(その1)の続きです

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3. 実際の収支の一例
 まず、実現の可能性を探るために、どの程度の雇用が必要か、実際の収支等がどうなるか等を検討してみます。
 令和5年3月の予算委員会での資料によれば、現在、耕作放棄地になっているが再生利用が可能な農地(A分類)は55.5haとあります。
 そこで、この55.5haを耕作していく場合の収支を検討してみます。
 55.5haの田畑の区別が分からないのですが、今、仮に水田40ha、畑15.5ha としてみます。
 農作物は、コメ と 小麦(パン・中華麺用品種)とします。
 雇用者・人数は、コメで考え、小麦はその裏作として、同じ者たちが作っていくとします。
 
① 雇用する人数・経費
 40haの水田は、おそらく、中山間地域の山ぎわの小さな水田が多いと考えられます。効率は悪いでしょうが、なんとか、ひとりあたり約3ha耕作するとします。
 (畦草刈りも含めて。水路管理は基本まだ集落でできるとします。)
 40ha ÷ 3ha ≒ 13人 
 13人雇用するのに、ひとりあたり500万円(社会保険等も含む)として6500万円。
 つまり、年間6500万円の費用で13人雇用の必要があるということです。
 
② 考えられる収入
⒜コメ
ⅰ. コメの補助金
  中山間地域等直接支払交付金
 おそらくどこも中山間地域に該当するでしょう。
 すでにその区域から外しているところもあるでしょうが、再度組み込んでもらいます。
 2.1万円/10aのうち、1.5万円をもらうこととする。(残りは地域で使う)
    400反 × 1.5万円 = 600万円
 
ⅱ. コメの売り上げ
 ●40haの水田でコメの収量 
  平均は420kg/10a だが、条件が悪いので350kg/10a とする。
  400反 × 350kg = 140,000kg
 ●経費(苗代・肥料代・機械減価償却費等々)として、8,000円/30kg は必要とする。 
   (宍粟市北部地域での概ねの生産原価 資料1参照)
 ●収入は
 コメの売価によっての収入を試算すると
 例えば
 ㋐ 10,000円/30kg で売れば、(3,333円/10kg)
   30kgあたり2,000円の利益 
   → 140,000kg ÷ 30kg × 2,000円 = 933万円 の利益。
 
 ㋑ 12,000円/30kg で売れば、(4,000円/10kg)
   30kgあたり4,000円の利益 
   → 140,000kg ÷ 30kg × 4,000円 = 1,866万円 の利益。
 
 ㋒ 15,000円/30kg で売れば、(5,000円/10kg)
   30kgあたり7,000円の利益 
   → 140,000kg ÷ 30kg × 7,000円 = 3,266万円 の利益。
 
 ㋓ 13,500円/30kg で売れば、(4,500円/10kg)
   30kgあたり5,500円の利益 
   → 140,000kg ÷ 30kg × 5,500円 = 2,566万円 の利益。
 
 ここでは、㋓に販売手数料500円を乗せて 5,000円/10kg で売るとします。
 このプロジェクトの趣旨を理解してもらい、この値段で買ってもらえる人を募ります。
 
 ●140,000kgのコメとは
  今、日本人平均ひとりあたり55kg/年の消費
  つまり、 140,000kg ÷ 55kg/年・人 = 2,545人分 のコメ
 なので、宍粟市民3.3万人 のうち 2,545人になんとか買ってもらえないでしょうか。
 あるいは、宍粟市出身者にも広く呼びかけ、郷土支援として、送料別でこの値段で買ってもらえる人を募ればどうでしょう。
 今、3,000円/10kgで買っているのならば、10kgあたり2,000円の出費増。年間、2人世帯だと2.2万円の出費増となります。
 その替わり、少なくともネオニコチノイド農薬フリーの特別栽培米に。他にも何か特典を考えられないでしょうか。
 しかし、もともと、10kg3,000円という価格が農家に全くのボランティアで働いてもらっての価格です。ただ働きで働かせてのコメです。耕作放棄されるのは当たり前ですね。
 後述しますが、この差額は本来国が負担すべきものであり、国全体で2~3兆円あればできることなのです。このプロジェクトは国や国民にそのことに気づいてもらうためのものであり、国がその予算をつけるまでの間の郷土の支え合いです。
 
