正確には米朝師匠の質屋蔵のマクラです。
「なんやて、あいつが置き手紙していた(行った)て?」
「あんたが留守やちゅうたらな、読んでくれ言うて」
「この頃、あいつな、字ぃの稽古に行っとおんねん。この間まで、ほんまに、名前もろくによう書かなんだ奴が、生意気に置き手紙やなんて…。見てみぃ、これ。ミミズの這うたような字ぃ書いてるがな。えぇ、かり…、借りた羽織は七に置いた。そら、何さらすねん、あいつ。いや、なんやいるさかいちゅうて、三日だけ貸したったんやないか。勝手に質に置きやがって。見てみぃ、これ。数字の七てな字ぃ書きやがって、どんならんで」
言うて、ぼやいているところへ…
「オゥッ、手紙見てくれたか?」
「お前なぁ、三日だけて言うて貸したったんに、何でわしに黙って羽織を質に置いたりするねん」
「そんなことするかい。返しに来たとき、お前が留守やっちゅうさかい、そこの棚に置いて帰って…おぅ、その棚の上に置いたあるやろ」
「ああ、あるがな。そやけどお前、これ見てみいな『借りた羽織は七に置いた』と書いたあるやないかい」
「おまえ、字ぃ知らんなあ。そら七夕のタナという字やがな…」