ふと、隣町に着いた頃に、道端を見てみると寒雀(かんすずめ)が餌をさがしてさまよっているのが印象的に映る。
 寒い時期でも、元気に動き回るその小さないのちは、僕に「頑張ってね!」と伝えているようにも感じてくる。
 そんなことを想いながら、僕は文房具屋さんへたどり着く。雪が舞っているので、予想通り、大幅な時間のロスを作ってしまっていたことは、帰りのことを考えると大変だなと考えたりもした。
「こんにちわ。おじさん、また来たよ!」
 文房具屋さんの入り口で、いつものように元気な声で挨拶を済ませた。そして、僕は新年のご挨拶のことばを伝えた。
「新年、明けましておめでとうございます」
「あけまして、おめでとう。今年も頼むよ!」
 おじさんは満面の笑みで僕を迎えてくれている。
「やぁ、坊っちゃん。寒いなか、良く来たね!」
「寒かったでしょう。しかし、あんたすごいよね」
「まぁ、暖ったまりな!」
 おじさんは心配したのか、僕をお店の奥の部屋に通してくれた。その場所には炬燵があり、暖かいストーブが置かれている。
「寒くて、大変だったろうから。しばし、体を温めなさい!」
 おじさんの優しい言葉に、僕は有り難さを感じていた。人の温もりが伝わってくると、心の中も温かくなってくる。
(そう、感じた!)
 炬燵に入ると、僕はうたた寝をはじめ、それを見ていた店の店主は毛布をかけてくれたことは、ここのおじさんの店に、わざわざやってくる意味が隠されている。
「疲れたんだね。坊ちゃん!」
 おじさんがなんとなく、呟いたのが、ぼんやりしていた僕に嬉しさを残した。そして僕は、ほんのりと頬をながれるものを覚える。
 すやすやと寝息をたてて、僕は眠っていた。それからどれくらい夢の世界を彷徨っていたのか、あわてて少年は起き出した。
「おじちゃん、ごめんなさい! かなりの時間を寝ちゃったみたい」
少年は、寝ていた時間の重大さに気がつく。
「どうしよう、こんなに眠っていたんだ!」と少年は部屋に置いてある時計を見つめた。
「ごめんなさい!」
 僕はあわてて、文房具を買って帰ろうとした。
「だいぶ、お疲れの様子だったから、起こすの悪いと思ってさ!」
おじさんは優しく僕を見つめ、いつもの文房具を用意してくれた。 少年は、原稿用紙と鉛筆、消しゴムを買うと、店を出ようとした。
「おじちゃん、また来るからよろしくね!」
 すると、おじさんはなんと僕をよびとめたのである。その出来事は僕に、心の温かみを残すことになる。

つづく。