五階のフロア全体が、書庫と資料室として使われているので、かなりの数の書物や資料があるので何かしら手掛かりが掴めるかも…?
と期待をし、早速、書庫にある〝忘却の水〟に関する書物を片っ端から探し出し、読み漁っていった。
棚から書物を取り出し、床に座り込んで読んで放置。
また棚から書物を取り出し、床に座り込んで読んで放置…。
の繰り返しをしていると、
ガラガラガラッ
書庫の出入口の引き戸が開く音がし、
「翔ーっ!!昼飯食いに行かないかー?
って、えーっ!??何やってんだ翔っ!?」
と、書庫に入ってきた翠兄の声が聞こえた。
翠兄の後ろからひょいっと顔を出した耀兄が、
「うおっ!!お前書庫整理ではなく、書庫を荒らしてるだけだろっ!?」
と、呆れて見ている。
「ったく…。誰が片付けるんだよ…。」
腕を組んで翠兄がボヤいている。
「…俺が責任もって片付けますよ…。」
しゅんとしながら言うと、
「はぁーーっ。お前、片付けるの苦手だろ…。」
と、翠兄が大きなため息をつきながら言う。
「ぐっ…。仰る通りです…。」
もう何も言い返せない…。
「まあまあ、とりあえず休憩だ。昼飯食おうぜっ!!」
と、耀兄が、俺の近くに来て腕を引き立ち上がらせ、翠兄と俺を引っ張り四階にある食堂に連れて来た。
それぞれ食券を買い、食堂のおばちゃんに渡して料理を受け取ると、食堂のおばちゃんが笑顔で、
「大盛りにサービスしておいたからねーっ!!」
「「「おばちゃん、ありがとうっ!!!」」」
お礼を言って席を探した。
魚好きの翠兄は海鮮丼定食、肉好きの耀兄は牛丼定食、俺は温蕎麦ミニ丼定食をテーブルまで運んで椅子に座った。
「「「いただきますっ!!!」」」
蕎麦を食べながら、潤も蕎麦が好きなんだよな…。ご飯ちゃんと食べているかな…?
と、考えていると、
「翔、そんなに落ち込むな。
俺の所の蘇芳(すおう)と、翠兄の所の紫紺(しこん)を書庫を片付けるのに呼んでおくから、翔は安心して書庫荒らしをしろっ!!」
わははっと豪快に笑いながら、耀兄が背中をバシバシと叩いてくる。
耀兄…、力強過ぎて痛いです…。
そして書庫を荒らしていた事は忘れていました…。
「だから翔は午後からも力一杯書庫を荒らせばいいさっ。」
翠兄がニッと笑いながら言う。
「翠兄、耀兄、ありがとう。」
「いいって事さっ。これで貸しがでしたし。なっ。」
と、耀兄が言い翠兄と一緒にニヤッと笑っていた。
もう兄上達の下僕でいいですよ…。
昼食が終わり書庫に戻ろうとしたら翠兄が、
「翔。困った事があればいつでも頼って来い。と言ってもお前は自分の力で何とかしようとすると思うけどな。」
と、俺の頭をクシャクシャと撫でて、
「翔、頑張れよっ!!」
と、右手をヒラヒラ、とさせて去って行った。
「後で古い書物色々所有している者のリスト作っておいてやるから。」
と、耀兄も俺の頭をクシャクシャと撫で回し、去って行った。
「翠兄、耀兄、ありがとう…。」
と、ポツリと言い、再び書庫に戻った。
⭐to be continued⭐