ああ、彼女の心を救って欲しい
マリア様
ご主人に裏切られ、失意の底にいた友達は、ある優しいと思えた男性と知り合った。
すぐに意気投合。
男性も奥さんとは既に破綻し、17年間も家庭内別居だと言われ、心を許した。
が、時折、違和感を感じていた。
ある日、男性の奥さんが、余命宣告を受けていたと知り、「奥さんは、あなただけが、きっと頼りだと思う。あなたは、最後まで奥さんに寄り添ってあげて」と彼女は言った。
が、男性は、「妻には未練はない。そんなこと言うな」と怒った。
彼女は、そんな男性にがっかりして、連絡を絶った。
1ヶ月後、いきなり「妻 他界」と連絡が入り、迷ったが、彼女は、男性の寂しさや疲れを労るべく、癒やそうと一生懸命だった。
しかし、あんなに「妻とは別れたい、早くいなくなって欲しい 再婚したい 君が好きだ」
と、始終言っていたのに、奥さんが亡くなって以来、奥さんの思い出話やら愛おしいだの何のと彼女に話すようになった。
死んで5日目には、彼女に言い寄って関係を結ぼうとまでした。
最初は、黙って聞いてあげていたが、あまりにも頻繁で、彼女の思いを完全に無視。自分の事ばかり。
辛い思いを必死で堪えている彼女。
思い余って相談してきた。
何て言って良いのかわからない。
ただただ、最低な男だと思うが、言えない。
願わくば、亡くなった奥さんが、その男性も連れて行ってくれたらと思ってしまった。
死別は、思いの外、美化してしまう。
そんな弱い無神経な男の身勝手な美化された思い出に彼女を引き込まないで欲しい。
裏切りは、一度で沢山。
癒されるべきは、私の友達の方だと思った。