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1929年、貧しい漁村の9歳の少女、千代が京都・祇園を模した架空の町の花街の置屋に売られ、厳しい生活の中で人気芸者に成長していく姿を描いた作品、さゆり
原作はアーサー・ゴールデンの小説でチャン・ツィー主演で映画化されました。
 
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この作品は主人公、さゆりの目線から描かれています。
置屋にやってきたさゆりを何かと虐める芸者が、初桃です。
はじめて初桃と出会ったのは9歳の時。
初桃は20歳すぎのちょうど芸者として全盛を極めたところでした。
 
 
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〝  つややかな漆黒の日本髪には琥珀の細工物をあしらって、銀の細片をつけた簪は動くたびにきらきら光っていました。びっくりするような艶姿で私などには思いもよらない粋を極めた美人なのでした。″
 
 
とあるように、初桃は同性さえも魅了する小柄で絶世の美女だったようです。
 
しかしとんでもなく性格が悪く、頭が空っぽな残念な女性でもありました。
 
 
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初桃は仕事上怒らせてはいけないお茶屋の女将さんを激怒させてしまい、旦那をとれない状況に追い込まれ、置屋に近所の蕎麦屋の若い職人をひっぱりこんでは乳繰り合い、お酒に溺れるところも多々。。
 
 
そんな女であっても初桃は尋常ではないほど飛び抜けて美しい女でありました。それはさゆり自身も認めており、初桃の美容法や着付け方法を観察していたりします
 
 
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初桃は一流芸者でかつ売れっ子ですので、巡査や小商人の年収にも匹敵するほどの高価な着物を纏います。
時には家一軒立つほどの着物も。。
しかしどれほど高価な着物だとて、こちらへ振り返った初桃の立ち姿は金の力では出しようのない女な美しさに照り輝いていました。    
 
 
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着物の後は紅と髪飾りをつけます。
初桃は真珠を何粒もつけた珍しい玉簪や鼈甲の細工物を頭に挿し、大きく衿を抜いた背中に軽く香水を振り、また扇子も帯に挟んで、右の袂にはハンカチを落とします。
うっすらと微笑んだ初桃の姿は見馴れた者でさえ吐息をもらすほど凄艶なのでした。
 
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さゆりは置屋から逃げたことが発覚し芸者になるのは中断され下働きをしていました。
しかし12歳のある日祇園でも指折の名妓として有名な豆葉ねぇさんの妹分にならないかとの幸運の誘い舞い込みました。
 
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初桃からの嫌がらせから身を守り、かつ初桃より高い位置から見下ろすには一流の芸者になるしかない。
 
この姉芸妓、豆葉のおかげでさゆりは一流の芸者となるべく、舞の稽古、太鼓、鼓、笛、三味線、茶道、立ち居振る舞い、そして礼儀作法を学ぶことができました。
 
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さゆりは死に物狂いで稽古をしました。
 
必死に稽古して2年、ついに舞妓として店だしが決まりました
 
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髪には鼈甲の簪、身に纏うのは新田の紋をつけた黒紋付。裾から腰まで金糸と銀糸で龍の刺繍がくねっています。。
 
 
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しかしさゆりにはさらなる試練が。水揚げです。
いわば舞妓の処女を売るもので、どの旦那に水揚げしてもらったのかでその舞妓の行く末さえ決まってしまうほどの重要なものでした。
 
 
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ちなみに初代内閣総理大臣、伊藤博文は無類の女好きであり、特に芸者が大大大好きでした
 
伊藤博文の妻も元芸者で美しい芸者をはべらせては酒宴三昧。あちこちの芸者に手を出したせいで明治天皇から怒られたことも。。 
 
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しかし女性に甘く、何かおねだりされると断れず、すぐ「いいよー」と言ってしまう。なのでよろしいの御前とあだ名された伊藤博文ですが女性にはまぁとにかく優しいんです
 
 
 
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その頃、初桃は28歳くらい。相変わらず美人で人目をひかずにはいられないほどでお客さんさえ見惚れてしまい、魂抜かれるほどの魔性の女ぶり。
 
しかしこの何も知らない時期がさゆりにとって一番幸せだったのかもしれません。 
 
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さゆりは15歳でお金持ちの医者に水揚げしてもらいます。
祇園町には水揚げ専門の旦那までいました。。
 
 
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そして18歳で鳥取少将と呼ばれる男性に正式に旦那(スポンサー)なってもらい、待遇の良い暮らしができるようになっていきました。
 
しかし姉芸妓、豆葉も旦那である男爵のおかげで豪勢な暮らしをしているものの、男爵の意向で三回も子供を堕ろしていることを知ります。
 
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あれほど着飾っていたとしても、裕福な殿方がいなければ食べていくのにも困るし、気位だって保っていられないでしょう。
姉芸妓、豆葉でさえあそこまでもてはやされているのは旦那である男爵の財力ゆえ、祇園の女は権力者の愛玩物なのだと気がつきます。。
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置屋ではさゆりと初桃の立場は完全に逆転しました。
さゆりは置屋の養女となりますが、反対に初桃は酒をのめば酒にのまれ、お座敷でお客さんに毒づいたり完全に生活が破綻していました。そしてさすがの美貌にも衰えが隠せなくなってきて肌のハリ、つやというものがなくなっていました。
 
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数日後、置屋のおかあさんの意向で、初桃は置屋を去ることになります。初桃の稼ぎは下り坂になっていて、さゆりが稼ぎ頭となっていたからです。
 
初桃は身の回りの品だけを持って粗末な木綿の着物で追い出されることになったのです。
 
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そして日本は第二次世界大戦へ向けて戦時色が強まって行きます。日本は敗戦し、疎開していたさゆりは祇園へと戻ってきます。
 
しかし初桃は終戦後しばらくして宮川町の娼妓になって生きていました。可哀想に思ったお客さんの一人が初桃の行方を捜しましたが、どうやらお酒で命を縮めてしまっていたようです。 
 
 
 
あれほど美しかった人が。。  
 
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戦中、敗戦といった社会の変化によって影響される人々を描いた『さゆり』
さゆりは終戦後も芸者を続け、初恋の人、会長さんに落籍されて、お妾さんとして男の子を産み、アメリカまで連れて行ってもらったり、一応は幸せになります。
 
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しかしさゆりと仲が良くほぼ同じ頃置屋に入っていた初桃の妹分、おカボちゃんは舞妓として売れず、旦那もつかずら養女になる話もさゆりに奪われ、終戦後2年間赤線(売春をする)で働いていました。
 
戦時中、後は一流芸妓が下働きをするという非常事態。扇子より重いものは持たない、位高い芸妓が
 
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作者のアーサー・ゴールデンの生家はニューヨークタイムズ紙のオーナーでもありました。
 
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成長したアーサー・ゴールデンはハーバード大学で日本美術を学び、東洋の神秘に憧れ、日本を訪れた後、ニューヨークタイムズには就職せず小説を書き始めます。
 
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『さゆり』は世界26ヶ国で翻訳されヨーロッパでベストセラーにもなりました。
しかし本の完成まで3回書き直し10年以上かかったいわば作家の魂の結晶のような作品です。
 
 
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