『世界の木造建築』 | サンロフトの本とテレビの部屋

『世界の木造建築』

世界の木造建築
ウィル・プライス著 グラフィック社 9975円
表紙からして、ロシアはキジ島のプレオブラジェンスカヤ教会。世界遺産にも指定されているので、最近はご存知の方も多いだろう。木造建築といえば、日本、韓国、中国という東アジアのイメージだが、実際には世界各国にある。そして、古い木造建築が結構残っている。特にヨーロッパのものは、ジブリ映画に出てきそうな、どこか懐かしい異世界の趣である。
壁にレンガが埋め込まれたドイツのハーレンハウス。トランシルヴァニアはマラムレシュ地方の教会の巨大な塔。上階ほどオーバーハング(張り出している)のフランスやドイツの木造高層住宅。どれを見てもそうだ。創作された異世界は、どれも現実を超えるものではない。逆にいえば、観客が異世界と思うのは、あくまで現実の範囲でしかないのだろう。
日本を含むアジアの木造建築も出ているが、量としては少ない。特に日本については、平等院鳳凰堂、東大寺、金閣寺、銀閣寺、姫路城、清水寺と、ごく当たり前の建築が紹介されるに止まっている。新鮮なアングルの写真もあるものの、資料としては弱い。
全編歴史的建築かと思いきや、終章「木造建築の未来」では、カリフォルニアのプライス邸など、いかにも現代建築という作品がいくつか取り上げられている。
巨大で分厚く高価な本だ。フルカラーで重さも相当なもの。個人で買うのはよほどのマニアだろうな。