論文試験対策として、時効援用権者に関する有力な見解を紹介する。
この見解は、判例を整合的に説明できる見解である。よって、試験でも使いやすい見解であると思う。以下では、実際に判例で問題になった事例へのあてはめをやってみた。事例へのあてはめを通して、より具体的に理解することができると思う。
この見解は、判例を整合的に説明できる見解である。よって、試験でも使いやすい見解であると思う。以下では、実際に判例で問題になった事例へのあてはめをやってみた。事例へのあてはめを通して、より具体的に理解することができると思う。
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◎判例における時効援用権者(「当事者」145)の画定基準について
◎判例における時効援用権者(「当事者」145)の画定基準について
【判例の一般的定式】
=「当事者」とは、時効によって直接に利益を受けるべき者(とその承継人)のこと。
【直接受益者】
「時効によって直接に利益を受けるべき者」(直接受援者)についての判例
(1)該当する者
ア.保証人・連帯保証人
イ.物上保証人・担保不動産の第三取得者
ウ.売買予約の仮登記の経由された不動産に抵当権の設定を受けた抵当権者 (予約完結権の行使について。)
エ.仮登記担保の設定された不動産の所有権登記取得者 (予約完結権の行使について。)
オ.詐害行為の受益者
など…
(2)該当しない者
ア.表見相続人からの譲受人
イ.一般債権者
ウ.建物賃借人(建物賃貸人による敷地所有権の取得時効について。 )
エ.後順位抵当権者(先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効について。)
など…
【判例の直接受益者基準は援用権者画定基準として機能しているとする見解による処理】
(百選Ⅰ40事件解説、佐久間 民法の基礎1.p423参照)
判例のいう直接受益者とは,当該時効によって,その義務が消滅する者または権利を取得する者をいう
→そして、その画定基準は、
①時効を援用しようとする者とその相手方との間に、時効によって消滅する義務や負担といった「直接の法律関係」を見いだす ことが可能であるか(法律関係の直接性)、
②そのような「 直接の法律関係」が,実体法上,当該援権者との相対的な関係においてのみ消滅したと扱うことができるような「可分」なものであるか(法律関係の可分性)
【あてはめ】
(1)保証人
保証人は、主たる債務が時効消滅すれば債権者に対する自己の保証債務が消滅する立場にある(①OK)。
また、主たる債務者の債務は保証債務の消滅によって影響を受けない(②OK)。
よって、直接受益者にあたる。
(2)物上保証人
物上保証人は、被担保債権が時効消滅すれば債権者に対する自己の物的負担が消滅する立場にある(①OK)。
主債務者の債務は物上保証人の負担消滅によって影響を受けない(②OK)。
よって、直接受益者にあたる。
(3)一般債権者
一般債権者は、債務者の他の債権者に対する債務が時効消滅しても、他の債権者との間で権利取得や義務(法的負担)免脱を生じるわけではない。よって、①直接性の要素が充たされない。
したがって、直接受益者にあたらない。
(4)建物賃借人
(事案】: E は,F から乙建物を賃借していた。建物の敷地(丙土地)は、実はYの所有地であったが、F について取得時効が完成していた。)
ア.建物賃借人Eは乙建物の賃貸人Fによる丙土地の取得時効を援用することができれば、丙土地の所有者であるYとの関係で建物収去、土地明け渡しにの請求を免れ、建物の利用を継続できる。
よって、①直接性の要素は充たされる。
イ.しかし、それを認めるためには乙建物の所有権がFに帰属している以上、Fに、丙土地の所有権を帰属させるか、丙土地の利用権限を生じさせるか、あるいは、土地賃料相当額の損害金を負担させることが必要になる。
よって、②可分性の要素を充たさない。
ウ.したがって、Eは直接受益者にあたらない。
(5)後順位抵当権者
ア.この点、抵当不動産の第三取得者と抵当権者との間には、自己の所有権に対する「物的負担」という時効によって消滅する直接の権利関係を観念しうるのに対して、後順位抵当権者と先順位抵当権者との間にはそれと同様の「直接の権利関係」は見出せず、あくまで、先順位抵当権の消滅により債務者の責任財産が増加することを通じて、その優先弁済を受ける可能性があるにすぎないとして、直接受益者にあたらないと考える見解がある。
しかし、優先弁済権をその本来的な効力とする抵当権は債務者の責任財産に対する債権者相互の優先劣後の関係を規律する権利である。そうだとすれば、先順位抵当権者と後順位抵当権者との間には,その優先弁済の順位の先後関係という先順位抵当権によって規律される「直接の法律関係」が存在するとみることができる。したがって、先順位抵当権者と後順位抵当権者の間には時効援用によって消滅すべき権利関係が存在しないとはいえないというべきである。
よって、①直接性の要素は充たされる。
イ.しかし、現行法上、先順位抵当権の時効を援用した特定の後順位抵当権者との関係のみでの相対的消滅という法律関係が想定されていない(ex. 1番抵当権者の被担保債権の消滅時効につき、2番抵当権者が援用せず、3番抵当権者のみが援用した場合の相対的消滅は三つ巴の関係を生じさせる。)。
そうだとすれば、後順位抵当権者は他から別個独立の「直接の法律関係」を有しないことになる。
よって、②可分性の要素が否定される。
ウ.したがって、後順位抵当権者は直接受益者にあたらない。
