いまでこそ
「県」は分けられているものの、
茨城県笠間市と
栃木県益子市は
古代から陶器作りに必要な
粘土も水も燃料の木材もあり、
ともに
陶器の産地でありました。

そして
平安時代より戦国時代までの
500年間、
宇都宮氏の下に
治められたのも、
一緒。

宇都宮氏は藤原家の
流れを組むとも言われ、
都とも鎌倉とも
接点を持ち、

文化や芸術においても
優れたものを 
取り入れておりました。

しかし宇都宮氏は
秀吉によって改易され、
のちに
水戸徳川家の家臣となり、

この地域の支配から
外れることになり。

ふたつの地は分かれることに。

窯業も忘れ去られて
いきますが、
江戸後期になり、
笠間藩の名主
久野半右衛門が
良質の粘土に気付き、
再び焼き物を始めます。

100年たって
久野窯で修行をしていた
大塚啓三郎が、
益子で窯を開きます。

時を経て
ふたつの地域は再び
ともに陶器の里として
動き始めたのです。

明治になって
笠間と益子は連携し、
関東圏の日用品を
請け負うところとして、
大きく発展していきます。

とはいえ、
ずっと順調なわけには
いきませんでした。

昭和に入り、
益子に
濱田庄司という陶工が現れ、
芸術的要素が
加わります。

笠間では県の主導で
日用品からデザインを
重視する陶器への
転換が図られ、

窯業団地や芸術村が
作られ、
町が一体となっていきます。

そして
「かさましこ」として
日常にアートが溶け込むところとして

街並みに陶壁や
陶板タイルが見られ、
全国から600名を超える陶芸家や

染織や木工などの
芸術家も集まる地域と
なっています。

自然豊かな中、
オープンアトリエや
ギャラリーにカフェ、

器だけではなく
街そのものを味わうことが 
できます。

伝統ある陶器でありながら、
自由な作風、
それでいて暮らしを彩る
温かな味わい、
力強さ、

そういった特徴が
多くの人々に愛されています。

今年の連休の陶器祭りも
たくさんの人々が
訪れています。

初夏のこの時期、
自然の中のカフェで
陶芸家の人柄が
感じられるような器で
くつろげたら…。

うっかりたくさん連れて帰って
しまいそうです。