「違法行為はすべて犯罪である」という誤解はそれほど珍しいものではありません(反対の「犯罪はすべて違法行為である」は法的意味に関する限りは正しいのですが)。法律の世界では,違法とはあくまで法(規範)に反することをいうのであって,そこから先にどういった法効果が発生するのかというのは別の話になっています。その法効果のうち,刑罰を科されるもののみが「犯罪」だといわれるのです。

 

そうすると,刑事法を特別視することは簡単です。刑事法のみが「犯罪」と「刑罰」に関わりを持つためです。しかし,それだけであれば,「刑事法」と「非刑事法」という分類をすればいいことになるのですが,そういうふうには理解をしません。多くの場合には,(狭義の)公法,民事法,刑事法という分類をするのです。広義の公法は「公権力と市民の関係を規律する法」と説明されますので,訴訟手続を規律する訴訟手続法は公法だと説明されます。そうすると,刑事法はおよそ「広義の公法」の一類型です。

民事法は,訴訟手続法は確かに公法なのですが,いわゆる実体法(社会の権利義務関係を規律する法)は「私法」という,「市民間の法律関係」です。そのため,民事法の特色として,「私法の実現」という面があるのです。それは,私法で妥当している「私的自治の原則(自分たち(だけ)のことは自分たち(だけ)で決めるという原則)」が影響を与えるということを意味しています。したがって,民事訴訟法においても,「私的自治」が顔を出す面があります。その典型が,「処分権主義」(その意味については,拙稿「処分権主義と弁論主義」参照)や「自白の拘束力」(これについては,拙稿「民事訴訟というもの(2・完)」参照)です。このような原則は,公益的な面の強い狭義の公法や刑事法の世界では妥当しません(もちろん,民事訴訟法でも,公益的な場面では私的自治は排除されます)。

 

このように理解してくると明らかなように,分類をする以上は,ちゃんと「意味」があるのです。ただ,冒頭の誤解のような初歩的な誤解をしてしまえば,その分類は「無意味」であるように思われてしまいます。

勉強し続けることはとても大事なのです。


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