秋はフットボールのシーズンだ。この季節のアメリカ人の週末は、フットボールで始まり、フットボールで終わる。金曜日はハイスクール・フットボール、土曜日はカレッジ・フットボール、日曜日はプロ・フットボールで、月曜日にもマンデー・ナイト・フットボール(プロ)がある。プロ・フットボールのストライキの最中、出生率が上がったと言うほど、フットボールが大好きな国民なのだ。
毎週金曜日は高校のフットボールの試合がある。ボクは、フットボールのルールなどまったく知らなかったが、試合の雰囲気が好きで、我がマクナマラ高校のホーム・ゲームはすべて観に行った。チャックもほとんどの試合を観に行ったが、彼が行かない場合は学校で行く奴を探して、ピック・アップしてもらった。
マクナマラ高校フットボール・チームの開幕戦の日、五時限目に全校生徒が体育館に集合した。フットボール・チームの壮行会があるらしい。ボクはチャックについて体育館に向かった。体育館は非常に広く、体育館の両側には階段状の席が収納されていた。この階段状の引き出し式スタンドは木製で、使用されるときは引き出して観戦席となる。これが結構丈夫で、このスタンドに全校生徒が座れた。校長のヤーノ神父が挨拶した後、司会の先生がフットボール・チームの紹介を始めた。まずコーチが紹介され、選手たちの名前が一人ずつ呼ばれた。名前を呼ばれた選手は、元気良く体育館の真ん中にある特設ステージに掛け上った。デイヴ・ケルチの名前が呼ばれた。ボクはこの時初めて、デイヴがフットボールの選手だということを知った。選手の紹介が終わると、今度はチアリーダーが紹介された。紹介された彼女たちは、チアリーディングを始めた。アクロバットを交えた彼女たちの応援は、みんなを盛り上げた。これこそアメリカだと、ボクは感動し、鳥肌が立った。
試合は七時に始まる。この日、ボクはまたも英語力不足で、その夜の予定を理解していなかった。その日は普段より早く、六時くらいに夕食を食べ始めた。ボクはいつものとおり、ゆっくり食べていた。チャックはいつもより食べるスピードが早い。ボクは何を慌てているのだろうと思ったが、マイ・ペースで食事した。ボクが最後のサラダを食べている時、外で車のクラクションが鳴った。すると、チャックがボクに向かって ”Let´s go” と言った。チャックは、ボクのジャケットを持って立っていた。これからフットボールの試合に行くことになっているらしい。外にはロン・フィンチ一家が迎えに来ていた。マムは、ボクにサラダは車の中で食べるよう言った。彼女は、ロン・フィンチのお父さんにボクがサラダを車の中で食べてもいい許可を貰った。ボクがサラダ・ボウルを持って外に出ようとした時、マムは「アメリカ人はきちがいでしょ」と言って微笑んだ。
壮行会でみんなを盛り上げるチアリーダーたち。シーズン中、彼女たちは常時授業中もチアリーダーのユニフォームを着ていた。