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果たして今週の市況は!
第516号 2010年08月29日
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【過去最悪圏の円高、日銀へ押し付ける無責任な態度】
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―◆INDEX◆―――――――――――――――――――――――――――
-■ 今日の論点 ■-
◆米国・不動産経済の低迷は判っていたこと
◆中国経済のエンジン役・不動産投資の危機
◆【今後のポイント】
◇付録
[kabu104.com]-――――――――――――――――――――――――――――
◆米国・不動産経済の低迷は判っていたこと
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このところ、アメリカでの景気を示す指標(統計数値)に勢いが見られず、アメリカ国債市場が好調だ。株売り・債券買いである。就業者数、失業保険申請数、住宅販売数、消費者信頼感指数、などなど「ゆるやかな上昇」とは言うものの、いまだ厳しい状況であるという締めくくり方は変わらない。
アメリカでは、様々な人から「日本の失われた10年を繰り返してはいけない」というセリフが聞こえてくる。10年間で日本は何を失敗して、何故低迷が続いたのか、という議論は様々だが、おおよそ「財政出動(政府が企画・発注する工事)して経済を盛り上げても、その後の自律的な景気回復が続かない」という話が大勢(たいせい)のようだ。だから内需(国内景気=持続的なお金の回転)を盛り上げろ、政府が借金して景気を刺激するのではなく日本銀行の政策変更で景気を刺激させろ、という話が非常に多く聞かれる。
日本でも似ているが、アメリカではドル安の影響で輸出が好調、そういう意味では雇用が回復しそうだが、企業は今後の不安定を睨んで正規雇用を増やそうとしていないようだ。アメリカ国内の労働契約が、派遣契約や期間契約がどれだけあるのか判らないが、現在の日本と同じような問題が噴出するのではないかと見ている。
今年に配信したマガジンで、アメリカの不動産市況のうち、商業不動産市況が回復していない旨をお送りしたが、その基調は変わっていない。就労者人口が増えないのに、住宅事情が上向くはずがない。アメリカ政府が住宅ローンの低利融資へ切り替え、等の施策を打ち出しているが雇用の回復がないため一時しのぎの政策だった感が否めず、批判がつづいている。
景気回復の経路が、従来と同じ経路をたどらない可能性が高いのではないか、という声が幾らか聞こえている。今回のオバマ大統領の施策は「輸出の増加」である。これはこのマガジンの1月号からお話していることだが、ドルが安いから輸出を増やそうと大統領が決めているわけではなく、前からそういう話をしていて施策の結果が出ているのである。
日本経済新聞では早速「輸出政策=ドル安政策の影響で日本円は円高」という趣旨の記事が出ていたように思う。そこでも「日銀はどう動くのか」という論調が出ているようだ。
それはともかく、いまのアメリカ経済の動向を探るには、アメリカ債券市場の動向を定点観測するのがうってつけだと思われる。FRB(アメリカ中央銀行組織)の政策も債券市場で反映され、株式市場の不況が債券市場を盛り上げている。逆に言えば株式市場の盛り上がるときは、債券市場からお金が抜けることを示す。資産運用を株に移すためだ。もうひとつはLIBOR(ロンドンインターバンク市場=銀行間での短期資金の貸し借り市場)の動向だろう。
このお金の貸し借りに掛かる金利が高いか低いかでドルの需要度の度合いを探ることが出来る。ユーロと比べてどうか、金利が先月と比べて低くなっていないか、など定点観測する癖を付けておいて、全く損はないと思われる。
◆中国経済のエンジン役・不動産投資の危機
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さて、中国の国民総生産が日本を追い抜くといった記事がかまびすしい。さも日本経済は劣等なのだといわんばかりの記事が多いようにも感じでいる。
それはともかく、中国内での不動産取引が活発なため、政府は徐々に規制を強化している旨の記事を過去にこのマガジンで掲載した。しかしまだその勢いを消すことが出来ず、政府は徐々に焦りを見せているのではないか、と感じている。
断固として不動産バブルを閉じ込める、といった地方の高官のセリフも出たという記事もあり、試行錯誤がうまくいっていないようだ。
中国政府は当初、海外の景気が良くないため、国内景気が目標より上回っていてもスピードを緩めるような政策はまだ施さない、という構えで経済政策を発表していたが、ここへきて、不動産投資が緩まない状況を見てあたふたしているようだ。
内陸部や湾岸部でもモノの流れはだいぶ回転を増し、インフラ整備も進んでいる様子。テレビや冷蔵庫といった生活の必需品の購買促進政策も功を奏し、中国国内企業もだいぶ潤ってきているようだ。
かつてホンダ等の現地工場で、賃金闘争が激しいとの報道があったが、景気の回復は物価の上昇を招き、家賃等の支払も増えているようだ。かといって、農業の生活に戻って生活水準を落とすことも出来ない。かつての戦後日本と似たような状況なのではないだろうか。
今後の中国経済で、不動産景気にストップが掛かった場合、不動産投資にお金を貸している銀行や、実際に不動産を買っている企業などがダメージを受ける場合、どのようにして対処するのか、非常に興味深い。日本はそれら不良になった債権の扱いについては後手後手に回ってしまった(結果論)。ここでこそ失われた10年を参考に、適切な政策を中国政府にお願いしたい。
最後に日本景気だが、自動車減税も期間を終える見込みで、いよいよ景気刺激策の息切れどころか、ほぼ何もなくなる状況について、政府が次の手をどう打ってくるのか非常に楽しみで仕方がない。
