と勝手に書いたが、多少の日本医療史はやったことがある私も全然知らなかった天然痘に対して種痘を日本で初めて実践した町医者と彼を取り巻くグレープ、言い換えれば民間医療人たちのネットワークが福井藩経由で幕府を動かし、種痘を実践したという物語だ。主役に松坂桃李奥様に芳根京子か、ナイスキャスティングだ。思わず拍手や声援を送りたくなる演技だ。また彼らを取り巻く役者陣が地味だけど三浦貴大、吉岡秀隆、宇野祥平、役所広司などに加え、久しぶりの山本學などがしっかり固めて、小泉堯史さんらしい日本映画や伝統を引き継ぐ、いい映画でした。
なにより、当時も怖かった疱瘡(天然痘)に、対して漢方しかなかった医学に蘭方医学、西洋医学の影響が出始めて、それを受け止めたい町医者がいた、そして蘭方医学を学んで、しがらみにとらわれず、何回も壁にぶつかりながら、種痘を実施していくプロセスはかなりの迫力だ。そして、福井藩藩主がよくぞ医者たちの意見を取り上げ、許可を出すだけでなく、幕府をも動かすということで、意外な展開でもあった。そして明るく強気な妻千穂(芳根京子)はかつて男の介と言われたことで無理矢理お祭りの太鼓に担ぎ出され、華麗なバチ捌きで、見事なラストを飾った。現代劇では出ない彼女の良さが出てた。時代劇にもっと芳根京子を使って欲しい。