サオリ「サトシ、お待たせ。」

サトシ「大会で疲れてるのに悪いな。どうしても話をしておきたくて。」

サオリ「別に、大丈夫よ。じゃあ行こうか。」

サトシ「うん。」

 俺はどうしてもサオリと話をしたくて、大会会場でサオリに学校裏で会おうと約束していた。別に翌日でも良かったのかもしれないけどこの時の俺は気持ちを抑えることはできなかった。俺とサオリは近くの喫茶店に入った。そこで、ホットコーヒーを二つ注文してそれが来たところで話し始めた。

サオリ「それで、話って何?」

サトシ「どうして決勝ではあんなことになったのか理由が知りたい。」

サオリ「急に体調が悪くなったのよ。」

サトシ「それはない。」

サオリ「なんでそんなこと言い切れるのよ。」

サトシ「俺が知っているサオリという人間は『完璧な人間』だ。だから、体調不良にならないようにしっかり対処するはずだし。もし、仮に体調不良になったのなら事前に部長に伝えて交代をしてもらったはずだ。」

サオリ「だから、さっきも言ったでしょう急に体調不良になったって。急だから対処しようがなかったのよ。それにこの世に『完璧な人間』なんていないわ。」

サトシ「今までは『完璧な人間』だと思っていたけど、確かに今回ことで『完璧な人間』とは思えなくなった。だとしても、体調不良なんていう理由で納得できない。本当の理由を教えて欲しい。」

サオリ「本当の理由なんて聞いてどうするの?それを聞いて何か変わるわけでも無いし。」

サトシ「確かに本当の理由を聞いたところで俺にはどうすることもできないと思う。だけど、知りたいんだ。サオリが部活初日に言ったことを覚えてる?」

サオリ「それって、サトシが実は幼なじみのマイカさんのことが好きなんじゃないかってことかしら?」

サトシ「そうそれ、サオリはかなり高い洞察力を持ってるから俺の話を聞いてそう感じたんだよね。マイカが俺のことをおもちゃにしてるんじゃないかってことも。そう感じたとしてもほぼ初対面の俺に普通は言えないはずだ。でも、俺のために言ってくれた。ただ俺自身はその話についていけなかったからその後はあういう感じになってしまったけど。それ以降のサオリの言動を含めて考えると、高い洞察力、思い切った判断力、無尽蔵の体力、高い集中力、高い技術力、強い責任感を持ったサオリが今回の決勝で見せたような無様な姿を見せたことに対して強い怒りと悲しみを感じたんだよ。普通だったらあり得ないはずだから。だから、本当の理由が知りたいんだ。」

サオリ「なるほどね、そこまで高く私のことを評価してくれていたんだね。ありがとう。確かに人の心に土足で入り込んだのは私が先だからこちらも本当のことを言わないといけないわね。だけど、今のサトシじゃ教える価値がないわね。」

サトシ「価値?」

サオリ「そう、価値。本当の理由を伝えたところでまだ納得できないと思うわ。実際にそれを『体感』しないと。ただ、今のサトシは弱すぎるからとても『体感』させられないわ。」

サトシ「そんなのやってみないと分からないじゃないか」

サオリ「それはそこまでリスクが高くないときに言えることよ。この世にはやってみたですまないこともあるのよ。」

サトシ「じゃあ、どうすれば良いんだよ?」

サオリ「私がサトシのことを『体感』できるくらいまで鍛えてあげるわ。」

サトシ「なるほどね、それでお願いします。」

サオリ「ただ、これもこれで覚悟を持って挑まないとかなり危険だから、明日、改めて答えを聞かせてちょうだい。」

サトシ「一回頭を冷やして、冷静になった状態で決断してくれっていうことか。わかったよ、一晩考えるよ。」

サオリ「うん、もし挑むつもりなら告白も絡めてサトシを鍛えるわ。」

サトシ「告白を絡めて?」

サオリ「簡単に言うとカオリさんへの告白を応援するってことよ。サトシにとっても一石二鳥でしょ。」

サトシ「うん、ありがとう。すごく嬉しいよ。」

サオリ「喜んでくれてどうも。それと、まだ、私たち連絡先を交換してなかったわね。しようか。」

サトシ「うん、そうだね。」

 連絡先を交換した。

サオリ「話はこれで終わり?」

サトシ「うん、そうだね。早速家に帰って考えるから帰るね。あと、ここのコーヒー代は奢らせて。」

サオリ「わかったわ、ありがとう。」

 俺は冷めたコーヒーを一気に飲んだ。

サトシ「また明日。」

サオリ「うん、また明日。」

 俺は会計を済ませて帰宅した。サオリは冷めたコーヒーをゆっくり飲んだ後帰宅した。