冒頭の回想シーンは秀逸だが・・・「カールじいさんの空飛ぶ家」 | 精神科医・樺沢紫苑の脳内情報館

冒頭の回想シーンは秀逸だが・・・「カールじいさんの空飛ぶ家」



 亡き妻エリーとの思い出が詰まった家にひとり静かに暮らしているカールじいさん。ある日、エリーと自分の夢だった南米奥地にあるパラダイスフォールを目指して人生最後の大冒険に出ることを決意する。家に大量の風船をつけて大空へ向けて飛び立つが、・・・。

 冒頭部の回想シーンは秀逸。言葉は最小限で、映像で語るということが徹底される。これが、映画だ。そして、家が空を飛ぶシーンは、ファンタスティックでありながら、ちょっとしたスペクタクルでもある。感動して涙が出た。
 
 この調子で、最後まで行くと、どれだけ泣かされるのだろう、と心配になったが、その心配は無用であった。

 旅立ちの後の南米でのシーンが、少々退屈である。「精神医学の目」でも解説するが、この中盤シーンが、テーマ的に重要な意味を持つのはわかる。しかし、ストーリー的にも映像的にも中だるみしている。特に映像が単調となり、眠気すらもよおす。

 CGアニメーションは、非常にたくさんの人間で分業して作業を進めるので、担当したクリエイターの実力の違いなのか。その辺の事情がよくはわからないが、中盤のストーリー展開と映像が、ものすごく残念である。

 最後の20分ほどはスター・ウォーズばりの活劇調になって大いに盛り上がり、ラストではまた感動させられるので、全体としては、それなりに楽しませてくれる良作となっている。

 ブログなどでは「想像していたのと違った」という感想が多いが、確かに「予告編」から期待される作品とは、やや趣を意にすることは否定できない。

 あまりに先入観をかためずに、気楽に見て欲しい。他のピクサー作品と同様、親子で見るのにも良い作品だと思う。

 ちなみに、私は3Dではなく、字幕版で見たが、カラフルな風船の素晴らしい発色は、おそらく3D版では色あせるのではなかろうか・・・。個人的には、字幕版をお勧めする。

 樺沢の評価  ★★★★
(★★★★★が満点。☆は、★の半分)

この記事は、樺沢紫苑が発行する日本第2位の映画メルマガ「映画の精神医学」で配信した記事をリライトしたものです。あなたも「映画の精神医学」を読んでみませんか?