ⅲ. コメの収支
 ということで、㋓案が可能だとして、コメ全体で収支は 3,166万円 の利益となります。
 
⒝ 小麦
 20haで小麦(パン・中華麺用品種)を作るとします。
 麦単作、あるいは、2年3作(コメ・麦・大豆を2年で回す)等、検討していきます。
ⅰ. 補助金
 ○畑作物直接支払交付金(ゲタ)
  パン・中華麺用品種(1等Cランク)反収200kg とすると
   面積払い 2万円/10a
   収量払い 7,210(円/60kg) × 200/60 - 面積払い分
 = 0.4万円
   合計 2.4万円/10a  → 20ha で 480万円
 ○水田活用直接支払交付金
   35,000円/10a → 20ha で 700万円
 ○二毛作助成金(産地交付金)
   15,000円/10a → 20ha で 300万円
 合計 1,480万円
 
ⅱ. 小麦の売り上げ
 ○全農等に出せば
   売価 40円/kg 
   収量・反当200kg → 20haで40,000kg → 160万円
 ○市独自で製粉・販売すれば
   最終売価(製粉後) 300円/kg とする
(北海道「はるよこい」400円/kg 一般薄力粉200円/kg 当りなのでその中間をとる) 
   流通経費(3割) 90円/kg
   製粉・袋詰め等経費 105円/kg (宍粟学校給食の実績より)
   よって収入は 300円 - 90円 - 105円 = 105円/kg 
   105円/kg × 40,000kg = 420万円
 ●40,000kgの小麦とは
 今、日本人の食べるコメと麦の量の比率は、コメ:麦 = 6:4 あるいは、5.5:4.5 くらいと言われています。
 コメが1人あたり55kgなので少なめに見て1人35kgの麦を食べるとすると、
  40,000kg ÷ 35kg = 約1140人 
 これは、1140人分の麦の量ということになります。(強力・中力・薄力、合算だが)
 
ⅲ. 小麦の収支
 ・収入として
  1,480万円 + 420万円 = 1,900万円(全農に出せば1,640万円)
 ・経費(種代、肥料・農薬代)として1万円/10a。(★要検討)
   つまり、20ha で 200万円
  ●差引 1,700万円の収入 (全農に出せば1,440万円) となります。
 
⒞ コメ・麦 合計収支
 コメ 3,166万円 + 小麦 1,700万円 = 4,866万円 (4,606万円) の利益となります。
 
 
③ 全体の収支
 雇用費用 6500万円
 収入  約4800万円
 差引   1700万円 の市の持ち出しとなります。
 
 
 
 
4. 考察
 
①この取り組みのコンセプトは
 
 ● 農地保全
 ● 安全な食の自給
 の二つと考えます。
 つまり、1700万円の市の持ち出しによって、55haの農地と 2500人分の安全なコメと 1,140人分の安全な小麦 を得ることができるということです。
 現在、宍粟市の農地は田畑含めて 2750haです。 そう遠くない将来(30年後には)、この半分が耕作放棄になる(もっとかもしれない)とすれば、
  2750ha ÷ 2 = 1375ha
  1375ha ÷ 55ha = 25倍
  同じ率で考えると、325人の雇用、4億2500万円の出費 となります。
  そして、62,500人分の安全なコメ と 28,500人分 の安全な小麦 を得ることができるということです。
 
 
②国からの補助金が必要──国を動かすのがこのプロジェクトの目標
 
 ただ、現実としては、62,500人の10kg5,000円でコメを買ってくれる「宍粟支援者」を作らなければなりません。おそらく、これがある程度うまく行けば、他の自治体も同様のことをしてくるでしょうから、競争になり、なかなか、きびしい話になってくると思います。
 だから、一定以上は国からの補助金が必要ということなのです。
 この試算では、30kgのコメを13,500円で買っています。通常価格が8,000円とすれば、5,500円の上乗せです。これを国からの補助金でまかなってもらうわけです。
 通常のコメの収量は、10aあたり420kgとされます。30kgが14袋。つまり、10aあたり5,500円×14=77,000円となります。
 全国の中山間地域の水田の面積は95万ha(全国の水田面積237万ha。中山間地域はその4割。)
 これに、10aあたり77,000円をかけると7,315億円です。
 10aあたり10万円出ると市からの持ち出しはゼロにできます。その場合は9,500億円。十分にできる金額です。
 また、中山間地域以外の平地の水田(142万ha)にもある程度の補助金は必要でしょう。あるいは、このように全部の水田にコメをつくれば、今は4割が余ってしまうので、例えばそれを飼料米に使うとすればまたそこにも補助金が必要です。(今よく言われる輸出ができればその分補助金を減らすことはできます。)そのようなモノをすべて合計しても2兆円余りあれば、全国の水田は維持できるのです。
 これが本来の農政であり、それを国民に知ってもらい、この方法しか耕作放棄地を作らない方法はないということを分かってもらい、国を動かしていく。このプロジェクトの目標はそこだと考えます。
 


