Nゲージの金属製車体のモデルは、その歴史から見ても案外早くから存在して来ましたが、初期の頃は精密性は二の次で、機関車はブリキ玩具の様な仕上がり、電車は編成にしないと全くサマにならない様な物で、何処となくトイライクな雰囲気は否めませんでした。そして精密なモデルは1990年代半ば頃から徐々に現れて来たと記憶しています。かつてのHOゲージ完成品及びキットの内容が、そのまま1/150スケールに縮小された程にレベルアップされ、ベテランのマニアにも受ける様になりました。

しかし価格も手づくり故に、プラスティック製完成品よりも相当高くなり、こう言った面もHOゲージから引き継ぐ事になってしまいました。そしてプラスティック製モデルの精密化が急速に進化した現在、こう言った高価な金属製モデルの存在は再び薄くなり、未だに普及せずに一部マニアの為の物になっています。

そこで今回のワールド工芸製のED60形ですが、先ずは今もってNゲージ唯一の製品です。姉妹機のED61形はNゲージ初期の頃から、幾度も製品化されて来ましたが、それはED62形という、正に模型化を見据えた様な、格好のバリエーションに展開が可能で、商業的にも採算に合う為で、塗装以外のバリエーション展開が出来ないED60形は、どこのメーカーも製品化に積極的ではありませんでした。

しかしワールド工芸が2000年に製品化、やっとの思いでNゲージモデルが現れました。先述べの様に金属製モデルの精密化が進んだ時期に登場した製品なので、なかなか良い雰囲気の仕上がりです。塗装は手作業による吹付けなので、マスプロ生産されたモデルと比べると劣りますが、レイアウト上ではそんなに悪く感じません。またキャブ内も簡単に再現されています。走行性能は意外にも良く手づくりモデルにありがちな、妙なギクシャク感は全く無く、非常に軽快に走行します。なお点灯する部分はありません。

ED60形は身近に見られた電気機関車の中でも、一番好きな車両でした。小さいながらも力があり、重連で貨物列車を牽く時は、大きなEF52形やEF15形の前に連結されてカッコ良く、子供心に頼もしく思ったものです。また家族旅行で南紀へ行った時に乗った臨時急行の先頭に立った時の姿は、まるで晴れ舞台の様で、電気機関車のスターに見えた思い出もあります。

懐かしい思い出がいっぱい詰まるED60形のNゲージのモデル、数年前に先輩に組み立てて貰った、しなのマイクロ製のHOゲージのモデルと共に、我が家の家宝として大切にして行きたいと思います。

2000年発売 発売当時価格 27.000円(税別価格)