現在は税務改革の議論が進行中で、投資に掛かるお金の税務や、中小企業が払う税金の議論などが進められている。税務体制を変えて景気を刺激しようとする動きだ。これ自体は全く問題ない。ただ、規制緩和などの政策をほぼ何も打ち出せず、「日銀へ期待したい」といったセリフばかりが政治家から聞こえてくる。
円高についても各方面から「為替介入しろ」などと声が聞こえる。しかし、一時的な円安がどう企業を助けるのだろうか。投機家(純粋な投資ではなく博打に出て短期で儲けようとする人のこと=お金の流れが速く、市場の錯乱要因として忌避される)たちに警告として為替介入をする態度を見せたとしよう。もしくは実際に介入したとしよう。
投機家達は、傾けたポジション(投資したお金)を戻そうとして、買った円を売るだろう。そうすれば円は売られ進んで円高は少し改善するだろう。
しかし、「欧州圏は景気が回復するかどうか危ない」「ドイツも他国の財政再建のためにお金は出さないといっている」「ギリシャの財政再建が失敗したらユーロ安が進んでしまうかもしれない」などといっている投資家の、米国債や円を買う動きが収まるのだろうか。為替介入はこういった態度も変えてしまうと考えているのだろうか。
マクロの経済情勢を考えた場合、日本経済の先行きを当て込んだ円買いは聞こえてこないが、欧州経済の危機を避けて、低利でも運用しなければいけない投資家たちは、短期市場で混乱が見られない日本市場、クレジットデリバティブ(先物市場=先々の価値を見越して売買する市場)も安定性がある日本市場にお金を回してもなんら不思議はない。
為替の介入は基本的には一時的な対応にしかならないとする論調が強く、恐らく実施はしないと思われるが、日本銀行と協調せず財務省単独で行なう可能性もあるなどの報道もあり、政府・民主党は大丈夫なのか、とハラハラさせられる。
日本銀行がどこまで政策を打ち出せるか判らないが、日本政府、なかんずく個人的には菅首相にこの正念場を頑張っていただきたい、とエールを送りたい。
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■今後のポイント
日本では何とか色々と施策を見出そうとしていますが、デフレの状況が変わらず、格付け機関が日本国債の格付けをどう評価するのかハラハラしています。日本国債が大幅にダウンすれば、皆さん「日本は危ない」として円売り。円高は解消して一部方面では歓迎されるでしょう。
しかし日本は危ないと判断されて喜ぶ人は居ないでしょう。遮二無二、円高が解消されれば景気が浮揚すると考えるのは誤りです。
「国民が欲しがるものを企業が売れば皆が買う」という「供給側の内需先導論」と「国民の税負担軽減や現物(お金)の供給が消費を促す」という「需要側の内需先導論」があります。
たまごが先か、ニワトリが先か、といった議論に聞こえそうですが、大きな借金を抱えた政府には、需要者への手当てと供給者への手当てを同時にこなす体力はないようです。
結果的に、特徴のない総花的な政策に終わってしまうのではないか、と見ています。
個人的には、バブル経済を閉じ込めるために規制した各種施策(主に不動産関連施策やそれに関連する税務や貸金施策)を解除すればよいのに、と思います。
海外税制と足並みをそろえる、などと注意しているようですが、まさか今までの税務の流れを誰も知らずに議論してるんじゃないでしょうね、と疑いたくなります。
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付 録
1.
えっ・・なにこのマガジン?何で今頃来たの?まだ配信してたのか?といった声が聞こえてきそうです・・・。本当にすみません!
えー・・・正直申し上げますと、この暑さには閉口しておりまして、休みの日は寝てばかりでした・・・・
今回はやや長くなってしまいましたが・・・、是非今後もお付き合いください・・・・。
配信内容について、皆さんからの感想をお待ちしています。
えー、ちなみに、出版企画については見送ることとなりました。内容について練り直しが必要ということもありましたが、企画会議に頻繁に出版社へ伺う時間がないということも今回わかりました・・。
個人事業として何か商売している、という訳ではないので、見送りましょうとなりました・・。
2.
*果たして今週の藍(あい)は! 9月28日生まれ 9歳11ヶ月
今年も恒例、官庁・省庁横断スタンプラリーへ参加しました。
今年は事前応募が必要なイベントには、国会図書館の「地下8階へ行こう」と、国土交通省の「建物の地下を見てみよう」という、どちらも「地面の下にずんどこ進んで行くイベント」でした。
8月18日、まずは国土交通省へ到着。用意されたヘルメットをかぶって建物の地下へ。
災害時等の対策本部が置かれる国土交通省では、本部が倒壊してはいけない、という発想で、建物が耐震施工されているところを見せてもらいました。
96箇所に、建物と地面の間に「ゴムと金属のハンバーグ状態の柱」があり、震度7を震度3程度にするそれに、子供は夢中でした。
建物に収納される各管は、建物が揺れる時に破損するのを防ぐため、建物の内外の境目をゴムで出来た管にしていました。
続いては国立国会図書館へ到着。
18歳未満は入れないというところへ私も藍も足を踏み入れました。
当日は休館で、誰もいないところをゆっくり見学できました。新聞や雑誌など、何でも永久保管するそうです。
もう数年のうちには本を保管する場所がなくなるだろうということだそうです。
切れてきた本は和紙を当てて修復している様子や、少年ジャンプの創刊号をみたりして、楽しい経験でした。
来年は気象庁での地震のイベントと総務省でのAEDのイベントへ行きたい、と藍は意気込んでいます。
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