沢村圭司は有名人だ。
学校生活の中で目立つには、勉強か部活動か、もしくはビジュアル的に抜きん出るかだが、彼は異色だった。のほほんとした中高大一貫校だったから、それは余計際立って、生徒の関心をかっていた。本人はそれに対して無関心風だったが、ほんとうのところはよくわからない。
噂である。
関東でも五本の指に入るというその筋の息子らしいという。
誰も詳しくは教えてくれないが、それは公然とささやかれ、遥もその噂を漠然と信じていた。授業もあまり出ない、すでにあるシマを任されているらしい、どう考えても出席日数が足りないのに、進級できるのは父親が多大な寄付をしているからだとか。そもそもこの進学私立校に入学できたことからして謎である。
その上、コワモテではあるが、細身長身ですっきりした容姿をしているから、目立つ。男子も女子も、遠巻きに、でも、うかがっている。学校ではそんなかんじだった。
遥はといえば、ごく普通女子だ。自分を見苦しくは思わないけれど、男子に騒がれるようなタイプではなし。成績そこそこ優秀、部活動も熱心のまじめがとりえの優良生徒である。
つまり接点はなかった。
遥は圭司を知っているが、圭司は自分を知らない。そう思っていた。