき方向にサバニを向け、帆を上げたら殆ど角度が無かったからだ。

  

 
古座間味の南端の壁を伝って風が回って本来の角度から南に寄っている。 
恐らく出て直ぐに壁が取り払われると本来の角度に戻って帆に風を伝えられるようになるだろう。
だが、私は更に安室島によって風が影響しないところまで行き、漕ぎでコーナーまで進むつもりでいた。

座間味島と安室島の間からはいい風を拾い、安室島を超えてからも回り込んだ風はしばらくはサバニを押し上げてくれるだろうが、帆を上げることで僅かに北に膨らみ、中間地点からは安室島の山から回り込んだ風に帆を利用するのは難しくなるのではないか。
それを警戒して10度程上ったら帆に風を伝えられない。なら、初めから向かうべきコースにリスクなしで刻んだ方がいい。


  


計画通りに行かないのが世に常で、スタートしてすぐ隣にピタリと海族サブローチームがいた。
しっかりと帆に風を捉えているのを見てやっぱり上げとけば良かった。と思った。 
とりあえず交わして本来のコースに戻そうとするが互いの距離は一向に変わらない。

一瞬スピードを緩めてから上に上るか過ったが、スピードを落とさず交わせるものなら交わしたい。 
たまに私も漕ぎをプラスするが、何とも行きたいコースに戻すことができない。

私の戦略は安室島に向けて早ければ早いほどその目的は達成される。
逆に言えばこのままの角度は逆効果ということになる。 

少しイラついて「あっち行きたいんだよ!」と相手に叫んだら、
「まぁーまぁー落ち着いてゆっくりいきましょう。」 何と余裕なコメント。
こんな場面であれほど落ち着いていられるのはそもそも人の器の違いなのだろう。 
うーん、確かに! 妙に納得して解決策を練った。


  


安室島の中間地点まではまだ時間はある。あそこまではまだ何とか風を拾える。 
すぐに帆を上げることにした。

スピードは出ないが、僅かに帆に風を伝えながらドンドン上った。 
安室島の最も高い山の中間地点で風がピタリととまり、すぐ前に回り込んだであろう風が海をなめていた。
帆を下ろし暫くは向かい風の中をガッツリ漕ぎ続けなければならない。 

「こっからが勝負だよー がんばれー !」 
「よっしゃー行くぞー」 まだまだ元気だ。





右に大きく広がったチームが何艇か見えた。
スピードも距離も確かに向こうの方が遥かに勝っている。 
だが要は風を十分に使える最後のコーナーに誰が最初に辿り付けるか。
最終的にはそこだと思っている。
(帰りのフェリーの中で、あるチームの一人が最初はガンガン走ってウチがトップだったよ。と言っていたが多分それは違うと思う。) 

最初のコーナーは波も思った程上がっていなかったので、様子を見ながらギリギリのコースを取る。
コーナーを回ったところで後ろを見たら何艇かはピタリと後ろに付けていた。
うかうかしていられない、全く離していないことに気づいた。

向かうべき角度が変わり、向かうべき方向と風と波が若干ずれていた。
こんな時の私が取るコースは、目標に向かわずに最も抵抗を少なくするために風と波に対して真っ直ぐに向かう。  

特に強い向かい風の時は効果的な方法だと思う。 
想像だが、もしシーカヤックなら同じような進み方をして時に向きを徐々に変えていく方法を取るのではないだろうか。

だが、帆かけサバニは大きい分風の影響を受けやすい。
僅かな角度でも思いがけなく風の影響を受ける。
「上って 上って」 「エッ まだ? 上るの?」 というところまで上る。
帆を上げ向きを変えて、スピードに乗るまでは実際思いがけなく下る可能性があるからだ。 

後ろに付けていたチームに聞いたら、どうしてあそこまで上っているのか最初は不思議だった。と教えてくれた。
「で? 上る必要はなかった?」と聞いたら上らずに失敗した、と。だいぶロスしたようだ。

私自身、あと2分上れば良かったと思っている。 
こんな時こそ、「急がば回れ」とうことなのだろう。

帆を上げながら後ろを見た。 
今度はある程度を離しているようだった。

風が安定している右側、安慶名敷島南端に向けて真っ直ぐに進む。 
風を入れてスピードを上げようとするが、強い風に腕力と腕が悲鳴を上げている。

那覇に向かうことを想定して左差しを重点的に鍛えていたのが裏目に出た。
しばらく頑張っていたがこの強風では片手使いは限界に近い。 
左手に二重にテンナーを巻き、両手でエークを持った。
このやり方は左差しだとしっくりくるのだが、右差しはどうも苦手だった。 
やっぱり徹底的に苦手を克服しておくべきだった。

コース変更になっても短い時間なら何とかなるだろう。とタカをくくっていた。
全ては弱いところを突いてくるものだ。 

この強風でカムクリートに指したことは無かったが、舟の揺れが安定している今、試して見ることにした。 
もし成功したら両手でエークが握れるので今よりは帆に風を入れられる。

「 カムにさすよーバランス 」 と叫び、少し風を逃がし徐々に引いてみた。 
だが安定していたとはいえ、この風と波だ、固定したティンナーによって舟は左右に揺れる。 揺れに対応できなければ沈のリスクが高まる。

