帝国データバンクは、2000年~2013年(14年間)における「医療機関(病院、診療所、歯科医院)」、「老人福祉事業者(養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウスを含む)、老人福祉センター、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設の運営および、移動入浴サービス、在宅介護サービス(医療は行わず日常生活の介護)を行っている事業者)」の倒産動向(法的整理を対象)について、調査・分析した。

<調査結果>

(1)2013年の医療機関の倒産は36件(内訳:病院8件、診療所15件、歯科医院13件)、老人福祉事業者の倒産は46件となり、病院倒産が増加(2012年:3件→2013年:8件)に転じたほか、老人福祉事業者の倒産が2000年以降で最多となった

(2)2000年以降の動向をみると、倒産態様別では、診療所、歯科医院、老人福祉事業者の8割超が「破産」となった一方、病院は過半数が民事再生法となった。また、業歴別では老人福祉事業者の73.3%が「10年未満」となった






1.倒産件数 老人福祉事業者の倒産、2000年以降で最多

2013年の医療機関の倒産は36件(病院8件、診療所15件、歯科医院13件)と比較的落ち着きをみせたものの、老人福祉事業者の倒産は前年比58.6%増となる46件となり、2000年以降で最多を記録した。

2000年4月の介護保険法施行をきっかけに、介護関連事業に参入して活路を開こうとする企業が相次ぎ、同業者間の競争が激化。そうしたなか、2006年4月に改正介護保険法が施行され、介護報酬の引き下げ、施設サービスにおける居住費用・食費が介護保険給付対象から除外されるなど、経営環境が悪化する業者が増加。2007年以降の倒産急増の要因になったとみられるが、近年さらに競争激化による経営悪化、低賃金に伴う人手不足や労働環境悪化など雇用問題の深刻化が進んでいるとみられる。







2.倒産態様 診療所、歯科医院、老人福祉事業者の8割超が「破産」

倒産態様別では、2000年以降の累計で診療所(184件、構成比84.8%)、歯科医院(125件、同84.5%)、老人福祉事業者(183件、同87.1%)において「破産」が8割を超えた。同じ3業態を2013年だけでみると、診療所(14件、構成比93.3%)、歯科医院(13件、同100%)、老人福祉事業者(42件、同91.3%)とすべてで9割を超えた。



3.負債額 歯科医院の9割超が「5億円未満」

負債規模別では、病院は「10億円~30億円未満」(44件、構成比40.7%)、診療所は「1億円~5億円未満」(94件、同43.3%)、歯科医院は「1億円未満」(87件、同58.8%)、老人福祉事業者は「1億円未満」(151件、構成比71.9%)が最多となり、歯科医院の95.3%(141件)、老人福祉事業者の90.5%(190件)が負債5億円未満となった。

また、負債総額を年別にみると、病院は2007年(369億4,000万円)、診療所と歯科医院は2010年(それぞれ129億5,400万円、31億4,200万円)、老人福祉事業者は2008年(78億9,300万円)が最多となっている。



4.業歴 老人福祉事業者の73.3%が設立後10年未満で倒産

業歴別(設立から倒産までの期間)にみると、病院は「30年以上」(構成比38.0%)、診療所は「5~10年未満」(同19.8%)、歯科医院は「10~15年未満」(同25.0%)がそれぞれ最多となり、病院の業歴の長さが顕著となった。老人福祉事業者は「5~10年未満」(構成比40.0%)が最多。73.3%(154件)が業歴10年未満での倒産となり、淘汰・生き残り競争の激しさがうかがわれる。