明治38年、三浦按針塚の発掘に携わった理学博士坪井正五郎と、柴田常恵氏の供述による発掘調査報告書である。

 

   

 現在、神奈川県立図書館や横須賀市立図書館に所蔵されているようである。

同報告書は、三浦按針の菩提寺・浄土寺によって、按針塚から「鬢髪」が出土したという誤報を、各報道機関に発表し、これが大きく取り挙げられたことにより、研究者を驚かせた。

そこで、横須賀市在住で三浦按針のHP「按針亭」を運用する中村喜一郎氏が、国立国会図書館において永年、日の目を見ることなく眠っていた発掘調査報告書を探し出し、一冊にまとめた貴重な一冊である。

発掘に携わった坪井正五郎・柴田常恵両氏の報告書によると、按針塚の墳墓からは、アダムスの遺髪も遺物も何ら発見されなかった、と明記されている。つまり『新編相模風土記稿』にいう「我、死セバ東都ヲ一望スベキ高敝ノ地ニ葬ルペシ」と語ったとされる三浦按針の遺言は伝承であったことが判明した。三浦按針ファン必読の一冊である。詳細は、中村喜一郎氏論文『三浦半島の文化』30号所載 2021年刊。