ごん、おまえだったのか4 | 波動砲口形状研究

ごん、おまえだったのか4

2007年に発売されたDVD付属ヤマトは、今見るとやや寸胴な感じがしてしまうが、当時としては衝撃的なカッコよさだった。

 

 

特に波動砲。

 

 

それまでのヤマトと言えば、旧キットや1/350、あるいはポピニカ魂のようなガッカリ波動砲しかなかったこともあって、

 

 

シャープな造形にはしびれたものだ。

 

 

しかし同時に不満な所もあった。

 

それは船体と波除板の分割ライン(赤線)と波動砲口(黄色)が完全にくっついてしまっていること。

 

 

この線をわずかに上にずらしたいわけだが、そのためにはフェアリーダーの曲面にそって自分でスジ彫りをしなくてはいけない。

 

それが苦もなくできるなら、思った瞬間もう手を動かしているわけだが、そうじゃないからこんなブログを書いている。

 

苦労した挙句汚い線になったり、左右が非対称になったり、挙句に刃が滑って折角の波動砲口を傷めてしまって、

 

「ムキー!!!」

 

となる未来が見えて実に憂鬱だった。

 

ホビージャパン2008年1月号に、このDVDヤマトを監修した庵野秀明氏のインタビューが掲載されている。

 

そこにはキットの原型というべき、庵野氏の元々のオーダーに近い試作品の写真も載っている。

 

 

見て驚いたのだが、その試作品と比べればキットの波動砲はまだ一般向けに手直しされた方だったのだ。

 

なんと試作品では波動砲口が分割ラインを突き破ってそれより上に来ている。

 

 

劇中でも、ポスターなど主要なイメージ画でもそんな形見たことがない。一体何を考えているのか。


庵野秀明氏はDVDヤマトのイメージソースの一つとして大図鑑の折り込み絵を挙げている。

 

 

煙突脇のパルスレーザーは本来砲身が2本なのに4本になっているなど、DVDヤマトは明らかに設定図と違うところがあるのだが、この奇妙さも、この絵がベースになっていると分かるとなるほどとなる。

 

 

しかし波動砲はまた話が別で、さすがの大図鑑の折り込み絵でも波動砲口が分割線をぶち破るようなことにはなっていない。

 

 

ヤマトヲタとしても名の知られた庵野氏が一体何をトチ狂って、何を根拠にこんなデザインを指示したのか。

 

それは私の積年の疑問だった。

 

まったくどこのどいつが、そんなイメージを庵野氏に植え付けたのか。

 

いやほんと、ブログを読んでくださっている皆さんにもお伺いしたい、そもそもそんな絵見たことありますか?ないでしょ?ね?

 

 

ね?

 

 

ね??.....

って、これかーっ!これだったのかーっ!

 

ごん、おまえだったのか。

 

兵十は、ヤマトをばたりと取り落としました。青いけむりが、まだ波動砲口から細く出ていました。(おわり)
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まあより大判なパーフェクトマニュアルの絵を見てみると、波動砲口ぎりぎりのところで分割線がカクっと折れているのであって、さすがに分割線をぶち破っているわけではないとわかる。試作品ではそこまでの細かい彫刻がされなかったのだろう。

 

 

この設定図を庵野氏が知らないはずはない。インタビューでは加藤直之氏による図解イラストも使ったとあって、

 

これも波動砲のそばで分割線が折れているが、宮武設定画ほど極端ではない。

 

この加藤絵とDVDヤマトは、艦橋の各部の特徴がよく似ていて、むしろそちらの参照元にされたと思われる。

 

やはり宮武設定画と、庵野氏のこういうマニアックなところを拾う性癖が原型、ひいてはDVDヤマトの波動砲口に影響を及ぼしたのだろう。

 

はじめてDVDヤマトを手にしたあの日から大分月日も経つ。しかし私の模型の技量は上がらず、例の波動砲口はいまだ手付かずのままだ。