③これで消滅自治体ではなくなる
 
 これが実現すれば、宍粟市は消滅自治体ではなくなります。限界集落もなくなります。
 325人(325世帯)の雇用が生まれ、この人びとを各地に住んでもらうとすれば、消滅する地域・限界集落はなくなるわけです。
 これだけだと、今の1/10くらいの人口になるかと思います。だから、なくなる隣保は出てくるでしょう。ある程度のところにかたまって住もうということになってくるのではと思います。しかし、農地は美しく維持されるのです。そうなれば、農業以外の仕事の人も住めます。半農半Xの人も住めます。だから、1/10よりは増え、おそらく1/5~1/4くらいの減少でおさまるのではないでしょうか。
 ちなみに、「消滅自治体」という発想自体が今の日本を象徴しているものです。食料を本気で自給しようとする意識が全くない。本気で食料を自給することを考えるならば、今の日本には荒らしてもよい農地など一枚もありません。
 日本の農地が一番大きかったのが1961年608万haです。その頃でさえ食料自給率は約80%。それから、都市化によりどんどん耕地、特に平地の優良農地は農地でなくなり、今や耕地面積は432万ha(2022年)。3/4以下です。だから、中山間地域の条件の悪い農地も一枚も荒らしてもよい農地は一枚もないのが日本の真実です。
 だから、本気で食料自給を考え、どんな方法を使ってでもすべての農地で食料を作ってくれる人を確保するという考えがあれば、消滅する自治体なんてどこにも出てきません。「(消滅自治体の判定基準とされる)若い女性がどれくらい残るか・・」そんなことは関係ありません。
 だから、逆に私は聞きたいです。「ひと事のように言ってますが、消滅してもいいのですか? あなた方は何を食べるのですか? これは当該自治体の問題ではなく、あなた方都会の方々の問題ではないですか」と。
 
 
④公務員として雇う
 
 この最初の13人を公務員として雇うのを私は提案したいです。
 今ある宍粟北みどり農林公社を拡大し各地域に作り、そこで同様のことをやっていく。そこに市が同額を補助金として出す等の方法も考えられます。それが一般的なやり方です。
 しかし、現実はなかなか進みません。
 ●この市からの補助金がずっと続くとはなかなか保障できない。そんな不確実な補助金を当てにして若者は就職先に選ばない。
 ●各営農組織単位で「宍粟支援者」を募っていくのも難しい。これは市の事業として取り組むべき。
 ●受け持つ農地の面積・農地の条件等で補助金の額も決定しなければならないが、それは非常に難しい。
 等々で、公社のような営農組織にこれをゆだねるとなれば、なかなか進まないのではと考えられます。その間に、耕作放棄地はどんどん増えていきます。
 それに対し、公務員で雇い、市の事業として進めていくとなれば
 ★安心して若者は応募してくる
 ★「宍粟支援者」を募ることがしやすい
 ★他市町、一般国民、国に対してのアピールが格段に増す。「宍粟方式」として全国的に有名になる。
 等の利点があります。
 市からの持ち出しは同額です。ならば、進む方向で考えていくべきです。市もそこまで本気で腹をくくって取り組まないとこの事業は進まないということです。公社等に、他人任せでは進まない事業だということです。
 
