三浦一族 現代 に対する画像結果『相模三浦一族とその周辺史―発祥から江戸期まで』鈴木かほる著 2007年 新人物往来社 ¥2500+税

本書より 

三浦一族の歴史を、手っ取り早く知りたい…。そんな人のためにまとめたものである。やや厚いが一冊にまとめたのは、そのためである。脱稿の間近に『新横須賀市史 資料編古代中世Ⅰ』が発刊となって、最初からチェックしたため、さらに遅れたのだ。しかし、そのお蔭で、新しい研究の成果を取り込むことが出来たことは、感謝々々である。

桓武平氏の後胤三浦氏は、平安後期、相模国三浦郡から発祥した軍事貴族である。以後、江戸期まで凡そ800年間、脈々とその血統を伝え、歴史に名を留めた。三浦氏が、三浦半島ごとき狭い地に沈んでいたかというと、決してそうではない。その活動範囲は、近隣は、海を隔てた房総半島、東北は青森、新潟、会津、西国は北九州まで、ほぼ全国に広がっている。各地の枢要な地に国司や守護、地頭職を獲得し、勢力を伸ばし、一族を代官として派遣し支配させていたのである。その代官が、そのまま土着したから、三浦姓が全国に現存するわけである。

近年、三浦氏研究は目覚しい進歩を遂げつつある。その理由は二つある。一つは、平成八年五月、神奈川県横須賀市長の肝煎りで発足した三浦一族研究会(現会員四百名余)の存在である。二つには、市制百周年記念事業『新横須賀市史』全十五巻の発刊計画による古代・中世資料編の刊行、この二つの相乗効果によるものである。

これまで、三浦氏研究は、源氏や北条氏のような研究がなされなかったが、元東京大学の山中裕教授を会長に頂いて三浦一族研究会を発足させて以来、中央の研究者を講演会、講座等にお招きし、結果、三浦氏研究に目を向けさせることが出来たのである。

研究成果として、顕著なのは、三浦氏は、それまでの源氏に対する単なる忠節と、質実剛健な武士というイメージから脱却し、幕府御家人の枠組みを超えた有力権門であり、都に、多くの縁者を配し多くの屋地を持っていたのである。特に、承久の乱後、政界において、執権北条氏と並ぶ権門として、関白九条道家を畏怖させるほどの権勢を有していたことが判明している。

しかし、新説など学術研究論文は、とかく細分化されていて全体像が見えにくく、ともすれば、その成果が一般人と共有できないという、勿体(もったい)ない結果に終わることも少なくない。本書は、そういう意識を持って一般向きに著述したつもりである。三浦氏研究は始まったばかりであり、今後『新横須賀市史』によって、一層、詳細が明らかとなるであろう。なお史跡関係は『三浦一族の史跡道』(横須賀市刊)を参考にして頂きたい。                          著者 鈴木かほる