八、小さな友人 (つづき)
森次郎は、ネイサンの気迫に感動していた。隣にいる母親のメグは、ネイサンの頑張りに目頭を熱くしていた。浩輔もその横で拍手を送っている。ネイサンと目を合わすと「ナイス・タックル、ネイサン」と森次郎は大声で言った。ネイサンは照れくさそうに手を上げた。
後半もネイサンはベンチスタートだ。パンサーズは、後半もリードした。後半も勝負がほぼ決まった残り十分、三十五対十七でネイサンが呼ばれた。今度はオフェンスからの出場だ。ネイサンには、なかなかボールを渡してもらえない。残りもわずかになった最後のプレー、クォーターバックはネイサンにボールを渡した。ネイサンがボールを受け取って数歩走ったところで、相手チームのディフェンスのタックルにあった。地面に叩きつけられてもネイサンはボールを死守した。ただ、一ヤードもゲインできずに攻守交替となった。
試合のあと、森次郎は、コーチと一部の父兄とその子供たちとソーントン母子らとファーストフードの店でランチを食べることになった。森次郎は、コーチにアメリカにおけるフットボールの裾野の広さに驚いたことなどを話した。コーチは「ネイサンのガッツが他の子供たちにあれば、パンサーズは無敵だよ。ネイサンには頭が下がるよ。あの小さな体のどこにあんなエネルギーがあるのかってね」と他の人たちに聞こえないように森次郎に言った。森次郎も、ネイサンのひた向きさと前向きな心に感心していた。
つづく・・・