 
④「宍粟市に住めば安全なモノを食べることができる」
 
 市民への説明として、ただ、耕作放棄地を無くすだけではなかなか賛同は得られにくいかもしれません。とりあえず、今、食に困っている市民はいないし、それよりももっと直接生活の支援をしてもらいたいという意見の方が多く出てくるかもしれません。
 そこで、この事業の二つ目のコンセプト「安全な食を自給する」ということが重要になってくると思います。
 コメにおいては、ネオニコチノイド農薬を使わない特別栽培米。
 そして、特に「小麦の自給」は重要です。
 今、小麦の自給率は約13%。ほとんどが外国産です。そして、そこからは100%除草剤(グリホサート)が検出されるそうです。しかし、今や私たちの主食の4~4.5割が小麦製品となっています。パン・パスタ・ラーメン・うどん・お菓子類・・・。ですから、国としても地域としても、食の自給率を上げ、安全な食を食べるという点で、麦の生産・自給体制を作っていくということは最大のポイントだと思います。
 「小麦生産によって耕作放棄を無くしていく」これも大きなポイントになるのではないかと考えます。
 
 
⑤ 少なくとも50人くらいまでは公務員で雇い、事業を本格的に進めていく
 
 最初は10人くらいからのスタートでしょうが、少なくとも50人程度までは公務員として雇い、事業を進めていくべきかと思います。
 そうなると、市の持ち出しは毎年6500万円。雇用は50人。農地は211ha。9780人分の安全なコメと4380人分の安全な小麦の生産となります。
 211haはかなりの面積なので、今後10年は十分対処できるのではと思います。
 「公務員農家として50人」これは非常に大きな話題となります。
 それで、全国にアピールし、国を動かし、国による当たり前の補助金を実現していくのです。
 あくまでも目標はそこです。「宍粟方式」ともてはやされて、こうすればできると、この競争をさせられるのではありません。これ以上は国の補助金がなくては進まないといい、まわりの自治体と一緒に国を、国民を動かしていくしか、私たちが続く道はありません。
 その後、国による補助金制度ができた後の進めていく形態は、その時考えていくしかないと思います。
 3-①での試算の325人全員を公務員で構成しても良いのではとも思います。「住民の半分は公務員」いいじゃないですか。
 いずれにしても、今からの地方は、国からの交付金・補助金によって維持されていくのは間違いありません。自主財源と言われますが、現実は難しいです。当たり前です。私たちが買い物をするもののほとんどは東京本社の会社の作るものだからです。私たちがおカネを使えばそれは東京に行くのです。今の時代はそのような時代なのです。だから、そこからおカネを交付税としてまた戻してもらう、そうしておカネを回してもらうのが、今からの地方維持の方法です。
 その中で、少しでも地域でおカネを回せることとして、食とエネルギーの自給です。そして、それは食の安全にも直結するのです。
 
 
⑥ 有機食品を作る部署があっても良いのでは
 
 これは耕作放棄地対策ということではないですが、公務員として農家を雇うという考え方の延長として、有機食材作りの公務員も作っても良いのではとも考えます。
 今、国は「みどり戦略」とか言って有機農業を進めていこうと口先だけ言ってますが、現実的な政策は出ないので進みません。しかし、特に学校給食と病院食において、有機食材はこれから必須となってくると思います。
 そこで、現実的に進む政策として「公務員が作る」という方法です。
 これは、こうしてでも進めていく価値は十分あるのではと思います。ぜひ、検討して頂きたいです。
 
