病院内でのアトくんの話。
まだガラスケース越しに見つめるのが精一杯だけど、誕生初日だけは、お願いすれば授乳室から出して家族は見る事ができる。
仕事が終わって駆けつけたお義兄さんにアトくんを見せるため、ボクは看護師さんにお願いして授乳室から出してもらった。
マヨを大切にしてるお義兄さんは、妹の子であるむーちゃんをいつも可愛がってくれるし、アトくんの事も気にかけていたみたいだ。
授乳室から出たアトくんは眠っていたが、ボクが抱っこしたところで目を覚ました。
シワだらけの顔を更にくしゃくしゃにして、苦しげに泣き始める。
「お腹が空いたんですね」
アトくんを連れ出した看護師さんがそう言って、哺乳瓶をもってきた。
マヨはまだベッドで眠っていて、とてもオッパイをあげられるまでには回復していない。
…おや?
哺乳瓶には、ゴム乳首がついていない。
蓋のない哺乳瓶を手に、看護師さんはアトくんを抱き上げた。
アトくん、ミルクを瓶から直飲み。
「最初に吸いつくのをお母さんの乳首にしないとね」
ゴム乳首の感触を最初に覚えてしまうと、母親のオッパイに吸い付きにくくなってしまうのだそうだ。
苦しそうにむせるアトくん。
早くマヨから初乳をもらおうね♪
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