思考力を塾でつけるには | お受験ブルーズ

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現役講師がお受験を通じて世間を眺めています。
大手塾勤務→独立→プロ家庭教師と変わって来ました。(作曲・編曲、戦国シンフォニックメタルバンド「Allegiance Reign」のベーシストとしても活動しています。どっちも本気です)

 コメントをいただいたので、今日は受験における「思考力」について書いてみたいと思います。

 

 中学受験だけに限らず、いわゆるテストというものは次の要素から成り立ちます。

①基本事項・知識・常識(知っておくべきこと、基礎)

②知識の使い方、パターン演習・実践(標準問題)

③既知のパターンでないものへの対処(応用)

 

 そして、大抵の試験では、①と②が完璧であれば受かりやすいです。ですから、試験の突破だけを考えるのであれば、何度も基礎知識を小テストなどをして繰り返し覚え、計算や解法のパターンを頭に叩き込めばいいということになります。受験や資格試験などになるとその量も膨大で難しいです。

 

 関東の塾のやり方では思考力を伸ばすのに適していないのではないか、と僕がたびたび指摘しているのは、この中で①と②を重視しすぎていているとの懸念があるからなのです。親御さんもその毒気に?あてられていることも多いです。

 まあ、最近では関西でも関東と同じような傾向はあるかもしれませんし、デジタル時代のせいなのかもしれません。

 

 点数のためになることしかしたくない、入試に出るところしかしたくない、というのは人情でしょう。その気持ちはわかります。ですが、無駄なことは徹底的にしたくなくて、機械的に無駄なく課題をこなしていきたい、という考え方は危険です。大きな『的外れ』になる可能性を持ちます。おそらく、その考え方では平均以上にはなれません。

 そういう指向性の人間を形容するのに、僕は「セコい」という言葉をこのブログではたびたび使っています。なんといいますか狭量で合理主義で、視野が狭いなと思うのです。

 

 東大がわかりやすいのですが、国公立大では、そのような詰め込み型・知識偏重型の人材をあまり重視していないのです。これは世界的な教育の流れ、時代に必要とされる人材像を見ても正しい流れだと感じます。

 教えられたことしかできない、アドリブが効かない人間では、実社会の問題に対してうまく対することができないことでしょう。

 

 まずは、目先の塾や受験のことだけでなく、子供や日本の将来を含む大きな視点を持っていただきたく思います。

 

 この流れを受けて、灘・開成・麻布・武蔵・桜蔭をはじめとする中学受験の上位校では、問題に創意工夫を凝らし、思考力を問う(上記でいう③の)問題を威信をかけて作っています。必然的にリード文は長くなりますし、塾では習わないことも混ぜながら、考えさせる問題を作ってきました。

 

 例えば、一昔前によく出た中学入試の問題で、ミツバチのダンスの問題がありました。(参照https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%84%E3%83%90%E3%83%81%E3%81%AE%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9

 これは、高校生物の教科書や資料集に載っている事項です。これを中学受験の小学生にもわかるよう、長いリード文を与え、現象を説明し、そこから設問を考えさせる問題を作る学校がひところ、多かったのです。(餌の場所と距離を計算させる問題など)

 

 一線級の動物学者が研究し、ミツバチの生態を実験や観察に基づいて推測した過程をそのままたどらせる問題であり、小学生にとっては難しいに決まっています。それを学校側もわかっています。

 でも良い問題ほど、しっかりとリード文を読めば、ちゃんとわかるように作られています。また、うまいこと塾で習うような高い基礎事項がなければ理解できないようにもなっています。

 

 ここでの思考力とは、

初めてのことでもしっかり読み取ることのできる読解力

・読み取ったことを使って新しい見解を生み出す力

 を指します。

 

 新しい見解、といっても、問題内では「読めば誰もが当然導きだせること」しかきいてきません。そういう意味では、研究の現場よりも甘く作られています。実験の9割は失敗と言われる理系研究の、成功例のみを問題にしているのですから。

 

 さて、このような分析を踏まえ、塾ではどのようなことをしているかを考えてみたいと思います。

 

 このように物事の過程をたどって何かを考えたり、試行錯誤のきっかけを与えるカリキュラムがありますでしょうか。

 もちろん、『ほぼ』ないのです。

 

