この日、私たちは特別に就労移行支援事業所で、偏愛マップをテーマにプレゼンテーションを行った。

 偏愛マップというのは、偏って愛するモノやコトをキーワードを頼りに図式化したもので、教育学者の齋藤孝さんが提唱したコミュニケーションツールともいえる。私は時々事前にクレドの時間の前に偏愛マップをのぞき見しておいて、自分がではなく他研修生が興味のある話題に話を振るようにして活用している。

 自分の出番では、三分という限られた時間の中で、いかに分かりやすく発表するかに注力した。また、できれば共感を持って伝わるプレゼンテーションになるよう注力した。身振りや手振り、視線や表情、声の大きさや抑揚も考えて発表を終えた。

「ご清聴ありがとうございました。」

周囲から感謝とねぎらいの拍手が沸き起こる。

 私は自分を表現したいという欲求が強いタイプだ。ただ自分を表現することに三分はあまりに短い。

 私は常々発達障がいがどんな人々で、どんな生きづらさを感じているかを表現していきたいと考えている。だからこうしたプレゼンテーションは好きだし、文章で表現することも好きだ。しかし、大半の発達障がい者はきっと、彼ら自身が障害者だということを公にしたくないタイプが多いことだと思う。できれば私のように発達障がいをオープンにして、堂々と社会に関わり、健常者と共存共生できるようになれればと願っている。そう言う私自身も、まだまだ道半ばだろうか。なぜなら就職活動中の立場であることや、両親をはじめ身内との関係も絶縁状態に近いからだ。

 しかし、私はポジティブにとらえている。いくつか理由がある。理由の一つ目は、企業における障がい者の法定雇用率が上昇していること。二つ目は就労移行支援事業所の紹介する求人は、非常に配慮が行き届いた環境が多いこと。特に特例子会社に希望の光が見えている。事業所の施設長は「就職先にブラックな環境がない」と伝えられた。また、求人としては、スキルに合わせたキャリアアップの道も提案されていることが多かった。

 こうしたことは私が見える世界だけかもしれない。しかし、私が実際に職場体験実習先として紹介された企業や、事業所の求人サイト、そしてそのHPを閲覧して感じたことである。

 当然だがテクノロジーの進歩をはじめ、世の中も進歩を続けている。その中で発達障がい者と診断されてからずっと、その生き方について考えてきた。できればこの日本で、発達障がい者も含めた誰もが生きやすくて、自分らしく日々を過ごせるポジティブな世の中であって欲しいと願う。私にできること、あるいは私だけにしかできないことを取り組みながら、日々願っている。

 

二〇二四年八月十八日(日)