 
⑦ 現状の国は地方や農業・農地を守る気はない。自分たちで動き出すしかない。
 
 今、国では「食料・農業・農村基本法」と言われる農業の憲法のようなものが審議中です。しかし、その実態は驚くことに「食料安全保障は食料の外国からの輸入で確立する」というものです。しっかり予算を入れて日本農業を守り発展させていくというものではありません。
 同時に作ろうとしている「食料供給困難事態対策法」には、「食料に困ったときは強制的に芋を植えさせる。違反者は罰金。加工・流通業者も取り締まる。配給制も実施。」と書かれています。平常時から自給体制を作っておかないといざという時に芋を作る農地さえなくなっているのです。農家もいなくなっているのです。こんな非現実的なことを平気で言う今の政府・政権です。アメリカ等外国からの圧力もあるのでしょう。しかし、ホントにこのままいくと私たちの地域は続きません。安全・安心な暮らしは壊されていきます。
 結局、緊急事態になれば、カネのある者、力のある者しか生き延びることができない。「食料供給困難事態対策法」はそんな法律です。国民全体、特に、弱者・貧者を守ることこそが政治ではないでしょうか。
 片や中国では、昨年12月「食料安全保障法」という同じような農の憲法のような法律が制定されました。そして、そこには「食料安保の責任は党と政府にある」と明記され、1億2千万haの農地面積を確保すると明記されました。もちろんそのために国は予算をしっかり出すのです。そのための法律です。
 日本の今の耕地面積は432万haです。つまり、中国は日本の27倍の面積の耕地を確保すると宣言しているのです。人口は日本の11倍。つまり、人口比にして日本の2.4倍の面積の農地を確保するといっているのです。この違いは何なのでしょう。本気で国民の食料を守ろうとすればこうなるのです。それが本当の農政です。
 欧米と比べても国民1人あたりの農業予算は日本は格段に少ないです。
 そして、このことをマスコミは報道しません。マスコミも今の政府・政権と同じ側です。力のある者がより儲けることができる体制を煽り、国民全体・弱者を主体にした国作りという視点は非常に弱いのが現実です。
 今、政府が出している農業政策、そして、マスコミ等でよく言われる農業活性化策──それは、ブランド化、大規模化、企業参入、輸出、もうかる農業、都市との交流、半農半X・・。
 中国の出した農業政策との違いに愕然とします。こんなことで、全国すべての農地が守れるはずがありません。他国からすれば子どもだましのような政策です。「まあこれでうまく行くところが出て多少の農地が残ってくれれば良い」そういう政策です。私たちはそんなものが農政だと思わされているのです。そこに気づかなければなりません。発想を大転換しなければいけないのです。
 発想を転換し自ら動き出すしか、自分たちを守っていく道はないのです。
 
 
⑧ 農地の公的所有も検討していくべきでは
 
 公務員が農地を耕作するとなっても、現状では個人の放棄した農地です。所有権は個人にあります。そこを税金で公務員が耕作するとなると、批判も出てくるでしょう。それでもとにかく農地を荒らさない というコンセプトは最重要なのでしていくべきですが、やはり、地主のそれなりの負担も検討しても良いかと思います。
 例えば、10aあたり2~3万円くらいは毎年負担してもらうとか。「そんなことはイヤだ、個人の土地だからほっといてくれ」と言い出す人もいるかもしれません。ならば、農地を荒らしてしまえば固定資産税を大きく増やすとか罰則的なことも検討すべきです。
 「農地は個人のものであって、個人のものでない。子孫からの預かりもの」なのです。だから、農地法で農地は勝手に他の用途に転用できないのです。荒らしてしまうということは、言い換えれば農地では無くす ということですから、他への用途転用と実質同様ということです。
 そして、農地の公的所有も検討していくべきかと思います。例えば、10aあたり10万円くらいで買い取る。もちろん寄付してもらえるならばそれに越したことはありません。そうして、公的な所有になれば公務員が耕作するのに何も問題はありません。現状では、市が農地を所有することは認められていませんので、とりあえずは農林公社の所有にし、市が農地保有できるような法改正も要求していくべきです。(すでにしていただいているとは思いますが)
 今までは農地は農家の個人財産として守られてきました。それが成り立った時代でした。しかし、今や「負の財産」とも言われる時代です。個人財産としてでは守り切れない時代です。公的所有はぜひ検討していくべきかと思います。
 
 
⑨ JA、宍粟北みどり農林公社 との連携
 
 この視点も非常に重要だと思います。営農指導、販売、農機具の維持・管理、あるいは、実際の営農活動等、何と言っても、今まで本業としてされて来ている方々です。
 しかし、JAにおかれても政府の棄農政策で本来の営農活動がどんどん衰退していきます。また、農林公社においては毎年の大きな赤字で、今後、市からの補助金が必要となる可能性も大いにあると思います。

 であるならば、農林公社に補助金という形で出すのではなく、市からの人的支援で出す方法はどうでしょうか。
 つまり、例えば、出向という形で農林公社に人を送り、公社としては人件費ゼロで人に来てもらい赤字を立て直すという形です。そして、出向者が大半を占めるようになれば、いずれ、出向者が中心になって公社そのものの経営がされるようになっても良いのではないでしょうか。

