アエノコト 端午の饗応
平成28年6月6日(月曜日)
日室礼は、おなじみ川里哲也氏。
端午ということで鯉の滝のぼりを見立てたお軸。
釣鐘草が活けられていました。
この花の花言葉は「親交」「友情」
饗宴に先立つレクチャーでは、端午の節供のお話とともに、「御霊信仰」についても語られました。
将門サマや、鹿島サマ、鍾馗(しょうき)サマといえば、ああ聞いたことがある!という方も多いのでは。
御霊とはもともと不幸な死に方をした人が、あの世で悪さや祟りを起こす神々になったもの。
それをなぜ神と呼ぶのかというと、悪鬼に
「あなたは大変立派な方なのだから、そんなことしないで一緒にこの地を良くしましょう」
と、村をおびやかすもの(地震・雷・台風など…)から村を守る神としてまつりあげたから。
恨みが強いほどその力が強いと考えられてきたそうです。
いたるところで様々な災害や事件によって日々をおびやかされている現代、
個人によって受け継がれてきたまつりごとがちゃんとなされていな現代にこそ、
雅楽の演奏は
笙…田島和枝氏
篳篥・・・小林勝幸氏
龍笛・・・伊崎善之氏
夏の調子:黄鐘調で「拾翠楽」「越天楽」を奏でていただきました。
拾翠楽という字の並びをみているだけで、まぶしいほどの青葉の季節感を感じますが
まさに、白馬のかけるような清々しい響きに体が整っていくのを実感します。
そして今回のゲスト
宝生流能楽師・高橋憲正氏による「鍾馗(しょうき)」
髭をたくわえ、剣を手にし、大きな眼でギョロリと睨む、道教の神・鍾馗。
治まる御代を守る、魔除けの神の威力。
御霊信仰にまつわる物語です。
中国終南山の麓に住む男が、皇帝に謁見するため都へ上ろうとすると、
そこへ怪しげな異形の男が現れ、自分は昔国家試験に落ちて自殺した鍾馗の霊であると明かす。
そして今では悪鬼を滅ぼす守護神となったと告げ、そのことを皇帝に伝えるよう頼む。
承諾されるとその鍾馗の霊は、道教の神となった真の姿で現わし、フッと消える―
さてお楽しみのお食事タイム!
来る夏に向けての薬効たっぷりのメニューが並びました。
●栗豆の煮物(麦芽糖と米の水あめで煮られたもの)
●ほうれん草のゴマ和え
●彩り野菜の酢漬け
●蕪とラディッシュのサラダ
●蕪とパプリカのオーブン焼き
●生木耳と人参のナムル
●ゆで豚の薬膳ソース
●スナップエンドウ、空豆、アスパラなど季節の緑のサラダ
●稲庭うどん
●薬味 (大葉、白ごま、葱)
●黄飯 (黒豆と黄色いご飯)
黄飯を食すという端午の由来に則って、梔子で炊いたおこわ
添えられているのは在来種のてんこあずき
●鰹の中華風おこわ
●石神さんの自然農法小麦と天然酵母パン
リコッタチーズの黒大蒜とドライトマトのソース
この日は珍しく主催の俗情報工学者・井戸理恵子さんと演者の集合写真が撮れました!
(笙の田島さんがいないのですが・・・)
いつもにもまして、大入り、はちきれんばかりの大盛況の宴となりました。
いよいよアエノコトは次回が最終回です!
8月4日(木)七夕の節供。
皆さまと逢瀬をたのしみにお待ちしております。
第59回アエノコト 端午の饗応が開催されました。上巳の饗応
平成28年4月7日(木曜日)旧上巳/己未
アエノコト 上巳の饗応が開催されました。
上巳の節供は、4月の最初の巳の日。
巳(へび)のごとく脱皮を図り、自らの生まれ変わりを促し、
必要のないものを捨て去る日なのだそうです。
日本の風習とオリエンタルな文化が融合したようなエキゾチックな室礼は、
この日のお軸は川里哲也氏の作品でした。
山伏・宮下覚詮さんの法螺貝とともに開幕。
大地を目覚めさせるような深い轟音とともに、会場が浄化されていくのを感じます。
雅楽の演奏は
笙…田島和枝氏
篳篥・・・小林勝幸氏
龍笛・・・伊崎善之氏..
