4月30日(日)


日比谷野外音楽堂で、ムーンライダーズ。


「祝!結成30周年 ムーンライダーズ VIntage Moon Festival」。

そのタイトル通り、ムーンライダーズ結成30周年を記念し、縁のあるゲスト・アーティストを多数迎えて行なわれた特別ライヴ。


30周年かぁ……。

活動してない期間もあったとはいえ、このバンドがこうして今も続いているというのは、すごいこと。

今年は30周年ということで、かなり積極的な動きをしているようだ。


僕が彼らの音楽に出合ったのは、中学生の頃。

最初に買ったのは、「ジェラシー/Beep Beep Be オーライ」のシングル盤(77年)だった。

よく聴いていたAMラジオの番組中、CMで何度もかかって耳に残ったからだと記憶している。

アルバムはその2曲が収録されている『イスタンブール・マンボ』で、これも出てすぐに買った。

確か僕の誕生日だったかクリスマスだったかなんかで、母に買ってきてもらったのだ。

『イスタンブール・マンボ』は、それこそ盤が擦り切れるんじゃないかというほど、よく聴いた。

そこからライダーズにはまり、『ヌーベル・バーグ』(78年)も『モダーン・ミュージック』(79年)も『カメラ=万年筆』(80年)も『青空百景』(82年)も出た時すぐに買ってアホみたいに聴きまくっていた。

中学~高校~デザインの専門学校と、特に多感な時期にこれらのレコードがリリースされ、当然今と違って、その頃は買ったレコードを何十回、何百回と繰り返し聴いてた時期なので、恐らく自分の人格形成にもこれらのレコードはけっこうな影響を及ぼしていると思う。

当時、時代の先を行き過ぎているという理由で『マニア・マニエラ』の発売が見合わされることになり、それに代わって『青空百景』が先に出たりもしたものだったが、これなんかはデザイン学校の課題をやりながら毎日昼間からず~っと聴いて、その世界観にどっぷり浸っていたものだ。

なので、僕にとってのムーンライダーズといえば、なんといっても『イスタンブール・マンボ』から『青空百景』の、この5枚に尽きる。

その後のアルバムもしばらくは買い続けたが、この5枚ほどには思い入れられなかったというのが正直なところ。90年代以降の作品になると聴かずに通り過ぎてしまった作品もいくつかあり、最近の作品も聴いたり聴かなかったりで、そういう意味では今の僕は決してライダーズ・ファンなどとは言えない人間であって、この日の演奏曲にしても「おおっ」と気持ちが入ったものと「この曲、知らないな~」というものとに分かれていたのだった。

ライヴを観るのも、本当に久しぶり(そういえば僕が大好きだった時代には、彼らは滅多にライヴをやらなかった)。正直に書くと僕は、今回は30周年記念ライヴなので昔大好きだった曲がたくさん聴けるんじゃないかと、それを期待してチケットを買ったというのも、ある。


さて。

天候にも恵まれたこの日、会場は満杯。

さすがに年齢層は相当高い。

開演時間のちょい前に行くと、既にオープニング・アクトが始まっていて、それはライダーズのコピーバンド、架空楽団だった。

彼らが「くれない埠頭」を演奏している途中、そこにライダーズのメンバーが何気なくステージに登場し、各自楽器を受け取って、そのまま今度はライダーズが「くれない埠頭」を引き継いで始まるという粋な演出。

いいねっ。


「くれない埠頭」が終わると、そこで慶一さん、いきなり「最初のゲストです!」とゲストを紹介。

みうらじゅんが登場し、ライダーズはまた引っ込んでしまうのだった。

と、その後もいろんなゲストが登場し、ゲストだけで歌ったり、ライダーズと一緒にやったりで約3時間。

なるほどこれはライヴというよりフェスティバルの形をとったものだったのだ。


以下、出演したゲストと曲を(覚えている範囲・またはわかった範囲で)大まかに書いておくと。

みうらじゅん (「鬼火」「大人の悩みと子供の涙」)

青山陽一 (曲名忘れた)

サエキケンゾウ (「青空のマリー」)

カーネーションの直枝政広と大田譲 (「ボクハナク」ともう1曲)

野宮真貴 (「マイ・ネーム・イズ・ジャック」)

ポカスカジャン (「おら東京さ行くだ」のボサノヴァ・バージョンなど持ちネタ +「大人の悩みと子供の涙」)

曽我部恵一 (「スカンピン」)

原田知世 (曲名わからず)

あがた森魚 (「大寒町」「赤色エレジー」)

遠藤賢司 (「塀の上で」ともう1曲)

パンタ (「くれない埠頭」)

高橋幸宏 (「9月の海はクラゲの海」)

レイ・オブ・ライト (ライダーズとの共演で数曲)


これらゲスト陣の中で特に素晴らしかったのは、まず曽我部恵一のギター弾き語りによる「スカンピン」。選曲も“らしい”が(僕もこの曲はたまにカラオケで歌っちゃいます)、気持ちが歌にこもっていた。それからやはり、あがた森魚とエンケン。このお二人はもう圧倒的。さすがです。あと、パンタとライダーズ共演の「くれない埠頭」を聴いてて、(慶一さん作のパンタの曲)「オートバイ」と世界観が似ていることに気づいたりも。


後半はライダーズのメンバーそれぞれをフィーチャーした曲などを続けてやり(かしぶちさんは、なんと「バーレスク」を!)、そして懐かしや「マスカットココナツバナナメロン」なども歌って、最後はゲスト全員が登場しての「Don’t Trust Anyone Over 30」で大団円。そのあとのアンコールやるやらないの気の持たせ方がずいぶん中途半端なものではあったが、それでも大人の観客たちはみな満足そうに出口へ向かっていた。


厳しく見るなら、例えば慶一さんの音程のふらつきなどに「ありゃりゃ」と思う部分もあったといえばあった。が、ともあれ、Over30(年)からまだこれから先へというバンドの意志が大いに感じられたのはグッときたところ。幸宏さんが「なんかさ、ムーンライダーズ、かっこいいよね」と言っていたが、確かにこういうあり方もかっこいいなと思ったりもしましたね。


そして、“あの頃”のムーンライダーズの曲はやっぱりいいなぁ、CD買い直しちゃおうかな、などと思ったりもしている今日この頃なのだった。






 『青空百景』

 専門学校生の頃、毎日のようにこのアルバムを聴いていたもんです。