僧侶社労士が語る労務管理②  | 僧侶社労士の知恵袋!

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僧侶資格を持つ異色の社労士の心がスッとする面白説法。 私は「勝売」よりも「笑売」が大好きです。 勝ち負けだけじゃない大切なものを伝えていきたいです!  なーむ 合掌! 

既読スルーって何?

ご存知ない方にご説明いたします。

LINEやFacebookなどのメッセージ機能によって送った文章を相手が読むと、送った側の画面に「既読」という文字が表示されます。つまり相手が読んだか読んでいないかを、送った側が知ることが出来るのです。既読(きどく)スルーとは、SNSのメッセージ機能で送った文章を相手が読んでいることが確認できたにも関わらず、相手からの返信がこない状態を指します。

既読スルーをされた側は「相手がメッセージを読んだのに返信をしてくれない」とネガテイブに受け取り、返信をくれない相手に対して不満を抱き、喧嘩やいじめ等のトラブルに発展してしまう場合があるのです。

このような状況をどう感じますか?
僕は「スピード感」の違いが大きいと思っています。



携帯電話・インターネットを経て、スマートフォンなどの高機能携帯端末の普及により、いつでもどこでも連絡ができるようになりました。そのため、相手の状況を構わずに、「即」の対応を求めがちになっているのです。
先述の既読スルーの場合、こちらのメッセージを読んだのであれば、なぜ「即」対応しないのかと求めるのです。

これはSNSだけに関することではありません。
実は、人事労務の世界もこの「即」を要求する傾向にあります。
今は「時間をかけて人材を育成する」「長期的なプランで利益を出す」が置き去りにされ、すぐに役に立つ「即」戦力を会社が求める傾向が強くなっています。


1ヶ月、2ヶ月程度の試用期間で、あいつは使えないからと解雇、退職勧奨を行う経営者を沢山見てきました・・・・


新しい環境で自身の力を発揮するには時間がかかるものですし、まだ若い20代、30代の社員ならなおのことです。

「即」戦力を採用し、すぐに実践で役立てることができれば、経営者にとってはこの上ないパフォーマンスといえるでしょう。しかし、どんなに経験豊かな人物を採用したとしても、環境が変わった上で「即」戦力となる確率は残念ながら高いとは言えません。
また「即」戦力となった社員が、常に一定以上のモチベーションで仕事を続け会社に貢献してくれるのかというのも疑問です。

雇用で大切なことは「即」ではなく「じっくり」育てることです。

「わかってますよ。そんなこと。でも、中小企業には時間も予算もないんです!」

おっしゃる通りです。

でも、「即」戦力のつもりだったのに、「違った」「使えない」といって採用と退職を繰返す方が、実は時間的にも予算的にも効率が悪いのです。


単純に、配属や業務内容に合わなかっただけかもしれません。
一度採用を決めた人物ですから、大抵の場合は社員教育をしっかり行えば必ず成長していきます。


そのために大事なことは


「経営者は社員を愛せ」
→ 「縁あって入社してきた」その社員の、良いところに目を向けて下さい。失敗したこと、苦手なことにばかりフォーカスするのはもったいないです。教育はまず、長所を伸ばすことからです。長所を認めて自信をつけることで、長所を更に伸ばし、苦手なことにも心に余裕を持ってチャレンジできるというものです。教育のベースには何よりも「愛情」が大切です。

「知識や技術を最大限に磨くこと」
→ 社員が仕事を好きになれば、どんどん創意工夫を凝らして、仕事のパフォーマンスは向上していきます。では、どうすれば仕事を好きになるのか?それは「わかること」「できること」を増やしていくことです。知識や技術という土台作りをサポートできる環境(研修や資格取得補助など)を会社が整えていけば、社員は自身のステップアップに喜びを感じ、さらに自分で向上心を持ち勉強していくことにも繋がります。
初めから何でも出来る人間などいません。知識や技術を磨く喜びを社員と共有し、一人ひとりの生産性を高めることが企業利益につながるのです。

お客様や取引先に対する「即」の対応は、企業にとって必然となりました。
しかし、「即」を人材の教育にも求めることは、賢明ではありませんし、企業の成長を止めることにもつながります。たとえ、急成長をしたとしても「即」だけを求め続ける会社が繁栄を続けることはないと考えています。

いかがでしたでしょうか?
長々と書きましたが、人材については、プロ野球のチームを思い起こして頂けたらわかりやすいのではないでしょうか。
どこか(海外や他の球団)に即戦力のいい選手がいれば大金を支払ってスカウトし、いざ使ってみて、その選手が不振だったら「即」手放すというような球団よりも、若手をしっかり育成してシーズンに臨む球団の方が、より強いチームに成り得て継続して勝っていくというのがいい例だと思います。

我が阪神タイガースも早くこのことに気づいてほしいものです。いや、気づいているんだが、後戻りができないのかも・・・。

人を育てることは時間がかかるものです。でも、その人が能力を発揮した時にはどんな即戦力よりも継続した戦力となるのです。