 サピックスをあげつらってばかりで申し訳ないのですが、例えば、サピックスでは、上記のミツバチの問題は、すでに発展演習や志望校別特訓に入っています。

 タンポポや年輪、遺伝、ホルモン、最近では原発や液状化現象など、高校内容などにある内容で、受験に出そうなものをすべてピックアップしてカリキュラムにぶっこまれています。年々その事項は増えています。

 受験であたるかもしれぬ『新しいもの』をあらかじめ知識として与えておき、減らしておくような考え方で作られているのです。

 

 もちろん、それが悪いわけではありません。頭のいい子や興味がある子にとっては、そのようなカリキュラムのほうが面白く感じ、学習意欲も湧いてくるからです。問題はその使い方なのです。

 

 家庭教師指導などで関東の子にこのあたりのことを教えますと、「ふーん、で?」とこちらの答えを待っていることが多いです。自分で考えようとしないのです。この「待ち」が常態化しているのが大きな問題です。適当でも良いので、なにかしら自分なりに考え出すべきなのです。

 あまり成績が振るわない子ほど、この傾向があります。

 

 塾では授業時間の関係から、一つの問題に時間がかけられず、講師側もすぐに答えとなる見解を言わねばなりません。それに慣れてしまうと、「答えが与えられる」ことに慣れてしまって、自分で「なぜなんだろう?」を考える時間が少なくなってしまいます。特にサピックスの算数はものすごく一問にかける時間が短いです。(さらに他塾では応用内容の問題もパターン化している)

 

 たくさんのパターンを詰め込む、という意味では、その学習スタイルは正解なのです。だから最強の進学実績を出しているとも言えます。ただ大きな目で見たときに、それが本当に日本にとっていいことなのかは疑問です。じっくり型の天才をつぶしている可能性もあります。

 

 ただ、安心材料として僕が思うのは、それでもアルファクラスなどの上位生は、みな「思考するのが好きな子」が多く、結局は詰め込み型の生徒が少ないことです。その性質をキープすれば、将来的には東大などに行きやすいでしょう。

 

 僕が小学生のころは、例えばつるかめ算でも、オリジナルのやり方を開発したりもしました。他の子もそれぞれ、わけのわからんやり方を持っていたりもして、その上で塾のやり方を吸収していました。成績が中堅のまま抜け出せない子などは、そのような感覚に欠ける傾向があると思います。

 

 また、塾では「なぜこうなるのか」をしっかり図や表を用いてしっかり説明してくれました。今でもそうなのでしょうが、その1問あたりの時間は短いかもしれません。

 その説明をパッと聞いて理解するだけの集中力や理解力(読解力からくる)、授業についていく速さも必要でしょう。明らかに今の中学受験は僕らのころより厳しいと感じます。

 

 その素地ができないまま中学受験塾に放り込まれてしまうと、子供も大変です。だから、読書や公文的な計算が大事なのです。

 思考力は「過程」の産物です。AだからB、BだからCと積み重なっていきます。

 何事にも過程(ステップ)を踏んでいくことが必要です。まずは、基本的な読解力や計算力。それから、いろんな大人の話を聞き、子供なりに考えることを始めます。

 

 そこをすっ飛ばして、解法のパターンだけを覚えようとすることが、転落の始まりとなります。

 

 皆さんにまずできることは、目の前のことが「なぜその式なのか」「なぜそうなっているのか」を徹底的に調べ、考えることです。今ではちょっとネットで検索すればその辺は出てきます。ウィキペディアでも良いですから、どんどん使いましょう。

 

 上位校に行きたいなら、まずはすべての問題において、どれだけ時間がかかっても「納得」するまで考えることです。なぜそうなっているか、それが分からないまま置いていけるようでは、今以上にはなれないでしょう。上位層との差はそこだけなのだと自覚してください。

 

 公平無私なる思考を目指しましょう。

 

 いつも読んでくださってありがとうございます。

 

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お問い合わせいただいたメールに返信はできていますでしょうか? 迷惑メールとして処理されてしまって届いていないということがたまにあります。僕はどんな内容でも、1週間の間に必ず返信は行いますので、1週間経ってもこない方はお手数ですがもう一度しっかりタイトルなどもいれて送っていただければと思います。問題集に載っているアドレスの方にだしていただいても構いません。

 

5年生や受験学年でない方のコンサルも受け付けております。また、遠方の方も交通費さえ頂ければどこにでもいきます。(九州や群馬、栃木、大阪、奈良、兵庫、京都などもありました)

 

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