沈のリスクを負ってスピードを上げるか? 
それともスピードは落ちるが少し風を逃がしながら片手で出来る範囲で進むか? 
二者択一しかない。

悩みながらもカムにかける二度目のチャレンジをした。
ティンナーを引き帆に風を入れると同時に右に大きく傾く。
全員左に全体重を乗せ、めいっぱいエークで進路を保つ。

波に乗ったときは、それは気持ちいいほどスピードに乗る。 
安慶名敷島近くになると追い波となり波に乗ると右に振れようとする。 

全員が左を漕いでいるので最悪の場合、一瞬で沈する。 
エークを戻し「ストップ!」と叫ぶ。 
そんなリスクを二度三度繰り返しているうちにカムが何かの拍子で「カクン」と小さな音を立てて外れた。 

全員思いっきり右に全体重を寄せ、私はとにかくティンナーを引き寄せた。
殆ど真横になった状態から体重で立て直すことができた。 
立て直すことができたのは奇跡に近い。 きっとスピードに乗っていたからだろう。 
何とか沈を免れこれよりカムにかけることをやめた。

(ざまみ丸の艇長から後で聞いたが、前を走る私たちのマストが突然真横になって沈したのが見えた。そしたらまたひょこり復活してびっくりした。そうだ。 )





嘉比島に差し掛かる頃、右後方から迫ってくる音が聞こえた。 
ユニフォームがブルーだったので、どこのチームなのか分からなかったが横に並んだ時にざまみ丸と知った。
ずいぶん離しているつもりだったが、こんなところまで来ているとは何とシブトイ奴らだ。

「岩を超えて同じだったらこっちが勝つぞ! それまでがんばれ!」
少し逃がし気味だったティンナーをもう一度引き、老体に鞭を打つ。 
嘉比島北端の岩まで来ると阿嘉島の壁に遮られていた風がここぞとばかりに吹いていた。

ジャイブするか迷い、少し風を入れたらビューンとスピードが増し、クルーの一人が「ヒャッホー 」と叫んでいた。
二重に巻いていた手が締め付けられ、この後更に引き来なければならないことに躊躇した。

一発勝負、失敗は許されない。
何度か経験はあり確率的には何とかクリアーできたかも知れないが、ここでリスクを負うより安全策を取った。 

風上に立て帆を下ろし岩を超えて帆を上げる。
ところが簡単に上がる筈の帆がなかなか上がらない。

「早くあげて! 早く!」
状況はミナーを持つ岩田もよく分かっているが、上がらないのは如何とも仕方がない。

帆が上がらずにもたもたしているうちに、ざまみ丸は悠々とゴールに向けて凱旋。
そのうちに、うみまるが横をスーッと通り抜けていった。

次にやんばるチームが向かっているのが見えた。 
何とか帆を上げることに成功してうみまるを追っていたら、突然目の前でひっくり返った。 
あっけにとられながらも何だかうみまるらしいなー。 

並んだやんばるチームは、弥帆の威力を加えドンドンスピードを上げていった。
ゴール近くのマリリン像の近くには多くのギャラリーがいたのでなるべく近くを走った。


  

  


終わり


レースを終えて

今年もざまみ丸に負けてしまった。 
勝つチャンスは無かったのだろうか? 

コース変更は十分に勝つチャンスはあったと思う。 

・安室島から帆を上げた時からリスクを追って走るべきだった。

・嘉比島の岩で一か八かジャイブにチャレンジすれば良かった。
こんな時もあろうかと名護では更にハードなコンデションで何度も練習していた筈だ。 
一段縮帆をしていたのだから大きなハードルではなかった筈だ。

ざまみ丸はここからはアウトリガーを引きずることになるのでこちらが僅かに有利に働いた筈だ。

残念だが今年も完敗だ。


私はアウトリガーを付けていないことで負けたことを慰めるつもりはない。
どんな装備だろうが自ら選んだ装備で3番目にゴールしたことに変わりはない。 

ざまみ丸はもう何度目かの連続優勝か分らなくなるほど実績を積み上げている。 
恐らくこの記録を超えるチームは今後も現れないだろう。

私は単舟に切り替えたのは、何度も言うようにアウトリガーを肯定するためだ。 
アウトリガーは安全に海を渡る優れた装備の一つだと声を大にして言いたい。 

格好や見栄や文化や、大海の中で小さな命の灯が如何に頼りなく、か細いものか。
死を意識した時に誰もが感じるのではないだろうか。
 
実践の海は死なないことが全てに優先される。
私にとってのレースは実践の海へ繋がっているし、仮にレースだけの参加だけだとしても
その精神を保ち続けることが大切なことだと思う。

今年アウトリガー無しで参加するチームが増えた。
伴走船を付けることで多少のスキルが劣ってもチャレンジすることをもちろん否定するものではないし、立派な一つの考え方だと思う。 

一方、単舟のスキルを身に付けるには途方もない時間を要する。 
そのことを理解した上で、自己完結できる最も安全な方法で誇りを持ってアウトリガーを
装備しているチームは、私は心から本当の意味でカッコいいと思う。


ざまみ丸 おめでとう。




  

    


  
 



  


  



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