 あるいは、農林公社を市が抱え込んでしまい、市の外郭団体みたいにして、そこに職員を公務員と同様の待遇で雇い、独立会計で経営をしてもらう。もちろん、現状の日本の農業状況では人件費分は赤字になるので、基本はそれは市から補填するのが前提ですが、極力、適正価格で売ってもらって、市からの補填を少なくしてもらう。

 上記案に「1700万円の市の持ち出し」と書きましたが、おそらく、それに近い額の公社への補助金は今のまま進めば必要になってくるのではと思われます。現在の職員の方との関係や他、様々な課題はあるでしょうが、検討する余地は大いにあるのではと思います。
 また、JAハリマには、今、「ちくさの舞」「三方の舞」を販売していただき、販売ノウハウも蓄積されています。営農指導も含めて連携していく必要があると思います。
 
 
⑩ 農家で公務員 全国公募すれば優秀な人材が集まる
 
 「公務員となって農業をしませんか」と全国公募すれば,おそらく応募者は多数来ると思います。今、大学でも農業を学ぶ系の学部が増えているようです。学生の関心の高いジャンルです。(新設として、中央大学・農業情報学部、順天堂大学・食農学部、他12大学(2024.5.9.日農新聞)。もちろん既存の農業系学部も人気が高いです。)もちろん大学生に限定しなくてもいいと思います。
 農業への意欲、適正、体力、教養、販売力、協調力、あるいは、地域づくりへの関心等々、優秀な人材を獲得することができるのではないでしょうか。
 また、農業には農閑期があります。優秀な人材を採用していれば、そのような時に他の公務員事務を担ってもらうことも可能ではと思います。そのような関心のある人を選んでおけばいいのではと思います。
 そうなれば、単純に市の持ち出しというのではなく、それは十分に市民に還元される税金の使い方になるのではと思います。
 あるいは、全国にどんどんアピールしてもらう仕事をしてもらうことも重要です。テレビ、新聞、雑誌、YouTube、SNS・・、どんどん発信してもらい、国民に農の重要さについて気づいてもらうことが一番の目的なのです。そして、国政を変えていく。そのような視野のある人材を獲得したいものです。

 もしも、これが実現すれば、宍粟市は有名になることは確実です。視察ラッシュになるでしょう。

 本気で農業を守る気のない(できればこのまま外国から輸入を続けたい)政府、財界、マスコミ、アメリカは嫌うでしょうから、極力、マスコミでは扱いたくないでしょうが、全国の困っている中山間地の人びとには確実に届きます。そうなるように、SNS、YouTube等でしっかり発信していかなければなりません。そのようなことのできる人、あるいは、経営もできる人、そんなマルチな人を採用させてもらうことが重要です。
 
 
 以上、長々と書いてきました。
私の知識不足で間違ったことを書いている箇所もあるかも分かりません。その時は、ぜひともご指導いただければと思います。
また、まだまだ検討していかなければならない課題は多いと思います。
 例えば、
 ・特別交付税の要求はできないか
 ・お米券等をつくり、支援者には何か特典がつくようなことは
 ・耕作放棄を安易に増やす事のないような仕組み作り(既存農家への支援)

 

 私はこの案にこだわるわけではありません。要は、すべての農地をどうやって守るか、それも田んぼとして維持していくかということだと思います。日本の場合、農地を守る基本は田んぼです。    
 課題は多いですが、じっとしていては事態は悪くなるばかりです。
 日本人は、当たり前の感覚を忘れています。
 「自分が耕作できなくなれば自分の農地も荒れていくだろう~」大多数の宍粟の農家の方、全国中山間地域の農家の方はそう思われています。あきらめています。そんな国は日本だけです。その異常さに私たちは気づかなければいけません。
 そして、本気で耕作放棄地を出さないと思うならば、自分ならば、あるいは、自分の子どもならばどのような条件があれば、そこで耕作していくだろうかという発想で考えていただきたいです。
 
 耕作放棄田の加速度的な増加、異常気象、・・コメは今から確実に不足になってきます。国産麦への需要も大きいです。この事業の意義は計り知れず大きく、そして、採算も一定の見通しは持てるのではと思います。
 
 ぜひとも検討して頂ければと思います。
 
 
 
 
     兵庫県宍粟市市議会議員
             いまい農場
                 今井和夫