無意識なバイアスが、大切なことを見えなくさせるよね

数年前に伝統的な大手企業で、上級管理職の方々から2時間ほど質問を受けまくったことがあります。もちろん全員男性。職場の課題解決プロジェクト、のような形の勉強会でこの日のテーマは「女性活躍」。

入社時の成績や受け答え、入社後数年の仕事ぶりも、女性がむしろ「できそう」な感じなのに、どうして出産したとたんモチベーションが下がるのか？

…というのが先方の疑問だったんだけど、まあ、数年前ですからね（あ、今も変わらないとこも多いけど）

わたしの第一声は、「みなさんが優しいからです（笑）」と（もちろん皮肉だけど）。前にも確かブログで書いたと思いますが、女性であることに上司が変に気を使い、期待値の低い仕事しか任せなかったり、出張行かせなかったり、なにかと配慮を繰り返すことで、

「わたしへの期待はこんなもんか」
「こんな感じでいいんだ、楽勝」
と、成長意欲や機会を奪ってしまっている、んですよ、と。

「たとえば、働くお母さんに海外出張を頼んだらかわいそう？って思ってませんか」と聞いてみたらほぼ全員がうなずいておられて、
「いや、それはやっぱり気を使いますよ」と。

「どうして本人に伝える前に配慮しちゃうんですか？聞いてみなくちゃわからないですよ」と聞いたら
「デリカシーのない上司だと思われたくない…」だって（実話ですよ・笑）。

男性だって、たとえば子どもが生まれたばっかりだったら、長期出張とか避けたいですよね？女性に配慮するならほかの部下にも配慮しないとねえ。でもそこはないわけですよ。でもね、女性活躍推進って、別に、女性に対して甘やかして昇進させなさいって話じゃないから。

なんて話を相互に自由に話していたら、出ました。素敵な率直なご意見が。

「どうしてわざわざ女性を…って思っちゃうんですよねえ。男なら考えなくていいし」と。

この素直なホンネに、わたしは心の中で腕まくりしました（笑）。
この会社クラスなら、なんだかんだいって、人手不足になったってまだまだ大卒男子技術者の採用は多分できるんです。だからこそ、今のままでいいじゃないかという声。その裏には、これまでに何度か女性に期待して裏切られたという実感もあるようでした。でもよくよく聞くとそれも偏っているので、

「一人に裏切られたと思うと“だから女性は”と女性全体の印象をネガティブにし、別のところでデキナイ男性社員がいると“あいつはダメだ”と個人に帰結させる。それは無意識なバイアスですね。目の前の部下が男性であれば、なんとか教育して一人前にしようとするのでは？」

というと、素直にうなずいてくれます、が、それでもなお、「でも正直、男を配属してくれれば楽」との本音が（50代後半のビジネス戦士のみなさんなので・苦笑）。

じゃあ、グローバル化についての対応はどう考えていますか？日本企業は似たタイプで構成された文化を基本にして、あうんの呼吸で進めているけど、それって日本の外で通用しないっていうのがグローバル化のお話では？そのためには「それぞれの国の文化背景を理解し、多様性を認め合うことだよ」って話しですよね？
国内で、同じ国に生まれた女性の理解も面倒なのに、それってできるんでしたっけ？（と、これは「対決的な問い」なのであまりよくない・笑）

そんな話をしているうちに、ある部署の管理職の方が「うちの部はね…」と実践事例を語ってくれました。そこの部だけは非常にフラットな起用をしているようで、「そうやればできるのか…」と他部署の管理職のみなさんは少しだけ、「これまでの育成の在り方そのものに課題があるのか」とうっすら感じていただけたようでした（ま、ことはそんな簡単じゃないけど）

女性だ、男性だ、じゃなくて、一人一人の人材を見る、ってことなので、本当はとってもシンプルな話なんですが、なぜだか目の前の人をまっすぐ見る前に「きっとこうだろう」という無意識のバイアスがそれを邪魔して、大切なことを見えなくさせてしまっているんですよね。

バイアスの話を考えてみる方に、この本とか↓面白いですよ！