以前の記事「ツハヤムスビはトヨウケの子である」の備考で次のように書きました。


 古語拾遺とホツマツタエより「神皇産霊はカンサヒである」という事も言えそうであるが、
 私はカンサヒは神皇産霊ではないと思っています。
 そう思う理由および神皇産霊は誰なのかということについては別の記事で書くことにします。

本記事ではこのことについて書くことにします。

[ほつまつたゑ 解読ガイド]には人物ごとに系譜や経歴が簡潔に説明されており、

非常に参考になります。
トップページの記述によると、
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・コンテンツを引用・転載する場合は引用元を明記するか、リンクを貼ってください。特に連絡は不要です。
ということなので、カンサヒについて説明したページを引用させて頂きます。

[ほつまつたゑ 解読ガイド] カンサヒ
 神狭日。
 タマキネの子。ヤソキネの弟。ツハモノヌシの兄。 
 アメオシヒの父。
 タマキネ(トヨケ) の死後、アマテル自らがサホコチタルをしばらく治めた後、
 後任として任命されたマスヒト (副マスヒトはツハモノヌシとコクミ) で、
 根の国のマスヒト・シラウドと共に西日本の統治に当たった。 
 シラウドとコクミの非道を知りながら放置しているとして、弟のツハモノヌシがタカマに

 告発している。
 この事件によりマスヒトを解任され、代わりに息子のアメオシヒがサホコの新マスヒトとなる。

考察
上記の説明はホツマツタエの記述を正しく説明していると思いますが、
カンサヒがヤソキネの弟であるというホツマツタエ自体の説明に疑問が沸きます。

疑問点
 副マスヒトが2人付くことになったのは、たぶん、カンサヒがまだ若く未熟で、
 1人では任せられないということだと思うが、これは少し奇妙である。
 なぜなら、カンサヒはタマキネの子で、アマテルはタマキネの子であるイザナミの子、
 つまりタマキネの孫なのでカンサヒはアマテルの叔父にあたり、

 アマテルより1世代上となる。
 したがって、カンサヒが前任者であるアマテルより若い可能性は低い。

先代旧事本紀にカンサヒに関する記述があります。

■先代旧事本紀
 [国立国会図書館デジタルコレクション] https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2563301
 [天璽瑞宝] http://mononobe.webcrow.jp/kujihongi/yaku/jindai.html

先代旧事本紀では第七代の天つ神の高皇産霊尊の児として天忍日命がおり、
神狭日命はその別名
ということになっています。
ホツマツタエでカンサヒはアメオシヒの父ということになっているので
ホツマツタエか先代旧事本紀のどちらかが間違っていることになります。
ホツマツタエでは息子のアメオシヒがサホコの新マスヒトになり、
クラキネの娘のクラコを妻とするという具体的な説明があるので、
ホツマツタエのカンサヒはアメオシヒの父という方が正しいように思われます。

それはともかくとして、この第七代の天つ神の高皇産霊尊というのは

兄弟に津速魂尊がいることから、ヤソキネのことと考えられます。
したがって、神狭日命はヤソキネの子ということとなり、
カンサヒはアマテルの従弟ということとなります。
そうするとカンサヒはアマテルと同世代ということで
アマテルの後任となったということに真実味が増すので、
先代旧事本紀の記述が正しいように思われます。
カンサヒがヤソキネの子であるとすると、
神皇産霊尊は高皇産霊尊(ヤソキネ)の弟であるので
カンサヒは神皇産霊尊ではないということになります。

結論
★カンサヒは神皇産霊尊ではない

備考
先代旧事本紀の系譜は少々、混乱しているように思われます。
例えば以下のような点です。
・第六代の天八十万魂尊は名前からしてヤソキネ(六代タカミムスビ)を指すと思われるが、
 天八十万魂尊は第七代の高皇産霊尊に相当する。
・第七代の高皇産霊尊の別名として高木尊が挙げられているがこれは間違っている。
 高木尊はタカキネ(七代タカミムスビ)に相当し、

 第七代高皇産霊尊はヤソキネに相当し、
 タカキネはヤソキネの子であるから、
 高木尊は第七代高皇産霊尊の別名ではなく子である。
混乱している理由ですが、
私たちはホツマツタエを通してタカミムスビが役職名を表していて
特定の人物を指すのではないことは知っていますが、
先代旧事本紀では複数のタカミムスビに関する系譜を一人の人物の系譜として
まとめようとしているためだと思われます。
そしてこのタカミムスビを一人の人物にすることによる混乱は
日本書紀やホツマツタエの記述にも存在しているようです。
日本書紀はホツマツタエを参考にしているとも考えられていますので、
日本書紀はホツマツタエの混乱を引きずっているのかもしれません。