JRA競馬学校厩務員課程2019年度秋季募集から、「年齢制限」が撤廃されました。これまでは満28歳未満にしか受験資格が与えられて来なかったわけですから、歴史的転換とも言えます。
①メリット
これまで年齢制限に引っかかって試験を受けられなかったりした志望者(獣医科卒業者・海外競馬経験者)らに受験資格が与えられ、より幅広い方面から中央競馬に携われるようになります。
特に海外修行経験者に関しては、我がOBの矢作先生が以前から強く提言しており
http://race.sanspo.com/smp/keiba/news/20151014/etc15101403380001-s.html
働きかけが実を結んだ形になります。競馬先進国で技術を育んだホースマン達が逆輸入されることは、日本の競馬サークルにとってこれ以上ない利益をもたらすこととなるでしょう。
また、大学での獣医課程(6年間)は年齢制限に大きなネックとなりますから、獣医師免許のあるホースマンが厩舎に入ればより確実な馬匹管理が可能となります。厩舎に一人でも居るだけで、怪我や疾病を見抜くタイミングは大きく変わるでしょう。特に獣医課程に入ることは競馬サークルに対して否定的な親御さんにも認めてもらえるでしょうから、競馬サークルと繋がりのない家庭から競馬サークルに入る近道になるかもしれません。

②デメリット
一つは、中小牧場の人手不足がより深刻になる恐れがあること。新卒の厩務員課程志望者の入社を認め、契約社員として働かせている牧場の多くは大手牧場が殆ど。中小牧場では、厩務員課程入学などで離れてもらったら困る代わりにある程度の長期雇用が約束されています。年齢制限撤廃によって中小牧場の中年層からも出願でき、より少ない人手で馬匹を扱わなければいけなくなる。
もう一つは、地方競馬の人手不足が深刻化する恐れ。中央競馬は地方競馬より圧倒的に金銭面で魅力的で、地方競馬で経験を積んだ優秀なホースマンが中央入りしてしまうかもしれない。2つの点をまとめれば、「人手不足の苦境に立たされる競馬団体からの更なる人の流出」だ。

僕(H)のように大学院まで行きたいと思っている人間にとって、今回の方針転換は非常に嬉しいものである。一方、この方針転換で人を失うことになるかもしれない人達へ目を向けなければ日本競馬のさらなる発展は見込めない。日高中小牧場産や地方競馬から活躍馬が出ている今、逆風にならなければいいが…