「もともと日本には感染症科というカテゴリーが存在しなかった」

 「青木眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』ができたのが西暦2000年、当時、日本では臨床感染症を学べる施設がほとんど存在しなかったので、多くの医者は青木先生の『マニュアル』を読んで独学するしかなかった。」

 「そうやって独学した当時若手だった医師達が、現在の日本の感染症治療の第一線を支えている」(岩田健太郎教授談)

 

 管理人のような一介の町医者ごときが今更この大著を語るのも恐れ多い話ですが、自分の診療スタイルの骨格を作ってくれた大恩ある本なので、取り上げさせてもらいます。

 この本はエンサイクロペディア的に様々な感染症が載っていますが、この本のキモはそこではありません(と勝手に思っています)。第一章(p134)感染症診療の基本原則、ここがこの本の精髄です(あくまで管理人の私見です)。特にp15はキモ中のキモで、全ての科の研修医が勤務初日に読むべき内容です(私見です)。心電図や胸部X線写真は全科の医師が読めなくても問題ないですが、感染症は何処へ行っても付いてまわるはずです。今は学生の頃から習ってるかも知れません。管理人が研修医の頃はこの本は無かったので羨ましい話です。

 第一章の感染症診療の基本原則には、要するに「薬を投与するなら、まず診断名を付けよ」と、医学的にはごく普通の鉄則が書かれています。「出来れば感染臓器だけでなく、微生物の種類も予測して」と。発熱→抗菌薬とかCRP高値→抗菌薬というやり方の一番の問題は「診断がない」ということです。そのことが1ページ目に特に強調して書かれているということは、日本でそういうやり方が横行していたからでしょう(今はさすがに少なくなっている・・・と思います)

 この本は、1500ページ近くある分厚い本で、馴染みのない感染症も載っていますので、読破するのは困難かと思いますが、第一章の感染症診療の基本原則だけでもお金を払って読む価値が充分あると思います。昔の管理人のような感染症初心者の人には特におすすめします。最初の5ページを読むだけで、おかしなことはしなくてすむようになります。恥をさらしますが、「熱があったらとりあえず抗菌薬」「なんかよく分からないけどCRPが高かったら抗菌薬」「膿尿なら尿路感染症だから抗菌薬」とかいう時代が管理人にもありましたが、この本を読んでから改めました。