多くの方が聞いたことのあるであろう「コンプライアンス」という言葉。昨今の「横文字表現」に漏れず、この言葉も、日本語(縦文字表現)にすれば「法令遵守」という言葉が当てられます。
このコンプライアンスという言葉はとりわけ企業経営実務・産業実務・経済実務等において用いられているところが特徴的であるように思えます。言い換えれば、この言葉以前には「法令遵守」がそれほど意識的ではなかったというようなことも見え隠れするのです(その中で、実務家法曹から『「法令遵守」が日本を滅ぼす』という書籍(郷原信郎著・新潮新書・2007)が出されたことは一種象徴的だとも言えます)。

この社会の中では「コンプライアンス(法令遵守)」とはある種当然視されるべきものです。例えば、会社法355条は、取締役の忠実義務を規定し、「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」としています。ここで示されている「法令」は会社法に限らず、あらゆる法令が射程に入っています。例えば、平成12年7月7日の最高裁判所判決は「商法266条1項5号(現在の会社法355条)の法令には、善管注意義務、忠実義務の一般規定のほか、商法その他の法令中の会社を名あて人とし、会社がその業務を行うに際して遵守すべき全ての規定が含まれ、取締役が会社をして右規定に違反させる行為をしたときは、取締役の右行為が一般規定の定める義務に違反することになるか否かを問うまでもなく、法令に違反する行為をした時に該当する。」と判示しています。

ただ、ここで「法令遵守」をすべき理由は、昨日も示したように、あくまで「ルールだから」というものではありません。実際に、上述した郷原『「法令遵守」が日本を滅ぼす』に関するアマゾンの紹介文を見ると、
「相次ぐ事件・不祥事、混迷を深める経済社会、諸悪の根源は『法令遵守』の考え方そのものにある。(中略)不二家、パロマ、東横イン、ライブドア、そして各地で発覚し続ける談合問題── うわべだけのコンプライアンスこそが、組織を蝕む元凶だった! 『申し訳ございません。違法行為を二度と起こさないよう、コンプライアンスを徹底いたします』とは、不祥事を起こした際の謝罪会見での常套句。だが、こうした『コンプライアンスとは単に法を守ること』と考える法令遵守原理主義そのものが、会社はおろか、この国の根幹をも深く着実に蝕んでいるのだ。世の中に蔓延する『コンプライアンス病』の弊害を取り上げ、法治国家とは名ばかりの日本の実情を明らかにする。」
とあります。もちろん、これは法令よりも経済的実利を優先せよというものではありません。例えば、最後に示す記事にある「コンプラ違反倒産」というのも、要は「粉飾決算」が起点になっています。粉飾決算がなぜ違法とされるのかということを考えれば、そこを起点に倒産が生じるということも「合理的に」理解することができます。粉飾決算とは、簡単に言うと、貸借対照表等の計算書類において会社の財政状況を偽ることをいいます。そうすると、貸借対照表等の正確性が担保されないのみならず、いわゆる違法配当等により会社財産がさらに減少しています。ということはその会社はもはや虫の息であるにもかかわらず、株主ら投資家や更には金融機関に「ハリボテ」を見せることで(無理やり)延命治療をしていることになります。しかし、会社自体は死に体なわけですから、倒産は必至の状態です。このような企業に投資や融資をすれば、当資金や融資金を回収することはほぼ不可能になります。それにも拘らず「回収可能」という看板を掲げることで、社会的な損失を生んでしまうことが問題なのです。その意味で、上記の「コンプラ違反倒産」とは、この「ハリボテ」が倒れたことで実態が露わになったことで本来の死期を実現したのみに過ぎません。


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