不思議な撮影 | 木下順介オフィシャルブログ「東京火の玉キッス」by Ameba

不思議な撮影

さて、ひょんな事から知り合った、というかカフエでたまたま隣に座った老人から話しかけられて撮影を手伝う事になった『大地の息吹』(日本語訳木下順介)という作品。

初めて会った時から私が何人かとか何者かとか何も知らないにも関わらず、猛烈に自分の思い入れを延々としゃべる老人に、

日本でもこんなおっさん居るよな、

とか思いながら、ロシア語のヒアリングの稽古だと思って耳を傾けていました。するとさらに自分の書いた絵をカバンから出して、ガンガン自論を展開する老人。

基本的にはオーラについての話で、言ってる事はだいたい理解出来るのですが、そういう話なら完全に私の方が得意。なのでいろいろ切り返したいところですが、そういう微妙なロシア語力がまだ無い悔しさを噛み締めながら、結局何をしたいのか聞いてみると、

映画を撮りたい、

とおっしゃる老人。そしてその映画について延々語り始めたので、さらにわたしにそれを言ってどうなるんだと聞くと、

手伝ってくれ

とのたまう始末。何で私が誰かも知らないのに映画を手伝えるんだと聞いたら、

オーラが私と同じだから大丈夫だ

とトンチンカンな事を言うので、私は実は映画の監督でいろいろ仕事もしているが、もし具体的に手伝うとなると、どうしてほしいのかや条件など打ち合わせさせて欲しい、と突っ込むと若いスタッフから連絡をさせるから電話番号を教えて欲しい、などと真剣な顔で懇願して来る老人。

そういう流れの中で若いスタッフと打ち合わせして臨んだのが、こんな現場。

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4個のカメラで老人がひたすらしゃべりながら絵を描くのを撮影しました。というか、しゃべって描く、というだけの奇妙な映画。まあ、それはそれで良いでしょう!

実際にこの老人の本当の職業は、大学の教授、らしいです。

小さい頃はサハリンに住んでいて、子供が日本語を学んでいると言っていました。私はせっかくなのでついでに出演もさせてもらい、無茶苦茶なロシア語で絵について語ったりして手伝ったのか邪魔したのか解らない状態になりましたが、老人が大喜びだったので良しとしましょう。もう一回撮影があるらしいですが、何がどうなるかはお任せいたします、という感じです。

というか、俺ってこういう奇妙な老人とオーラが一緒なのかよ、というショックもありつつな、モスクワでの不思議な撮影顛末でした。