名称&旋律ともに美しい春の旋律「桃李花」を奏でていただきました。
この日はもう一人、スペシャルゲストに薩摩琵琶奏者・古屋和子さんをお迎えしました。
笙とのコラボレーションで、
謡曲「桜川」(世阿弥作)を琵琶と朗読、謡を交え、
すさまじい世界観を奏じていただきまました。
子どもと離れ離れになった母が、狂乱して子を尋ね歩く、子別れの狂女の物語。
九州・日向国の馬場の桜児(さくらご)は、母の貧しさを悲しむあまり、
自ら東国方の人商人にわが身を売り、国を立ちます。
それを知った母は氏神の木花咲耶姫(このはなさくやひめ)に我が子の無事を祈り、
その行方を尋ねて旅に出ます。
日向国(宮城)→須磨→熊野→駿河と渡り、
流れ流れて常陸国(茨城県)桜川へたどり着くと丁度桜の季節。
狂乱して桜川に流れる花を抄っているところへ弟子をつれた僧がやってきてワケを訪ねると、
失った子の名も桜児、この川の名も桜川、何か因縁があるのだろうが、
春なのにどうして我が子の桜児は咲き出でぬのかと嘆くと、
僧にお供していた小僧がその桜児だったことが分かり、母子は再会。
というあらすじなのですが、実はこの狂女が辿ってきた土地には
あの世の縁とこの世の縁を結ぶ意味を持つ二重構造の物語になっているそうです。
そして、新月の晩に起きて、巡り巡ってまた新月の夜にかえって行くという物語でもあります。
そしてまた、図らずもこの道筋が中央構造線断層帯をなぞっており、
言葉では言い尽くせない深い因縁とともに、
古の叡智というのか、自然観というのか、深い感慨を抱かずにはいられません。
特殊な美の空間を体感した後は、お待ちかねのお食事タイムです!
春を告げる滋味や、桜の花やヨモギ、アサリやハマグリなど、
桃の節供にお目見えするような献立がずらり!
●小松菜の和え物
●高野豆腐
●ひじきと豆のサラダ
●大根のソテー(モッツアレラチーズをのせていただくと美味!)
●ph調整材を使っていないブラウン牛のモッツアレラチーズ
●石神さんの天然酵母パン
耳にも目にも体にも、春の息吹をたっぷりと取り込みことができました。
この日の帯は、もちろん、「桜川」を見立ててらっしゃいました!
お濠の桜も、日中の強風に負けずに咲き誇って迎えてくれました。
「桜川」を聴いた後では、すっかり桜に対するイメージが変わってしまい、
夜桜は特に、美しさに秘められた畏れを感じてしまいます。不思議。。。
さて、アエノコトものこすところあと二回です!
次回は6月6日(月)端午の節供。
皆さまのお越しをお待ちしております。
人日の饗応
2月12日(金)、丙申・旧1月5日甲子の日。
アエノコト~人日の饗応~が開催されました。
本来の人日より少し早目の開催です。
お正月には七日目の人日まで七つの禁忌があるそうです。
それは殺生に関わる禁忌で
一日目…鶏、二日目…狗、三日
目…猪、四日目…羊、五日目…牛、六日目…馬
をそれぞれ食べてはいけない日だそうです。
では七日目はというと、人日というくらいですのでずばり「人」!
人を食べないというわけではなくて(笑)、
親しい人と諍いを起こさず、仲
睦まじくすべき日で、かつてのは「恩赦」の日でもありました。
また1月七日といえば七草粥。
ナナクサは七種と
いう説もあり、七種の穀物を食す習慣が貴族社会にあった
ということも伝えられていますが、
大地の下の強
い気を体内に入れ、五穀豊穣を親しい人たちと祈る日だったようで、
人日にナナクサを食すと、春の心病、夏の疫病、秋の痢病、冬の黄病にかからないとか。
八日目は穀物で占いとする、といった慣わしもあったそうです。
室礼は川里哲也氏。
馬頭観世音菩薩の木像の横にそなえられた皐月の赤の美しいこと!!!
写真からは香りませんが、「沈香(ちんこう)」の原木が焚かれていて、
なんとも清々しい空気でした。
雅楽の演奏は
笙…田島和枝氏
篳篥・・・小林勝幸氏
龍笛・・・伊崎善之氏..
「春の調子」、そして、聖徳太子が建立したとされる四天王寺に口伝で伝わる楽曲
蘇幕者は、聖徳太子が信貴山で笛を吹くと、山の紙が現れ、
朝廷を護る知恵と力を太子にもたらすという物語の舞曲で、
本式では、インドのカーリーを彷彿させる、
舌を出して魔を祓う異形のお面をかぶって舞われるそうです。
気力をよみがえらせるお食事がずらりと並びました!!
●とろとろ蕪と芽キャベツの煮物き
●牛蒡の白ごま和え
●春菊の胡麻和え
●うるいの酢味噌
●いんげん豆のサラダ
●水菜と鶏ササミの酢の物
●生姜粥
●酒粕と柑橘のデザート
アエノコトの主催であり、お料理も企画からすべて作っている
民俗情報工学者・井戸理恵子氏。
聖徳太子のお姿にならって、香炉を手にポーズをとっていただきました。
お着物は、室町時代の柄を復元した、気品あふれる辻が花染。
帯は、天上界の天人たちが遊ぶ様子が織り込まれて、
まさに人日にふさわしい華やかな図でした。
目の保養です~
さてアエノコトも今回で56回目。
60回までの開催となりますので、残すところあと4回。
次回は4月7日(木)上巳の饗応です。
皆さまのお越しをお待ちしております!